じゃあ、貧乏人の心情

私が好きな金子光晴、どくろ杯の一節が妙にしっくりきたので、取り上げたいと思います。

無理算段をしてやっとつくった金を、一刻の散財で空にするような、そんなやりかたを、衣食足りた連中は苦々しいことにおもい、日頃の窮乏は身から出た錆と非難するに違いないが、たまにしか金の入ってこない者が、金を手にした時の意趣晴らしにも似た放蕩の快味を知らないからこその咎めである。贅沢な味に覚えのあるものは、猶更その欲望を圧えることがむずかしい。

お金もないのに贅沢する言い訳を書いているのですが、金子光晴と言う人は私とは真逆で、邱永漢先生とは別の意味でアイドルなんですよ。私には到底できないようなことをやってのけた人であるのはご両人とも同じなんですけどね。

教育

私の人生で付き合いのあった人達を思い浮かべると、実家が代々裕福な人間ほど、案外質素で、そんなに散財ってしないのです。親がお金の魔力を十分に知っているので、お金に対して慎重になるように教育するからでしょう。お金の使いどころが上手なので、代々お金持ちを続けていられるとも言えるでしょう。

子供にやたら派手な生活させたがるのは成金だったり、人に言いにくい仕事で得たお金を使う人で、悪銭身につかず、とは言いますけど、やはりそうなんだと思います。反社会的勢力でのし上がった人の子供だとか、宗教法人の跡取りなんかは酷い散財ぶりだった記憶があります。

あと、比較的稼ぎのあるサラリーマンの息子が放蕩生活しているって言うことが多くて、羽振りいいな、と思っていたら、衣食住すべてにお金があるだけ使って、学資ローンをパチスロにつぎ込んでいた、とか、狂気の沙汰だと思いますけど、そういう人は結構います。

芸術

日本では芸術家が裕福なのはけしからん!っと言うような風潮があり、その点で邱永漢先生は文学的に過小評価されている節がありますが、直木賞受賞した「香港」も染み入るような作品ではなく、面白いけど、何回も読みたくなる本ではないのは事実です。

私個人としては文学作品としては廃退的な方が好きで、金子光晴のように詐欺師同然に各地で色んな人の好意をしゃぶりながら、無銭旅行をしていまうくらいメチャクチャな方が好きなんです。酒の失敗は必須ではないですが、性のだらしなさは必須だと思います。だから、作品は読みませんが、生臭坊主の瀬戸内晴美さんも嫌いじゃないです。

だから、私はブロガーの「は◯ちゅうさん」にも徐々にはまり込むかもしれませんねw 今のところ、主義というほどの何かはないし、言っていることは薄っぺらくて、的外れだと思いますが、あそこまで厚顔無恥だと、極めてくると、それが昇華されて、芸術の域に来る可能性があるかもしれませんw

私は漱石、鴎外だとかにはハマらないんです。確かに美文だけど、そうじゃなくて、人間として芸術に溺れきっていて、徹底的にクズじゃないと、芸術ではない、と思ってしまうのが私も日本人だと言うことでしょう。まぁ、外国でもそう言う傾向はありますけどね。

私としては島崎藤村、坂口安吾など、徹底的に鮮やかにクズで、そのクズっぷりがもはや芸術の領域でないとダメで、太宰治のように、ファッションでクズやっていた人じゃなくて、完全に突き抜けたサイコパスのようなクズが文学ですよ。ここまでくると、その人の人生が芸術です。

まとめ

私も文学にかぶれたことがあるんですが、私はあまりにもまともなんですよ。産まれ、育ち、教育、仕事、をあまりにも常識の範囲内でこなして来ているし、特にえげつないこととかもしたことがありません。入社初日に上司殴って退職とか出来ないんですよ。だから、そう言う人の書く文章を読みたいのです。

ブロガーもやっぱ完全にカッ飛んでいる人が好きで、エリート気取りで、それっぽいことをカッコつけるようなスタイルは嫌いなんですけど、残念ですけど、私自身もその一種なのかもしれません。自分の心情をさらけ出すのが苦手なんですが、徐々にぶちまけていきたいな、と思っています。私の妄想逃避なんかも案外好評だったので、ありだと思います。

