じゃあ、英語からの距離

言語習得において、母語との距離関係はきわめて重要な意味を持っていますので、英語と各言語がどのような関係にあるかを記事します。

ゲルマン語派

英語から見ると、オランダ語が隣に従兄弟、ドイツ語は隣町に住む従兄弟みたいなものではないか、と思います。近い親戚にあたり、多くの共通点を持ちます。ただし、単語は似通っていても、文法が違うので、ある程度の時間をかけないと、英語を理解できないものの、一度、波に乗ると、単語が近いので、語彙、表現が一気についてきて、楽になります。

北ゲルマン語群、と呼ばれる、デンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語は薄い親戚だけど、近くに住んでいて、英語と日常的に交流している関係だといっていいでしょう。半ば公用語のように扱っているため、元々、言語距離が近い上、かなりの時間をかけて、英語を学んでいるので、北欧人で英語を話せない人は皆無に近い上、かなり流暢に話します。

例外的に北欧語でも、フィンランド語だけ、ウラル語に分類されるため、教育の必要上があるため、幼いころから訓練で英語を学んでいるだけで、英語との言語距離は近いわけではありません。その為、他の北欧人と比較すると、フィンランド人の英語はさほど流暢でない上、かなりなまっていることが多いです。

ロマン語派

このグループは英語とかなり遠い親戚みたいもので、先祖は同じだったらしい、というくらいの親戚だと考えてもらえればいいです。共通単語がラテン語から来ているものの、日常会話に使う言葉はほとんど違うため、ある程度の時間をかけて、英語学習をしないと、まともに使うことは出来ません。

フランス語は欧州共通語、宮廷言語として、欧州の王族がフランス語を使っていたため、英語に影響を与えているため、他のロマン語派言語と比べると、単語に共通点が多いですが、それでもそれほどフランス語母語話者は英語が上手いわけではありません。

ラテン三兄弟のスペイン語、ポルトガル語、イタリア語の話者はお互いに母語で会話が通じるくらい似ていて、無勉強でも、半分以上は言っていることがわかるそうです。特にポルトガル語話者はスペイン語の方が影響力が強いため、スペイン語を多かれ少なかれ学んでいるので、7-8割言っていることがわかるようです。

このくらい言語距離が近いと、バイリンガル、トライリンガル、とかいう定義は適切ではなく、方言程度の差しかないため、東京出身者でも、青森弁が半分くらいはわかる、という程度のことでしかありません。青森出身者が標準語を話しても、バイリンガルとは言いませんよね?

英語との言語距離はさほど近くないため、ラテン三兄弟母語話者の英語力はさほど高いわけではなく、ある程度の時間、努力がないと、身につきません。距離の近いフランス語は比較的得意な傾向があります。フランス語は無勉強は無理でも、少し時間があれば、簡単な会話はすぐに出来るようになります。

スラブ語派

東欧言語はほとんどスラブ語派に分類され、その代表格がロシア語です。冷戦時はソ連の圧倒的国力から、ロシア語が普及していて、ソ連崩壊後に英語の重要性が高まり、ロシアへの反発から、英語教育が反動的に一気に進んだ地域だといっていいでしょう。EU統合によって、賃金の高いイギリスに出稼ぎに行く為に必死で英語を勉強する人が続出し、Brexitにつながったくらいです。

スラブ語派の分類される言語母語話者がロシア語を学ぶ気があるなら、すぐに身につくのでしょうが、過去の歴史から拒否する人、身につけたことを意図的に使いたがらない人が多いです。ソ連はかなりの文化侵害をしましたり、強権的に周辺国を圧迫してきたので、忘れたい過去になっているのでしょう。どちらかというと、ドイツのほうが好印象をもっているみたいです。

この人たちも英語との関係は遠い祖先が同じ、という程度でしかなく、表記もキリル文字を使うため、ローマ文字から離れており、きちんと時間を使わないと、英語を扱うことは出来ないだけでなく、激しく訛った英語を話すことが多いため、きんと英語を話せる人は多くはありません。

日本語

朝鮮語が比較的近いので、日本語母語話者が朝鮮語にある程度の時間を使えば、すぐに会話くらいなら出来るようになりますし、その逆もしかりです。つい最近まで、日本、韓国の経済格差は圧倒的だったので、日本語を話す韓国人は多いですが、逆はほとんどいません。ほとんどの日本人は朝鮮半島に好意的な興味ないのでしょう。

