じゃあ、自動車業界

自動車業界は日本の基幹産業であり、日本の人口の1割が自動車関係の仕事をしていると聞いたことがあります。自動車業界の特徴は完成車には数万の部品が必要のため、産業のすそ野が広く、何段階にも連なるサプライチェーンがあり、この産業を失うと、日本は壊滅的なダメージを負うでしょう。そして、アメリカのIT企業たちがその牙城を狙い続けています。

再編

日本の自動車メーカーが危機に陥り、外資に買われた時期がありました。現在でも、日産は事実上のルノー子会社であり、未だに社長の座をゴーン氏から奪い返すことができていませんが、スズキはGMと提携解消した後、VWとも提携解消して、トヨタに近づいています。マツダはフォードの不振から事実上の手切れ状態、トヨタにすり寄り、スバルもGMは離れトヨタ傘下に入り、三菱はダイムラーと手切れ、不祥事から日産傘下となりました。

しかし、日本の自動車メーカーは多すぎて、これだけの会社を維持していくのは困難で、トヨタ、日産、ホンダの三社系列に絞られて来ています。トヨタが徐々にほかのメーカーを傘下にし、日産はルノーグループとして三菱を手にしましたし、ホンダは独自路線を続ける、という形で日本の自動車メーカーは進んでいくのでしょう。

最終的には世界の自動車メーカーは4系統くらいにまとまり、他はニッチ的なコアファンしか買わない小さな会社に規模縮小していくと考えています。自動車が発展途上国で売り上げを増加すると、価格競争が激しくなるが、時代の流れでメーカーはIT化、環境配慮した車を開発しなければならず、市場価格が下がり、開発コストは上がり続けるからです。そうすると、単独で研究開発するのは困難で、提携していくしかないでしょう。

品質

まだまだ日本車は韓国車、中国車と比較対象になっていません。車を持つことはパソコン、テレビと違って、ステータスシンボルであり、どんな車を乗っているか?、を気にする人は多いです。未だに韓国車はさほど人気がありません。少なくとも、シンガポール人は韓国車は安いから以外には買いません。

日本車より質が劣り、高価格の欧州車が売れているのがいい証拠です。消費者が車にコスパしか求めなくなったら、真っ先に欧州車は選択から外れます。これが車の持つブランド力であり、貧乏人の見栄をくすぐり、割高な乗り物を買わせられるわけです。パソコンなんてコスパ以外で買わないので、コモデティーとなり、日本製は死に絶えたってことです。

また、パソコンで人は死にませんが、車では人が死にます。万が一のことがあったら、殺人者になりかねない乗り物ですので、品質に不安のある車に乗りたいと思わないのです。私は中国車に乗せてもらったことがありますが、変な音がして、生きた心地がしませんでした。たぶん、問題のない異音なんでしょうが、そんなの音だけで分かりません。

そして、車は10年くらい、ほとんど毎日乗るが一般的なので、下手のものを買うと、ずっと使い続けなければならず、トラブルだらけだと、面倒なうえに、修理代もバカになりません。日本車と比べれば、欧州車も圧倒的に故障が多く、アメ車はもちろん、韓国車もダメ、中国車なんて品質なんて言葉はありませんw

つまり、日本車が高級路線(レクサス、インフィニティなど)に参入して、欧州車の牙城を徐々に崩しつつ、コスパがいい大衆車を供給し続けていられる限り、日本の自動車産業は死にません。前者で利益を稼ぎつつ、後者で固定費を回収するというフローが確立できていれば、敵なしです。

日本車を模倣した路線を進む韓国勢の質が良くなっているのも事実ですが、彼らはサプライチェーンが弱く、高品質、特殊部品は日本を含めた外国勢から買って、汎用品を自国生産できているだけです。また、部品産業が輸出できるほどの力を持っていないため、産業規模が大きくなっていっていません。ここが改善されない限りは韓国車はいくら売れても、利益は日本企業に渡すことになります。

