じゃあ、工作機械メーカー

工作機械メーカーについて記事リクエストがありましたので、書きたいと思います。

市場

90年代まで、工作機械、日本勢はMade in Japanの供給で世界をリードしてきましたが、2000年代に入って、中国勢が凄まじい勢いで成長し、2010年には日本勢はトップを奪われ、台湾、韓国勢の安値攻勢もあり、苦境に陥っています。市場規模自体は大きくなっているのですが、新しいプレーヤーの登場によって、売上を簡単には伸ばせなくなっているのです。

需要としても、世界の工場としてトップに躍り出た中国勢は世界全体の工作機械需要半分を取り込む巨大市場になっています。メーカーはデザイン、製造に別れ、先進国での製造を諦めるようになり、みんな大好き、iPhoneのようにDesigned by Apple, CA, Assembled in China となりました。つまり、汎用品製造の主戦場は名実ともに中国となったのです。

つまり、日本は工作機械メーカー、トップの座を明け渡し、取り返せる見込みもなくなり、徐々にシェアを減らしているのが現状であり、これから、何かしらの手段で他社と差別化できないと、単に良いものを作っているだけでは経営を続けていられなくなりつつあります。

分類

工作機械メーカーと言っても、いくつかの分類に分かれます。各社、色んなものを作っているので、綺麗に分かれるわけでもないですが、主力を何とするのかで分けてみます。

A) ロボット系

ファナック、安川電機、不二越

B) 加工系

DMG MORI(独企業合併)、アマダ、オークマ、ヤマザキマザック、ジェイテクト、THK、新日本工機(台湾企業売却済み)など、多数

C) 工具系

マキタ、日立工機(米ファンドに売却済み)

ロボティクス、として熱いテーマ材料であるA)は良いとして、日本勢だけで過当競争気味のB)は今後、統廃合が加速すると考えられ、森精機は単独での生き残りを諦めて、独企業、DMGとの合併を選択して、完全統合しました。また、中堅の新日本工機が台湾企業に買われるなど、今後も激しい動向が見られるでしょう。工具系のC)は長期的に考えると、新興国製の廉価品がどんどん登場して、価格崩壊すると思います。

ソフト

おそらく、今後起こるであろう工作機械メーカーの統廃合はNCがキーワードになるのではないだろうか?、と思います。ソフトの部分を押させえているファナックはどんどん強くなります。自社でソフトの内製に成功したヤマザキマザック、オークマは何とかやっていけるでしょうし、DMG MORIは世界規模を武器にして、カスタマイズを要求できるでしょう。

NCが内製できない中堅、中小規模の工作機械メーカーはアウトソースするしかなく、ウォーターフォール式しか知らない日本勢は外注を上手く使うのが下手なので、この波を乗り切るのは難しいだろうな、と思います。そうなってしまえば、同じファナックのNCを使う新興国メーカーと戦うことになるので、差をつけることが難しくなります。

また、工場の自動化が進む中、IoTをキーワードにして、工場内設備のインターネット接続がプロジェクト参入の最低条件に移行した場合、ソフトに弱い工作機械メーカーは蚊帳の外になり、高価格帯の仕事を諦めて、中、低価格の仕事に食らいつくしかなくなれば、後は時間の問題でビジネスとして成立しなくなります。

将来

前に業界の人と話したことがあるのですが、一昔前に専用機でやっていたことが、汎用機で出来るようになり、数をこなすうちに中国、韓国、台湾勢の能力はどんどんあがって、低価格ラインではとても太刀打ちが出来なくなった、という聞いて、この業界も同じだな、と思ったものです。

であるのなら、日本勢が今までやってきた「コスパ」「高品質」という概念を捨てて、「ニッチ」「独自性」「ソフトからの囲い込み」というテーマで取り組まなければ、どんどん経営が苦しくなるでしょう。そして、そういうテーマを日本企業は苦手とするので、今後が不安な業界でもあります。

逆に言えば、やりようによってはどんどん伸びる業界ですし、実際、市場規模は拡大し続けていますので、日本政府はファナック、安川は国策企業として全面的にバックアップすべきですし、加工機系メーカーは統廃合を即すべきだと思います。いつも言うように、日本勢同士の潰しあいに何の意味もありません。

まとめ

やはり、この業界も日本はトップではないのだな、と改めて思いました。日本のお家芸はどんどん失われ、絶対的な立場ではなく、高価格帯で欧州勢、中価格帯で韓国、台湾勢、低価格帯はありえない安さの中国勢とガチンコ勝負して、何かしらの付加価値によって、勝ち抜かなければ、生き残れない時代になりました。