中国語は漢字に共通点があるだけで、発音、文法はまったく違うため、読み書きはすぐに出来ても、発音が悪すぎて通じないことがほとんどです。日本人は「音」で話すことが出来ないため、「音」が重要な中国語、ベトナム語、タイ語あたりの発音が悪すぎて、きちんと身につかないことがほとんどです。耳が「音」に反応しないので、ここを大人になってから鍛えるのは至難の業です。

英語との関係はなにもなく、英語の圧倒的影響力から、英単語が日本語化している程度に過ぎず、かなりの時間を費やさないと、英語が身につくことはありません。文法中心の英語教育が悪いわけではないし、日本人の性質が語学習得に向いていないわけでもありません。単に言語距離の近い外国語が存在しないし、必要に迫られていないので、話せないだけです。

まとめ

外国語が得意な欧州人はすごい、それに比べて、日本人は、、、、という指摘は頓珍漢で、欧州人は言語距離、必要性から母語しか話せない、ということは少ないだけで、必要性の薄い英語ネイティブのイギリス人はほとんど外国語が話せませんから、仕方ないと思います。オランダ語、ドイツ語なら、比較的簡単に身につくでしょうが、逆はほとんど英語を話せるので、必要性がないのです。

例えば、サッカー、モウニーニョ監督はポルトガル人で、ポルトガル語母語話者ですが、まともにみにつけたのは英語だけで、わざわざイギリス留学して、身に着けたものであり、英語そのものはさほど上手いわけでもなく、限られた語彙で自分の言いたいことを伝えるのが上手というだけです。他の扱えるスペイン語、イタリア語はほぼ無勉強で身につくものですし、フランス語も少し時間を使えば、身につきます。ドイツ語はほんの少し話せるだけだそうです。

日本人が外国語を身につけるのはきわめて難しいので、何かしらの事情がないなら、英語以外はやる意味はありません。その英語ですら、幼いころから、バイリンガルに育てるべく、時間、お金、手間を散々費やしても、ほとんどの場合、達成することはありませんので、コスパが悪いです。だから、第二外国語なんて、それ自体が面白くて、趣味にしているならともかく、手を出すものではありません。本当に時間の無駄だと思います。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、英語からの距離” への 16 件のフィードバック

  1. 日本と英語の母国であるイギリスが空間的に尋常でなく離れてるわけですから,言語的にも言わずもがなですね.
    平均レベルでいうと,日本人の英語力は,中国,韓国,インドネシアなどのアジア系の人々より低い気がしますが,これは言語距離というより,必要性の問題なんでしょうね.
    まあ日本人でも若い世代は,英語の必要性はヒシヒシと感じてますが.
    やはり必要な能力は,専門力,コミュ力,英語力って感じなんですね.
    なんか若い世代の労働者,特にホワイトカラーに求められる能力のハードルって,大昔より明らかに上がってるような気がします...

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    1. 若い世代から思うことですがホワイトカラーの求める能力が上がってきてます。
      多くの会社で求められる専門、コミュ力、英語力は昔のその会社の中の選ばれた人しか必要ないのだろうと思います。
      定年まで逃げ切りたい管理職はあまりそのことには触れません。
      仕事ができることと英語や資格があるとは違いますが、なんとなく上司に気にいられただけで出世したり昇給したりすることを避ける狙いがあります。

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  2. 日本語と英語の言語距離が遠いのはその通りだと思いますが、それに加えて日本人側から見て、日本語と英語の「心理的距離」も要素として大きいのではないかと感じています。というのも日本で全然英語ができなかった人がこちらに来て、割と短期間(約1年)でほぼゼロから開始してドイツ語がB2からC1レベルまで上がっているのを何例も見ていますので。そしてその後は英語もそれなりにわかるようになっているようです。さらに上級者を見ると、多和田葉子さんのように大人になってからドイツ語を学んでドイツ語で文学作品を書くまでになる人もいます。