開発

パソコン、テレビなどは開発要素がほとんどなくなり、果てしない価格競争になってきていますが、自動車はやれることがいっぱいあります。ハイブリッド、電気自動車、水素エンジン、自動ブレーキ、自動運転など、徐々に夢の技術が登場し始めています。こういった新機能があれば、価格帯はある程度守れるます。

しかし、電気自動車が普及すれば、産業構造は一変し、駆動系は要らないことになり、電装系部品メインになっていきます。そういう意味では自動車メーカーは電機系の会社に変貌していくでしょう。死に掛けているパナソニックにはここが希望みたいですね。電気自動車の普及が進み復活できるか?そこまで持たずに倒産するか?産業はなくならなくとも、変化についていけない会社は脱落するでしょうね。

とはいっても、まだまだ電池技術が十分でなく、電気自動車では遠出はできないし、充電スタンドが十分でないので、一気に電気自動車が普及することはないでしょう。5分の高速充電で、200キロくらい走れて、ガソリンスタンドが充電スタンドに代わる必要もあります。現実的ではないのではないでしょうか?

技術的に大きなブレイクスルーがない限りは現状の体制が続くでしょう。このブレイクスルーがあれば、世界経済も大きく変化し、資源、エネルギー問題解決に向けて、大きな前進になるだろうと思います。もちろん、エネルギー以外にもナフサなどの代替材料がないと石油依存はやめられませんがね。

IT化

自動運転が現実味を帯びてきて、それとともにGoogle, AppleといったIT企業が頭を押さえようと動いていましたが、ほぼ断念したようです。Teslaを見ると、車体製造は従来の自動車メーカーに一日の長があり、そこは日本の自動車メーカーが抑えることができるでしょうが、そのシステムをアメリカ企業に奪われると、下請け化してしまいます。

アメリカは世界標準を自分たちで作るために動いていますし、日本、欧州がそれに対抗する形でせめぎあいをしています。日本政府は全面的にバックアップして、自動車産業を守るべきです。そうでないと、もっとも大きな旨味をアメリカ企業に奪われ、日本企業は価格競争が激しくなった組み立てしか担当できなくなります。

つまり、iPhoneにおけるApple、ARM、鴻海の形が自動車産業に波及してしまうということです。Googleにシステムを押さえられ、重要な設計はARMの特許で抑えられ、鴻海の役割をトヨタが担うようになるとなると、旨味は全部取られて、ぎりぎりに押さえつけられた製造コストしか日本企業に落ちなくなります。だから、少なくとも、ARMの役割はトヨタが抑える必要があります。

まとめ

今のところ自動車産業が衰退することはないでしょうし、日本車のシェアは落ちる気配はありません。ただ、国内勢で潰しあいが起こらないように国主導で再編をあっせんすべきですし、自動運転技術の世界標準に日本企業が食い込めるようにロビー活動をすべきです。

そのうえで、利益率を確保できるブランド力、新興国の小金持ち、新中流階層を刺激するようなコスパのよい製品を市場に提供していかないと、行き詰るのは目に見えています。であるなら、早く再編をして、マスメリットを十分に生かし、日本の優位性をより強固にすべきでしょう。

投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、自動車業界” への 12 件のフィードバック

  1. 日本だけでなく先進国の若者の車離れが叫ばれていますが、車産業は大丈夫なのですか?
    日本でも田舎だと若者は車持ってますが、都市部の若者は持っていないことが多いです。

    1. 先進国では頭打ちでしょうが、発展途上国需要があるので、暫くは大丈夫だと思いますよ。若者がかなり無理してでも、車を手に入れようと必死になっています。その購買意欲が落ちたら、もう単なる移動手段になってしまうでしょう。

      シン

      1. 自分も維持費がかかるし、車自体に興味ないので、車は持たないつもりでしたが、メーカーに就職するとなると、郊外勤務で車必須なので、買うつもりです。
        先進国でも、田舎なら車の需要は減らないと思いました。

        1. 車を移動手段としか考えない人が増えると、自動車メーカーからすると、困ります。利益率は高いのは高級車で、大衆車は儲かりません。

          シン

  2. 電気自動車のメリットはそこまでないと思います。
    環境にいいというが、電力は石油を使った火力発電でまかなってるので、結局変わらないような気が…
    それと、関係ない話ですが、高卒と非難関大文系だったら、どっちがいいと思いますか?
    僕は、高卒の方がいいか、同じくらいだと思います。

    1. 電気自動車は部品点数が桁違いに少ないので、量産化すれば、原価が爆発的に下がる上、部品の電気制御が容易になり、自動運転に弾みがつきますが、それでも違わないのですか?