ジェイテクトはそのままトヨタグループですが、ヤマザキマザック、オークマ、DMG MORIも愛知県企業であり、トヨタ自動車が転ぶことになったら、大騒ぎになるだろうな、と想像します。自動車産業は日本の最後の砦になりつつあり、ここに頑張ってもらわないと、付随する産業は工作機械だけでなく、どうにもならなくなります。

だから、この業界に進む人、すでにいる人の課題はハードのエンジニアリングに加えて、ソフトを加えて、融合することで、外注を使うにしても、使いこなせるくらいの知識がないと、良いようにやられたり、成果を出せないだろうと思います。

投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、工作機械メーカー” への 18 件のフィードバック

  1. あああ、なんだかもうまどろっこしいですね。
    私がオーナーならアジャイルでスクラム回して、ハード系、ソフト系 融合プロジェクト、
    さらに海外へのマーケ戦略を練るのになー といつも思います。それに大事な人員は正社員とします。
    事務方、マーケを不足な時だけ外注するスタイルにします。

    もう既に遅いのかもしれませんが。。。

    1. まだ、遅くはないと思いますが、わかっていながら出来ないのが日本企業なので、時間の問題で手遅れになるのでしょう。

      シン

      1. シンさん
        言い出しっぺが損しますからね。言い出しっぺがこけたら、痛烈批判。軌道に乗り始めたら、会議などにもちゃっかり顔出して自分も関係者でした演出。これが日本企業で出世する王道なのです。自分の責任の所在をあいまいにして、批判だけする風土が根底的にあり、それを変えて行かないと厳しいでしょうね。

        1. 日本企業は責任の所在が曖昧で、言い出して軌道にさせても、相応の報酬を受けられないし、逆に失敗しても、責任取らさせれないので、黙って他人にやらせて、上手くいきそうな段階まで来たら、ちゃっかり最初からいたような振りをして、手柄を奪いにくる。そういう社内政治家が出世する慣習をなくさないと、現状打破は無理だと思います。工作機械もこのまま放置すれば、手がつけられなくなる会社は少なくないでしょう。

          シン

          1. Yさんのおっしゃる通り、日本企業の根底に根付く良い時に褒める もしくは きちんと成功例として取り上げて、それなりの報酬を1社員に還元できるシステムがないのは非常に残念ですね。

            私も以前、部下の手柄は上司の手柄、上司の失敗は部下になすりつける という典型的な日本人オヤジDQN上司に当たったことがありました。このタイプは日本企業の老害、ひいては日本国の衰退の元凶であると思っています。更に残念なことに、その数は多そうです。

            社内政治も影響してるとは思いますが、アイデアから、デザイン、仕様、開発、QA,セールス、納入までの全工程が遅い = 認証システムのIoTが遅々として進まないのは、根底に日本の公文書が判子社会であるからではないのではないか?とふと思いました。

            役所、銀行に至るまで、いまだに事あるごとに「実印は?」と聞かれるので、海外暮らしの長い私は「はい?」、サインじゃだめなの?という感じです。アメリカでは普通に電子サイン認証システムがあり、小切手も普通にATMで入金できますし、銀行に限らず、Social Security (年金)、裁判所、病院関連(医師とダイレクトにオンライン通信ができ、医師のサインのある処方箋があればオンラインで薬を購入、無料郵送)等、本人確認さえできれば手続きが数秒ですむ公的サービスは多数あります。

            日本はサービスが世界一いいなどと、日本のマスコミが吹いていますが、私自身が日本へ帰国したとき、役所でいまだに紙ベースで対応しているのに驚きを覚えました。

            それで、なぜ判子ではないといけないのか?その理由は?
            どなたかご存知な方がいらっしゃいましたら、教えてくださいまし。

  2. これからの工作機械は、ロボット系とソフト面の拡充がカギのようですね。
    工場の生産自動化にロボットを導入して、現業の作業員なしで生産ができるようになれば、日本のメーカーの弱点の人件費の高さを克服して、日本国内の空洞化を防ぐ事ができるので、いいことだと思います。
    工業高校や現業の作業員は、職を奪われる問題がありますが。

    自分は、今まで下手に奨学金を借りて大学にいくより、工業高校から大企業に就職した方が良いと思っていましたが、これからはそれが通用しなくなるかもしれません。

    1. 派遣で賄えるレベルの現場作業員は少なくなるでしょうが、正社員レベルは現場技能職に転換できれば、工場全体の雇用はそこまで減らないのかもしれません。遠隔操作には限界がある上、現状の電気系設備のトラブルは機械系より多いので、メンテ要員は多く必要です。また、最重要工程をロボットに任せるまでにはまだまだ時間が必要だろうと思います。

