じゃあ、長子相続

サウジアラビアで政変が起こり、バタバタしていますが、これは彼らが長子相続の習慣を持っていないからです。牧羊民族は一族で最も有能な人間が後継者になり、長男だから無条件でリーダーにはなれません。これはモンゴル系の北方民族も同じで、中国のモンゴル系王朝はこのシステムを取るため、どうにもならないダメ皇帝は少ないです。

さて、長子相続について書きたいと思います。

財産

「田分け」という言葉がありますが、農民が長子相続をせず、子供に分与すると共倒れになることから、田畑は分けてはダメだ、という戒めの言葉が語源だそうです。仮に余りあるほどの田畑があっても、分与によって力が衰えたり、一族内闘争の原因になりかねません。

こうした理由から現代の多くの皇族、王族は長子相続を法律によって決めており、日本の皇族も例外ではなく、天皇陛下の後継者は長男である皇太子殿下であり、次は秋篠宮殿下、悠仁親王殿下、となります。女性に後継権を与える場合もあり、イギリスでは法律が変わりましたね。

貴族ではこれが適応されず、分与が法律で決まっているため、日本の貴族は解体状態になっており、旧華族で大金持ちはいません。戦後の農地解放、相続税、分与法が定められると、どうにもなりません。イギリスは分与法が定められたのが日本より遅いので、まだ当主が代替わりしておらず、力がありますが、時間の問題で日本と同じようになるでしょう。

能力

長子相続の弱点は生まれた順序で能力と関係なしに後継順位が確定してしまうことで、当たり前ですが長く生きていれば、それだけ賢い、ということはありません。だから、明らかに能力の足らない人がトップに立ってしまうことが多々あります。

例えば、江戸時代、将軍徳川家重は言語障害、軽い知恵遅れだったらしく、かなり接していないと何を言っているのかわからなかったそうです。それを利用した側近政治がはびこり、組織が停滞しました。弟の田安、一橋両人は優秀だったので、どうかな?と思うところがあります。父親の吉宗もかなり悩んだそうです。

でも、次男の田安宗武(将軍就任をかなり狙っていたようです。)を後継者指名すれば、家康の定めた長子相続を無視することになりますし、自分の行った享保の改革である程度の安定を取り戻したのと、家重の息子、家治は利発だったので、原理原則を優先させたみたいですね。

闘争

長子相続をしないとなると、サウジアラビアみたいに状況が変わると、政変が起こって関係者を難癖で逮捕していき、服従、追放の二択を選ばせることになります。最悪は内乱につながるので、代替わりは政治混乱に陥ります。

室町幕府も後継者争いから戦国時代に突入しています。六代将軍、義教は足利家を相続する予定は全くなかったので、元は僧侶をしており、本家の後継者がいなくなったことで後を継いでいます。その決定に不満を抱いた勢力が内乱を起こすことで足利幕府は実質崩壊し、戦国時代に入ります。

江戸幕府は三大家光、五代綱吉、八代吉宗、十五代慶喜、とかなりのもめ事を起こしながら後継者争いが起こり、それを何とか解消しながら長い政権を維持しました。これは家康の家訓がなんとか内乱を留めたといえるでしょう。

闘争を勝ち抜いた後継者は確かに能力があるため、混乱期を乗り越えれば長い平和と発展につながることが多いですが、それまでに政権が瓦解してしまうことも珍しくなく、諸刃の剣だといえるでしょう。中国のモンゴル系王朝、金、清は代替わりごとに大きな闘争になっています。

まとめ

現代法では分与が当たり前ですが、平等ではあるけれど、これは一族の力を弱めることになります。でも、国の政策としては金持ち、権力一族を出来るだけ消滅させたいわけで、それが正しい方向と言えるでしょう。

それでも麻生副総理の実家みたいに相続税逃れに一族の財産を公益財団化したりして、一族を政治系統、実業系統を分けたりしながら、上流を維持しているの一族は世界中にあります。アメリカ人がやたらと寄付したり、財団を作るのはボランティアのためではなく、相続のためなんですよね。

9+

投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

「じゃあ、長子相続」への7件のフィードバック

  1. 清朝が長続きした理由が一族の中で最も優秀な人が皇帝を継ぐって理由で間違いないのですが、この記事からデメリットもそれなりにありますね。
    元朝というかモンゴル帝国がこれが理由で滅んでます。

    明は、皇帝権力を強くしすぎたため滅亡しましたが、どうしても長子がダメな場合に対して、徳川幕府だと中期以降は、大御所時代と言われて老中というか親藩、譜代の中から優秀な人が政治の実権を握るというやり方を取りましたね。
    また、宋は文治政治により優秀な官僚を取りたて皇帝がイマイチでもなんとかやってましたね。

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    1. 確率の問題として本家の長子が最も優れていることはそんなにないので、江戸時代の名君はほとんど分家、養子ですね。島津斉彬くらいしか長子で名君は思い当たりません。

      シン

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  2. 日本がこれだけ少子化になってくると、今後は数少ない子供が多くの遺産を相続するということが起きるように思います。
    場合によっては、両親祖父母の遺産を1人の子供が受け継ぐとか。そうなれば子供は一生食っていくのに困りません。

    金持ちは金持ちと、貧乏人は貧乏人と結婚する傾向がありますから、相続による格差拡大が今後問題になってくるかも知れません。
    本人は中小企業のサラリーマンなのに、大きな家に住んで、子供にいい教育を受けさせている人っていますけど、そういうからくりがあるのかも知れません。

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    1. サラリーマンの生涯賃金差は大手、中小でも大したことはないので、相続財産が大きければ余裕で逆転しますからね。何回か相続したら一般家庭ですら相続財産で一億円くらい行くこともあります。そう考えるとサラリーマンで命削って頑張るのはバカみたいですね。

      シン

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      1. 一方でこんな話題も出てるっすね。

        「土地は捨てられるのか 男性、国を相手に「実験的訴訟」 」

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      2. 日本では個人の金融資産の合計が1800兆円、それ以外も合わせると8000兆円いくらしいです。
        資産格差は収入格差よりずっと大きいのが普通ですから、億以上の財産を持っている人は珍しくなさそうです。
        さすがに二桁億持つ人は少ないでしょうが、収入が低くても一桁億の資産を持ち、質素でかつ心穏やかに暮らしている人はゴロゴロ居るでしょうね。

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