でも、私小説を書くのは最後の最後であり、デビューで書いてしまうと、それ以上に面白いものをかけない、といいますし、私が老境に入ったころ、どくろ杯のように過去を振り返りながら書くとして、それまでは自分の感情はともかく、過去を語りたくはないな、と思います。悪いとは言いませんけど、私小説は老人のもの、であり、若者、中年のものではないと思いますね。

正直なところ、私は人生で一度も貧乏になったことがなく、財布を忘れたので、千円借りた、とかを除けば、まともに借金もしたことがなく、一時の快楽に後先考えず、散財したことがありません。貧乏人の心情がわからないだけでなく、Q師ほどのお金持ちでもない。性的にもいたって常識の範囲内なので、文学的にはダメダメだと思いますから、文芸作品書くことはないと思います。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、貧乏人の心情” への 21 件のフィードバック

  1. 鮮やかにクズって笑ってしまいました。鴎外の娘の茉莉はクズっぽいですよね。
    シンさんは女性もまともな人より
    ダメっぽさがある人の方が惹かれるのですか?
    長期的な関係を築くことは無理でも、
    メンヘラって魅力があるのでしょうか。。

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    1. 鴎外の子供だと、茉莉、類がクズですけど、あくまで鴎外ありきのクズなので、クズとして自力で名をなした人、とは言えないのではないでしょうか?クズエピソードもしれたものですしね。

      そうですね、才能のあるメンヘラって独特の魅力があります。たぶん、男女ともに同じなんですけど、何か突き抜けた人って、傍からみると、精神異常者みたいな人が多いのです。私は才能のないタダのメンヘラにはまったく惹かれませんが、才能のあるメンヘラにはまりますねw

      シン

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  2. 限度はありますが、馬鹿なことを真面目に真剣にやる人は嫌いじゃないです。
    自分が会社の上司とかではない限り責任がないので好きなだけ弾けていただきたいです。
    たまに犯罪になってニュースになる人もいますが、よく考えて自分の中で簡潔してる人は面白いので友達も多いです。

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  3. シンさんの記事からは育ちの良さが滲み出ていますが、人間は無いものねだりで貧乏や混沌とした人間関係の中にいると、逆に借金もしたことが無いと言ってみたいものです。

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    1. 借金って、貧困から生活の為にするというより、バカの代償を払っている側面があり、情弱税、だと思います。金子光晴もミドル出身で、早い段階で詩人として名が売れた恵まれた人なんですが、とにかくだらしないので、借金するんです。

      そういうクズさは傍目から見ると面白いんですが、関わるとメチャ迷惑しますw

      シン

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      1. 小学校のとき、野口英世の伝記を読んだことがありますが当事、お金がないのに苦労して借金して医者になった立派な人だと思いました。その反面、やたら借金してるな~と漠然と思ってました。
        大人になって、野口英世も浪費家でお金にだらしない人だったんだなと親近感も沸きました。

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        1. 野口英世って、天才的な集中力、粘着気質で業績を上げた人ですが、人間的には完全にクズですよ。餞別にもらったお金を遊興で使い果たして、借金する。結婚詐欺で、お金を毟る。才能がなければ、単なる犯罪者です。

          シン

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  4. シンさんの記事が好きなので、お薦めされている、どくろ杯を読み始めましたが、挫折しそうです。彼の良さがわからない自分が残念です。

    ところで、文学論って、何故だか凄く恥ずかしい気分になるので、日常では誰にも話せずに悶々とします。自意識過剰ですが、好きな作家で、自分の根幹というか、人間性を見透かされた気分になります。

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    1. 好みがあるので、仕方ないですね。あと、若い人には合わないと思います。何年か後に良さがわかるかもしれません。わからないかもしれませんけど。