      シン

  3. 体力と資金が残っているうちが勝負時と分かっていても、雑務と決裁経路が多くて、動きが遅くなるんでしょうね。高価格帯でシェアを維持するには、海外顧客への売り込みが必要だと思いますが、英語の壁で、さらに動きが遅くなるので、日本人には不利な戦況ですね。

  4. 大学の研究室の仲間がこの業界にいく人多いので話を聞きましたが、機電情の融合と海外への売り込みがテーマです。
    ロボット系はわかりませんが、国内の加工系ではヤマザキマザックは特許で海外シェアを伸ばす作戦でオークマは高品質で高級路線で勝負してるイメージです。
    また、自動車のエンジン部品の加工などで日本の高度な技術が必要でなんとか凌いでる感じですので業界でトップでいつづけることができるかですね。

  5. 工作機械の一部に入るロボットに関して言うと、人間の動作に近い動きは多関節化によってほぼ可能になっており、残りに技術テーマはAIによる自動学習機能くらいしか残っていない印象です。今後の五年、十年でAIを柔軟に取り込めるかどうかが死命を決するでしょう。
    自動車業界に話を転じますと自動車のエンジンの燃焼システムがおそらく自動車メーカーの肝であったわけなんですが、そこが電気モーターに代替されるとなると自動車がPCに近いユニット化が可能になってしまいます。そのため走行性能でメーカーごとの性能差別性を打ち出すのは厳しいでしょう。(走行性能TOPの企業と同じモーター、同じ電池を搭載するだけです。)また自動車にもAIが組み込まれ始めると、AIや制御システムのOSを握った企業が独り勝ちするでしょう。そうした面で日本企業がアメリカ勢に出遅れているのがかなり気がかりです。
    ドローンにマイクロソフトやグーグルが積極的に関わっているのもドローンを売り込むというよりもOSを握って自社でデファクトスタンダードを構築したいからなんです。
    デファクトスタンダードを構築するのってやはり、欧米諸国が強いですからね。
    IFの話になりますが、NECのPC98が世界を席巻してデファクトスタンダードを構築していたら日本はどうなっていたんでしょうね。実際に1980年代後半までは覇権を掴みかけていたと思うんです。
    モノづくりのデジタル化は便利な反面で、簡単にゲームチェンジがなされてしまう恐れがあるんです。工作機械、自動車でその波が押し寄せて来ています。液晶事業も映像装置が液晶なだけで、制御が電子回路を中心としたアナログ制御だったら、SHARPだってもう少し延命出来ていたと思うんですよ。第二の悲劇を繰り返さないように祈る限りです。

    1. どんなモノも品質自体に差が出づらくなって来て、差を出すのがソフト、プラットフォームになりつつあります。それが工作機械も同じで、自動車に普及したら、ソフトを苦手というか、ソフトの普及、取り扱いが苦手な日本は辛いです。日本にはプラットフォームを普及させるチャンスは何回かあったのですが、全て対応の遅さで不意にしています。

      シン

      1. Yさん、シンさんのおっしゃる事はごもっともです。

        自分ごとで申し訳ないですが、そのAI+機械工作 on 自動車産業で将来的に必需品とされるであろう、アイデアを特許申請中です。今回は出遅れなくて良かったと思っております。

        うまくいけば、かなりの金の成る木になると思います。
        そうすれば、サラリーマン生活とはおさらばできると思います。

        残念ながら、自身のアイデアも日本では生かされないように思います。
        良いプラットフォームを作っても、現在の世界市場ではうまく回らないと思うし、完成した時には時すでに遅しというのが
        簡単に想定できてしまいます。
        残念ながら悲劇はまだまだ続くように思います。

        いずれ、余裕ができれば日本の為に何か自分にできることはないかを考えたいです。
        ちなみに私の夫は母体は米企業ではありますが、間接的に日本国家プロジェクトにエンジニアとして参加しています。
        末端ではありますが、遣り甲斐を感じているようです。

        1. 特許長者になったら、ぬるりファンドにも寄付をお願いします!w

          中に良いものがあっても、対応の遅い日本企業では活かせないし、外注を見下し、序列で判断するので、チャンスを見落とします。いつも言うように日本はありえないくらい危機にならないと、現状に前例を優先させます。

          シン

          1. かりりんさん
            特許調査の相談なら相談にのります。
            ぜひ、公報を読みたいものです。

          2. シンさん

            もちろんです!
            特許長者になれるよう頑張ります!
            なれなくても、多額の寄付は無理ですが何かしら貢献させていただきたいです。

          3. ニコさん

            心強いです。ありがとうございます!
            壁にぶつかりましたら、ご相談させてください。

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