    英語の場合はネットで検索したり書店の英語コーナーを見てもわかるように、日本で溢れる英語に関する情報は、「日本人は英語ができない」ということをとにかく刷り込んでくる傾向が強いと思います。中学校から始まる授業や受験でも大部分の生徒には苦手意識が強く刷り込まれ、一種の洗脳のようになっています。一方でドイツ語には特にそんなことはありません。仮に日本語と英語の言語距離と、日本語とドイツ語の言語距離がほぼ同程度だとすると、心理的なブレーキを日本の英語学習環境は学習者に強くかける事例が多く、結果として言語距離以上の難易度になっているのではないかというのがこれまでに実感したところです。

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    1. 心理的距離は必要性で置き換えられると思います。必要性がないので、心理的に壁があり、真剣にしないのです。現地に行って、必要性を感じると、多かれ少なかれ誰でも外国語を扱いますし、中には外国語で文学作品を書く人すら現れます。イラン人の日本語作家もいたはずですよ。

      日本でも外国人が増えてきて、必要性が上がってきているので、英語をある程度扱える若者が増えたわけです。

      シン

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  3. 日本語と英語の距離は確かに遠いですよね。。。。特に日本人は会話においてはかなり不得意ですね。
    留学時代に不思議だったのは、欧州系や南米系の留学生は英語で会話はペラペラなのに、書く、読むになると全然ダメで、文法に関しては日本人のほうが普通に上だったことを思い出しました。
    これは教育の違いなのでしょうけど、日本人は文法から学んでいる気がします。
    対して欧州系の人々は音から入ってくるのかな?と思ってました。

    そして私は日本で現役学生時代、英語は大嫌いでした。
    特に高校時代の英語の先生が嫌いだったので、嫌いでしたし、当然英語の成績は冴えませんでした。
    まさか、自分がアメリカへ移住して、普通に英語漬けの生活になろうとは思いもしなかったものです。

    同じことの繰り返しになろうかと思いますが、英語が苦手だった私が、普通にアメリカで働いて、生活できるのはやはり専門技術があったからなんだと実感します。英語は必要性に迫られれば、中学レベルの基本文法が理解できていれば、問題なく生活に困らないレベルくらいにはなります。また仕事やいろんなシーンでビジネス英語を話す、書く、読む機会がたくさんあるので、これも普通に慣れてきます。 ですが、やはりネイティブには勝てないので、ネイティブと同じ土俵には上がれないというのが現実ですね。

    先日、居眠りしながら電車に乗っていたときに、(たぶん頭が英語モードになっていたんだと思うのですが)、韓国人が話ししている韓国語が妙に日本語に聞こえたことがありました。日本語と一番近いのは韓国語ですしね。日本語と文法が同じなのは韓国語だけじゃなかったかな?対して 中国語と英語は文法は似通っていますよね。 不思議なのは、韓国語って日本語と同じくらい英語との言語距離が遠いのに、クリスチャンがあんなに多いのは何故なんでしょう? どなたかご存知だったら教えてください。

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    1. 文化の違い、というのもあると思います。ラテンなどの南国系は何に対しても、ノリで取り組むので、基礎がボロボロだけど、意外と実践的だったりします。南国系の東南アジア人も英語を書かせるとわけわからないが、話すと案外通じることがあります。日本人は逆が多いです。

      日本人でも韓国語なんかは音で反応できるので、仕事で韓国に行っているうちにハングルの読み書きはわからないが、簡単なことなら、なんとなく話せるようになる人もいます。欧州語話者は英語をそうやって音で反応しているのだろうと思います。

      シン

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  4. 研究職のように多国籍チームで働く必要がある場合は、やはり英語が共通言語として必須ですね。面白いのは、英語論文バンバン書いてる先生が、学会の公演で喋らせるとびっくりするくらいヘタクソな英語なことがあります(笑)

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    1. 英語は共通語でもあり、それ自体が知性を表すわけではなく、特にスピーキングは足が速い、遅い、とかいう知性とは関係ない能力だと思います。世界的に評価されている研究者を英語論文でだけ知っていて、英語が上手いことを勝手に想像していて、実際に会うと、話が通じないくらい英語が下手だったりすることはざらですからねぇ。