      好きな作家は本人の嗜好をもろに示すので、同僚なんかとは率直に語れない気恥ずかしさがありますね。

      シン

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      1. どくろ杯をもう一度手に取り、最後まで読みました。上海に入ったあたりから面白くなり、旅愁をそのまま本にしたようで、しみじみとした良さが少しわかりました。他の作家と違い明確な主張や格好つけが無く、泥沼のような本だなと思いました。

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        1. そうなんですよ。上海に着くまでは明らかに冗長で、当時の文壇に興味がないと、どうでもいいようなグダグダが延々と続いていくんですが、上海に入ると旅情が溢れた描写になり、出たくて日本を出たのでなく、出ざるを得ない事情があり、とにかくパリを目指すためになんでもやっていく様子が描かれます。

          東南アジアに興味があったり、縁があるならマレー印蘭紀行、ないなら、飛ばして、ねむれ巴里に行ってもいいかもしれません。

          ともかく、金子の良さはカッコつかないことで、弱さもむき出しにしながら率直に書くことで、わたしはそれが出来てないので、憧れます。とは言っても、これら紀行は晩年に書かれたもので、実際に経験した三十過ぎにこの境地には至ってなかっただろうと思います。

          泥沼だから、少し斜に構えたアウトサイダーが好むんですよ。少し時間があって旅に出た時に安宿のベッドで寝転がりながら読むと、染み込んでいきます。

          シン

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          1. 自殺した作家(芥川、太宰等々無数)は格好いいのですが、私は自殺してもおかしくないのに、しなかった作家の方が好きで、その点が好印象でした。

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          2. 確かに自殺すると伝説になります。昨日からリンキン・パークに興味なかった人までがSNSなどて、チェスター、チェスターと煩いくらい言いだしてます。自殺と言うのは大きな事件ですね。

            シン

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          3. シンさんは、次回作をさらに良い作品にしようという意気込みがみられますが、どくろ杯には良い作品にしようという意気込みがみられず、さらさらと書ききったように見えて、描写が素晴らしかったです。誰も読んでくれなくて良いけど、書かずには死ねなくて書いたような必然性に驚きました。良作をご紹介頂き、ありがとうございます。

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          4. 晩年の作なので、今更、良いものを書きたいという気持ちではなく、評価されるかは関係なく、書かずには死ねないという気持ちで書いたのだと思います。よくもこんな細かいところまで覚えているなり、記録を取っているよな、と思いますね。私は私小説はこの形が一番好きです。

            良かったらナマケモノさんもお勧めを教えてください。ぬるり文芸部とでもいう自分のお勧めを紹介するのも面白いですね。

            シン

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          5. 世の中、誰かに読ませようと書いたものが溢れているので、そのままに書いたものの方が、唯一無二の素晴らしいものになりそうという意味です。念のため補足しますが、やる気を否定している訳ではありませんので、気を悪くされないでください。

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          6. いえいえ、気を悪くなんてしていませんよ。晩年にならないと、こういう作品は書けません。前に紹介したT-Thaiというブログが近いですが、それも晩年を楽しみたい、というスタンスですから、私には早すぎます。晩年になったら、そこに行きつきたいです。ただ、今現在でも、どう評価されるかは関係なく、淡々と書いていきたいです。他人にどう思われるかは二の次、三の次です。

            シン

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          7. それが、人におすすめできる文芸に中々出会えてないんです。だから、どくろ杯(上海以降)は久々の当たりでした。文芸ではないですが、気に入った作品を挙げさせて頂きます。

            なぜE=mc^2なのか? ブライアンコックス&ジェフフォーショー、科学者の感動を、学が無くても体験できます。

            ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 生田武志、野宿者が寿司を奢ろうとする話がもの悲しいです。

            都築響一の写真集全般、人間の儚さが伺えます。

            ドキュメント72時間(NHK)、当たり回と外れ回がありますが、たまに無性に観たくなります。

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          8. ありがとうございます。

            科学、ルポ、ドキュメントなんかのリアル系がオススメなんですね。私もその系統が好きなので、オススメを探してみます!

            シン

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