      シン

    2. 火力発電は20年以内にシェアが急速に落ちることが予想されます。太陽光発電、洋上風力発電、地熱発電、核融合発電が急速に価格競争力をつけています。中でも太陽光発電はパネルの価格下落傾向はすさまじいものがあり、発電効率化もすすんでいます。乗せる電池の技術開発も韓国は2兆円の投資を行うそうです。韓国の電池産業は非常に有望であり、サムスンSDI、LG化学は脅威だと電池産業従事者がおっしゃっていました。T並みに日本の電池に対する投資は1000億以下です。ユアサ、パナ、NECは大きな危機感をもっています。

  3. シンさんのおっしゃる通り、まだしばらくは日本車は大丈夫だろうとは思いますが、10年後はどうなっているのか、個人的には危機感を持っております。
    アメリカでは今年発売予定のTesla Model 3 のプリオーダー数が500万人に達しています。
    私の周りでも アメリカ人はもちろんのこと、アメリカに住む日本人ですらテスラの話題が絶えません。
    日本の自動車産業が今まで大きく伸びてきたのは、アメリカでの購買数が大きかったからだと思っています。
    そしてその人気の源は安全信頼度、コスパの良さからです。
    コスパの良さとは、アメリカ人が良く口にするのは、日本車は10万マイル越えても特に問題もなくまだまだ走れる。
    長く安全に乗れるから = エンジンが非常に良い ということからだそうです。
    その優良エンジンも電気自動車の時代になれば、もう関係なくなってしまいます。
    プラス 自動運転。ここはITが関わってきます。
    また電気自動車用の充電スタンドは、アメリカではかなり頻繁にいろんなところで見かけます。
    田舎の山道のスタンドや駐車場、広大な国立公園内にもあることにはびっくりいたしました。
    これに予備ソーラー自動充電が改良されていけば、電気自動車主流の時代はすぐそこまできてるように思いました。
    アメリカは本気で国内産業の巻き返しを図っています。
    その主体となるのはやはりITでしょう。
    日本はIT後進国になってしまいました。
    このままいくと、ITだけではなく、全ての意味で後進国に落ちぶれていくんじゃないかと心配です。

    直接は関係ない話ですが。。。
    2年前、南カリフォルニアからテキサス州へトヨタは米国本社を移転。
    ホンダも同じように他州への移転を予定しているそうです。
    本社移転の最大の理由はコスト削減のためなんでしょう。
    テキサスはトヨタが来てくれるならむこう10年、税金は無料にします と約束してくれたそうです。
    カリフォルニアは資産税、その他もろもろの税金が全米一高いですから、これだけでかなりのコストカットになるでしょう。
    また、移転に伴い会社的に必要な人には、リロケーションフィー(移転に伴う費用)を出してもらえる人、そうでない人には出さない(暗黙に辞めてもらっていいよ的な。。。)と、人事にまつわる裏話も聞きました。

    つまりトヨタもホンダも危機感を持っている、先駆けて大幅なコスト見直しというのは良いことだと思います。
    ただ、残念なのはトヨタの移転に伴い、トヨタの日本人社員を主な顧客としていた料理店も一緒に移転。
    日系スーパーマーケットは韓国オーナーに次々と買いあさられており、日系スーパーから韓国スーパーに変わってきています。不思議なことに同じ食材でも韓国系の方が安く(納豆ですらw)、日系はやはり高い。
    そして今や日系スーパーは韓国系であふれていて、日本人は安いからという理由で韓国スーパーへ買い物にいくという始末。