      シン

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  5. 確かに英語と日本語の言語距離の遠さが大きな原因だと思いますね。数年前、日本で英会話で勤めてたときの話なんですけど、週に1回通っただけで話せるようになれると思ってる生徒さんを何人も見かけたんですね。英語の難しさにぶつかって途中で解約するケースが後を絶たなかったです。
    まあ、シンさんが言うように日本人の9割に英語要らないから別に話せなくてもいいと思いますけど。そもそも、中高生の皆さんに無理やり英語を教えるより、興味のある人にしか力を入れなければいいし、むしろ現実的で結果が出ると思います。

    それに文化の違い、というのもかなり大きいと思います。上下関係はほとんどなく、自分を中心にものごとを考える英語は日本人の性格に合ってないと思う時はよくあります。日本人と英語で会話してても日本語でよく使う相槌を打ったり、話す順番が来るのを待ったりして、ちょっと違和感があったりしますね。(可愛いと思いますけどw)

    長文すみません。中途半端な日本語もすみませんでした。

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    1. >長文すみません。中途半端な日本語もすみませんでした。

      これが日本人的で、白人はどんなバカらしいことでも、自分で考えたことを主張するのは良いことだと思っているし、主張された方も受け止めることを美徳とします。私もそれは正しいことだと思っているので、どんなことでも主張してもらって、受け止めたいと思います。

      逆に白人は世間がどうとか、他人がどうとか主張するのはかっこ悪い、と思っているので、内心は世間体を気にしていても、それを表には極力出さないようにします。日本人は他人が、世間が、ということに恥ずかしいとは思わないので、自分の意見よりも堂々と主張します。

      この辺の文化の差があるので、日本語直訳したような英語を話すと、日本人にしかわからない表現になりがちです。英語を勉強するとはアングロサクソン文化を勉強するということでもあるんですね。

      シン

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  6. 見た目がアングロサクソンなら問題ないのですが、英語自体が自分を中心にものごとを考える文化のため日本人で帰国子女で英語ができる人ですと自分のことしか考えていない人とみなされ嫌われますね。
    仕事で英語で話す機会もあるのですが自分自身も上下関係がなくていいのかや相手の会話に対する大げさなリアクションがめんどくさいなと思って英語を話しています。
    また、イギリス人にそんなにへりくだらず謝らなくていいと注意されます。

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    1. 文化理解をしてないと、せっかく英語を話せても、通じない、軋轢になるので、単に現地生活によって英語を身につけて、文化理解をしてない帰国子女はどこにも居場所がないことが少なくないです。現地はもちろん、本国でも外人です。

      シン

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  7. 今後、日本語の立場はどのようになっていくとお考えですか?
    日本の国力は落ちているので、今までのように日本に住んでいても日本語だけで生きていける人は少なくなるのではないでしょうか。

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    1. すぐに英語ができないと生活できないことにはならないことはないでしょうが、ビジネス、学術は英語でやらないと市場が限定されて身動きが取れなくなるので、高給が欲しい、広く認められたいなら、英語は必須になるでしょうし、現在でもそうです。

      でも、単に平凡なサラリーマンやるなら、必要に迫られてから、英語に取り組んでも遅くないですし、えっちらおっちら英語でコミュニケーション取るだけなら、何歳になってからでもできます。

      シン

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  8. 林修先生が、
    「日本人が馬鹿だったら英語が得意だっただろう、
    日本人がもっと馬鹿だったら英語が話されていただろう。」
    と言ってます。まことにその通りと思います。
    馬鹿で何も産業を興すこともできなければ、東南アジアみたいに外国のおこぼれをもらうしかなく、英語が得意にならざるを得ませんし、もっと馬鹿ならフィリピンみたいに植民地になるしかないのでしょう。
    日本人は、欠点もありますが、基本的には極めて賢くいろいろと自分で産業を興して金儲けもできるから、わざわざ英語を学ぼうというモチベーションが薄いですからね。さらに言語の距離も遠いというなら英語が得意になるはずもありません。
    ろくに産業もない国に生まれた場合、年収10万ドル(ドル100円とします。日本円で1000万)くらいを稼ごうと思ったら英語ができなければなかなか到達もできないでしょう。でも、日本で年収1000万なら英語なんか全然できなくてもなんとかなりますからね。

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    1. まったくです。

      言語距離が遠いのに、通用度を上げるなら、(経済)植民地になるしかなく、日本はそうはならなかったということです。そう言った底力がある国なんだから頑張ろうよ、と言いたいです。

      シン

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