じゃあ、星野仙一

星野仙一さんって不思議な人だな、と思うのですが、圧倒的に優れた成績を残したわけでも、人格者と言うわけでもないのに不思議な人気があり、名選手、名監督だったようなイメージが世間に蔓延しています。

成績

選手としては146勝121敗34Sの投手なので一流選手ではありますが、超一流というわけでもなく、球史に残るような偉大な選手ではありません。大学時代から子分のように扱っている山本浩二さん、田淵幸一さんの方が選手としては明らかに偉大なんですが、星野さんの方が偉そうにしています。

監督としても図抜けているわけでもなく、中日第一次、第二次、阪神、楽天と一度ずつリーグ優勝はしていますが、圧倒的な数字と言うわけでもなく、選手成績と同じ程度の一流ではあるが、超一流ではありません。ただし、監督としては山本さん、田淵さんよりは明らかに上ではあります。

選手、監督としては中日後輩、元部下の落合博満さんにはまったく敵うレベルではないのですが(選手では投手、野手という比較しづらい対象ですけど)、人気としては星野さんが圧勝という感じです。落合さんは超有能ですが、独特で素人にわかりづらいので圧倒的に数字を出しても嫌われがちです。

冷静に成績を見てみるとそれほどでもないのに、名選手、名監督のイメージを世間に植えつけられているのでセルフプロデュース力が極めて高い、政治力の塊みたいな人だな、と思います。サラリーマンやっても、ほぼ間違いなく偉くなっただろうなぁ、と思います。

政治

星野さんが優れるのは政治力で、大学生の頃から名物監督の島岡さんとも上手くやっていて鉄拳制裁を受けなかったそうです。(星野さん自身の鉄拳制裁は有名です)プロ野球選手になってからも、王さん、長嶋さんという大スターを上手く利用して対立構造を作り上げてショーにしていました。

監督としての実績は政治力の賜物といってよく、オーナーサイド、大口スポンサーとすごく上手くやる為、FAで有力選手を引っ張ってくるのが上手で、今いる選手を上手くやりくりしたり、安い選手を成長させたりすることはそんなにしていません。「ワシが育てた!」のセリフで有名ですが、若手選手をそこまで我慢するタイプではありません。

部下に対しても鉄拳制裁をしますが、そのフォローはしていたらしく、暴力を使う割には徹底的に嫌われていることは少ないです。中村武志さんにはかなり暴力を振るったらしいですが、笑い話になっているのは政治力の賜物でしょう。実際、気弱でこのままではプロとして芽が出そうになかった中村さんを引き上げたのも星野さんなので一方的に悪くも言えないのでしょうね。

さすがにこの手の暴力はアメリカ人には通用しなかったみたいで、首位打者をとった助っ人、パウエル選手は星野さんの暴力に対して猛然と抗議をした、という話があります。まあ、外国人選手に対しても折を見てメシ代渡したり、気を使っていたみたいで嫌われていたわけでもなさそうです。

豪快な親分肌みえて神経が細やかで、権力持っている人間の懐に入たり、部下へのフォローが上手いです。また、野球界と関係ない財界、芸能界と人脈を作っていくのが上手で、地方の中日出身ではかなり珍しいタレントとしてもキャラ立ちしている人だと思います。しかし、野球人として突出した見識があるわけでもなく、あくまでセルフプロデュース力の高さが最大の武器です。

男気

今まで、裏工作、暴力などのダーティーなイメージを「燃える男」「熱血漢」というイメージで覆ってきたのですが、北京オリンピックで彼の采配が完全に裏目に出てしまい、本音が出てしまった為、かなり叩かれました。

星野さんのスタイルとして、目をかけた選手はボロクソに叱ったり、殴ったりしますが、そのフォローとして試合で使って挽回させようとします。それは長いシーズンではいいのかもしれませんが、短期決戦では男気起用は悪手になりやすく、全部裏目に出てメダルが必須だった北京オリンピックで手ぶらで帰ることになります。

元々、星野さんは北京での金メダルで名将としての立場を確立させようと考えていたし、WBCで成果を挙げた日本代表を率いているわけですから、国民も金メダルを当然期待しています。それを星野さんがガンガン追い込むようにプレッシャーをかけるので選手は顔面蒼白、ベンチ裏で吐く選手すらいたそうです。

そして、元々メンタルが弱め、本職レフトでなかったGG佐藤選手を起用したのですが、緊張でガチガチになりエラーをして落ち込んでいるところを翌日、男気起用で先発出場して更にエラーしました。佐藤さんの野球人生はこのエラーがすべてになってしまい、自殺することを真剣に考えるほど追い込まれたそうです。

どんな人でも結果が出なければ、叩かれますが、その時に言い訳めいたことを言ってしまったことで星野さんは世間から相当叩かれて、内定していた次回のWBCの監督をすることは許されず、おそらく人生初の大きな挫折を経験することになります。

それで終わらないのが星野さんで楽天、オーナーの三木谷さんの懐に入り込んで楽天監督として返り咲き、田中マー君という球史に残るスターが大車輪の活躍、新人だった則本選手が一気に成長をすることで日本一を勝ち取ります。本当に強運な人だなぁ、と思います。

まとめ

王さん、長嶋さん、とは違った意味でスーパースターであり、ダーティースターでもあり裏の顔は暴力にまみれた独裁者なんですが、すごく気が利く面倒見のいい人でもある不思議な人です。引退した元部下が開業するからと、お忍びで開店日に応援に行くとか、よく思われる為の擬態にしてもなかなか出来ることではないこともきちんとする人です。

本当に単なる嫌な人だったら、逆風が吹いた北京五輪で抹殺されているでしょうし、そこで終わらないのだから、そんなに底が浅い人ではないのでしょう。人間には表裏の顔があり、そう簡単に人間性を断定するのは難しいのだと改めて思いしらされます。

人格者、求道者の王さん、天性の天真爛漫なスターの長嶋さん、影のスターの野村さん、とか色んなタイプのスターはいますが、星野さんほど表裏のはっきりした複雑な人はなかなかいませんね。

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