    せめて車は日本人なら日本車買おうよ!と声を大にして言いたい気分です。。。

    1. 自動車が電気機器になったら、勢力図が変わる可能性があり、トヨタと言えど、かなり危機感を持っているでしょう。テキサス移転はエンジニアの確保、という観点もあるのではないか?、と思います。ただでさえ足りないエンジニアをカリフォルニアにで確保するのは大変ですし、カリフォルニア、テキサスでは賃金レベルも全然違います。かつて、カリフォルニアはアジア系がまず目指すところでしたが、今はテキサスになりつつある、と聞きます。物価、仕事のバランスが良く、気候も暖かく、かつての人種差別も徐々に少なくなりつつあるようです。カリフォルニアで生き残るのは大変でも、テキサスなら、なんとかなる、と思う人が多いのでしょう。

      韓国系は同胞を法律無視で使い倒すので、激安を提供します。それでも、韓国から脱出したい韓国人はたくさんいるので、ビザさえ確保してくれるなら、喜んで低賃金に甘んじます。変に法律を守る、石に齧りついてもアメリカにしがみつく同胞のほとんどいない日系は価格では太刀打ちできないでしょう。

      シン

  4. 昨日、Peugeot-Citroen が Opel と Vauxhall を GM から買い取ったとか。日本ではスズキがトヨタと業務提携、GM と FCA も以前から提携がうわさされていますし( Marchionneさんはこれについて、今日のところは否定していたようですが)、大衆向け自動車メーカーは大型編成が着実に進んでいますね。

    先日、ラジオで Maserati が広告を流していました。ベース価格で70000ユーロ弱。誰に向けた広告なのかは「?」ですが...Maserati が広告を流す時代になったか、と思いました。また、AUDI なんかは自社の中古車を4年間保証つきで販売したりしています。各メーカー、それぞれ大変ですね。

    トヨタの今後ですが、企業のホールディング化をもっと進めたらいいと思うのです。運転免許取得教習所、自動車販売とそれに関する銀行業務、保険、タイヤ、燃料配給(ガソリンスタンドなど)、車検+メンテナンス...などすべて。
    どのメーカーでもローン・リース業は行っていますが、FCA は Fcabank として独立した銀行部門も持っていますし、特定の保険会社と提携もしています。トヨタはアメリカでの銀行業務ライセンスはあるというようなことを聞きましたが、日本では難しいのでしょうか?

    車に関するすべてのことを「トヨタ」でできるパック契約商品を作り、「まとめることで割安!」感を出して売り出す。消費者は一旦このエスカレーター方式で甘やかされたら、その後値上がりがあったとしても、パックで買い続けますよ、きっと。お年寄りなんかはとくに。どの保険を選ぶか?いつどこでチェックアップするか?どのタイヤを載せるか?など、自分で考える必要が(スキルも)なくなってしまいますからね。

    あと、電気自動車に関しては、トヨタはスズキと提携できたのだから、インドにIT開発部門を作ってしまえばいいのではないですかね?日本でいう工業高専に通っているうちの息子ですが、今年から専攻科、結局「電気」を選んだので、電気自動車の実用化は非常に興味のあるところです。

    1. Lexus についてですが、デザインに欠点ありと思います。こちら欧州ですと、Lexus はおそらく BMW、ベンツ、AUDI あたりと市場競争するラインかと思うのですが。

      いわゆる「高級車・準高級車」と呼ばれる車種にはそれぞれ独自の「デザイン黄金比」があります。少しでも車に興味がある人であれば、車体(スタンダードモデル)のシルエットを見るだけでどこのメーカーの何車なのか?おおよそ判断できるはずです。
      Lexus はデザインにおいて「我」がなく中途半端なので( BMW、ベンツ、 AUDI を混ぜて3等分した感じ)、市場でいまいち存在感がないのでしょう。性能に関する評価はいいのに残念です。

      1. 全くその通りだと思います。

        性能で日本車に劣る欧州車が売れるのはデザインに哲学があるので、ブランドイメージをお金に変えられます。レクサスは単に性能がいい、サービスがいいだけで、デザインをお金に変えられていません。今後、日本の自動車メーカーが生き残って行くための大きな課題です。

        シン

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