じゃあ、MRJ

かなり分析された上でリクエストを頂きました。MRJはまさに国策であり、日本復活の狼煙になりうるプロジェクトであるとともに、日本の持っている闇を表す象徴です。すでに頂いた分析が素晴らしいものなので、まずは掲載して、そこから私も記事を書きたいと思います。

分析

これまでぬるりで議論されてきた日本企業の様々な問題が凝縮されているようなプロジェクトだと思い、記事にしていただけると幸いです。以前コメントでこのプロジェクトに関わったことがある人がいたような記憶があるのですが、中の人のコメントなどがついたら面白いですね。

2008年に華々しく計画発表した後、予想に反してJALやANAだけでなく米国のエアラインからも一気に400機以上の受注するなど、報道を読んだ時は日本企業に対して自分は懐疑的すぎだったのかもしれないと反省し、良い意味で期待を裏切られたと感じました。特に三菱重工は保守的な三菱グループの中でも本流で金曜会の主要会社という点でも、日本企業文化の権化のようなイメージだったというのもあり、日本企業もまだまだやれるのでは?という印象を受けました。

その後は特に注意も払っていなかったので、最近までは開発が遅れて何度も納入延期しているらしい位の認識しかありませんでした。昨年に5度目の延期を発表した際も、よく客も辛抱強く待つもんだなぁと思いつつ、ボーイングのドリームライナーも散々開発が遅延した経緯もあったので、さすがに航空機開発は最新素材や部品数も自動車と比にならないくらい多いだろうし、そんなもんなんだろうと思っていました。

先日ボーイングがエンブラエルを買収するかも、そうなればMRJにとって脅威となるという報道を読んだ際ふと気になって色々と記事を漁ってみました。以下に纏めた現状を鑑みるに、私の理解ではこのプロジェクトは既に完全に、絶望的に試合終了しているのは明らかだと思います。

*2008年に正式計画発表時には2013年に初号機納入の計画が、5回の延期で現時点の計画が全てうまく行っても2020年半ばの納入を目指すなど、既に7年以上の遅延。今年に入って米国のイースタン航空がついに40機キャンセル(顧客側のキャンセルの場合は違約金なしの模様)。他の客がキャンセルしないのは、東芝のWH買収でもそうでしたが、契約内容が相手側に一方的に有利な内容になっている可能性大(納入遅延損害金の条項による巨額損失の可能性?)。

*当初の最大の売りは、最新鋭のエンジンと炭素繊維の複合素材を使った主翼採用により、エンブラエルやボンバルディアの競合機と比べて20%の低燃費との謳い文句。ところが7年も開発が遅延している間に、エンブラエルが同じエンジンを積んだ新型機の開発を進めてしまい、しかもMRJよりも早い納入時期を予定。当初期待された炭素繊維複合素材も中型の機体の主翼ではコストと重量、さらには構造の面からも(しなりが足りないらしい)問題が続出し、結局通常素材のアルミ合金採用に変更。完全に燃費の点での差別化要因が消失。差別化要因がないならトラックレコードがあるエンブラエル一択となり、MRJを選ぶ理由が全くない。

*三菱重工と提携関係にあるはずのボーイングがエンブラエルの買収により中型機市場への参入を模索。過去の記事によれば、MRJ開発当初にボーイング側から同社のコクピット採用提案など提携を模索する提案があったが、経産省主導で税金も入っていることもあり、プライドが高く純国産にこだわった三菱重工が提案を蹴ったとの背景があるとのこと。MRJの開発費は既に5000億まで膨らみ、エンブラエルの時価総額より高額になっているとは究極の皮肉でしょう。更に、ボーイングがエンブラエルを傘下に収めてしまうと、競合であるMRJへの北米でのメンテや人的支援を拒否される可能性があり、そうなればそれらを自前で用意できない三菱は何れにしても梯子を外される。

*中国もMRJと競合する中型機のARJを開発しており、日本の関係者は技術力の点でずいぶんバカにしてたようです。MRJの最大の開発遅延要因である米国連邦航空局の型式証明取得も取れないだろうとたかを括っていたら、なんと巨大な国内市場を抱える中国は米国に型式証明の相互認証をのませてしまうことで一発逆転、一気に米国でもARJを売れるようにしてしまいました。まさに日本と中国の政治力、外交力の力の差が露呈したと言えるでしょう。

これだけの惨状にもかかわらず、誰も現状を公に認識せず、誰も責任を取らない中で泥沼の損失に突き進んでいるあたり、第二次世界大戦で負け戦を止められず地獄に突き進んだ日本をリアルタイムで観察している気分です。三菱重工も、そもそもの発端を作って莫大な税金を補助金として突っ込んだ経産省も、どことなく他人事のようなそぶりで、既にビジネスとして成り立たなくなったという事実をうやむやにしつつあります。日本企業と日本社会の体質を体現しているという点で、今後も観察したいと思っています。

まとめ

改めて事実関係を並べていただくと、勝負はついているのだな、と思います。日本企業の悪い点がもろに露呈したプロジェクトですね。ボーイングともっと密にやるなり、エンブラエルを買って三菱重工内に取り込んでいくなり、政治力で相互認証に持ち込むなり、方法はあったはずなのに、日本人だけで、日本企業だけで、日本のやり方にこだわったばかりに負けてしまい、負けてしまったのに誰もその事実を受け止めもせず、問題の先送りをしているんですね。

救いようのない話です。

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