じゃあ、MRJ-2

さて、MRJについて私の見解を記事にしたいと思います。

国策

MRJのスタートは2002年、徐々に日本の製造業が行き詰まりを始める頃に経済産業省が三菱重工、川崎重工、富士重工に提案したことからスタートしていますから、国策事業だといっていいでしょう。実質的にその体力があるのは三菱重工しかなく、他には声をかけただけではないかと思います。

大型ジェット機はボーイング、エアバスの二強体制であり、その利権に手を出せば、何が起こるかわからないですし、中小型ジェットならお目こぼしを受けられるだろうし、実際、ライバルはブラジル、エンブラエルなので直接のバッティングはしないだろう、と思ったのでしょう。

三菱重工は零戦の製造元でもありますし、日本の防衛産業も担う会社ですから、日本がジェット機事業に入るなら大本命と言っていい立場ですし、国が半分お金を出してくれる、ということに乗り気になって事業化検討に入ります。三菱財閥としても、フラッグシップと言える大事業だと思っていたんでしょうね。

事業

2008年に三菱航空機、という会社を立ち上げました。その前の時点でボーイングの直接出資、トヨタからの出資などの話が合ったようですが、三菱重工はそれを断って単独出資にしています。その後の苦境はこの決断が大きく影響しているのではないかと思います。

そもそも、大規模に製造業をするのに巨大な北米市場を無視して、アメリカに「みかじめ料」を払わずに行うのは無理です。何かしらの形でアメリカに利益が落ちるようにしなければならないにもかかわらず、アメリカでの事業経験の少なかった三菱重工は良いものさえ作れば、認められると甘い考えで突っ走ることにします。

いくらかボーイングから直接出資を受けて形だけでも米系合弁企業とするなり、米国工場を立ち上げてアメリカの現地雇用に貢献するなど、ホワイトハウスへのロビー活動を事前にしておかなければ、その後の嫌がらせは目に見えていたのですが、それを誰も言わなかったんですね。

血税を使った国策事業であるため、外資の直接出資は受けられないなら、アメリカで事業経験豊富なトヨタと組んで、さまざまな根回ししていっても良かったのですが、それもしなかったのです。(トヨタはアメリカで叩かれ慣れているので、ロビー活動もしています。)

量産

国の全面的支援を受けて、MRJは順調な受注活動をしていきます。当然、日本企業の日本航空、全日空は発注しますし、ボーイングとの関係もあり、アメリカ企業からも好意的に受け止められ、トランスステイツ航空から受注も成功します。日本政府もODA援助先に売り込んで受注を決めてMRJをアシストします。

この辺りがMRJ絶頂期なんだろうと思います。私自身も2008年くらいは、ついに日本の国産ジェットが空を飛ぶのかぁ、と感慨深い気持ちになりましたし、国威高揚の為に素晴らしいことだなぁ、と思ったと同時に、漠然とアメリカからの嫌がらせは大丈夫かな?とも思った記憶があります。アメリカが自分たちの利権に他国が入った時に仕掛ける嫌がらせはハンパではないのはいつものことですからね。

そして、度重なる遅延、遅延、遅延、です。いくつか理由はあると思うのですが、もっとも大きな理由はアジャイル開発ができなかったことでしょう。三菱重工社員で航空事業に精通する人間など、ほぼゼロであり、日本人と限定したら、もっと少ないでしょう。

それでも、三菱重工は自分たちのやり方にこだわり、純国産を突き通そうとし、ボーイングと提携しているにも関わらず、海外製のシステムを採用することもなく、軽々豊富な外国人を雇って権限を与えるでもなく、自社社員によるウォーターフォールにこだわって、次々と不具合を出していきます。

現在

そして、ボーイングはついに見切ってしまい、エンブラエルの買収を本格的に検討しているそうです。つまり、アメリカはMRJを見捨てたわけで、いくら続けても認証は取れないだろうと思います。国策企業のボーイングの傘下に小型ジェットがあるのに、日本製なんて買うわけないし、認証するわけありません。

以前からアメリカは「Buy American」という合言葉にアメリカ製を最優先にする法律を設定していますし、トランプ大統領はその合言葉が生命線の一つでしょう。だから、仮に粘りに粘ってMRJがアメリカで認証されても、買うアメリカ企業はないでしょうね。投げ売り、相当有利な契約にしたところで、ホワイトハウスに睨まれる愚を犯す理由はないでしょう。

MRJが成功しても売り先は国内、ODA援助先だけになりますが、開発費の回収は出来るんでしょうか?アメリカには売れない、中国にも売れない。そんなことで採算を合わせることは出来ますか?もう、討ち死には見えているんです。形成逆転なんてあり得ないのに神風特攻隊で更に被害を拡大するつもりだそうです。

まとめ

改めて思いますが、日本の製造はダメなんだな、と。悲しいですが、もう売るものがなくなってきています。家電がやられ、半導体がやられ、工作機械がやられ、最後に残った自動車を支えていくしかないのでしょうか?あとはロボットくらいしか望みがありません。

すでに世の中はウォーターフォールでは通用しません。明らかな間違いを下から上げられず、ちょっとしたことを変えるためにかなり上まで決済を取って、時間をかけて時間を食いつぶして、納期の為に死の行軍をするようなやり方は古すぎます。

そして、白人たちと正面衝突してガチンコ勝負するなんて絶対にダメです。特にアメリカとやり合ったら、軍事力を背景にルールを変えてしまいます。そんなことは何度も繰り返された歴史なのに、多くの日本企業は未だに政治を覚えません。

同じアジア人の中韓がきっちりロビー活動をして有る事無い事をねじ込んでいるのに、日本人はキレイゴト言ってしないから、ありもしない事が事実として捉えられているのです。南京大虐殺、従軍慰安婦なんて証拠もないのに、事実認定されているんですよ。

MRJに関わる人もその事実はわかっているんでしょう。でも、正しいことですら、声を上げると潰される環境で口をつぐむしかなく、諦めと、やけくそで、討ち死にするまでプロジェクトを継続させるのでしょうね。寂しい気分になります。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

「じゃあ、MRJ-2」への7件のフィードバック

  1. >>以前からアメリカは「Buy American」という合言葉にアメリカ製を最優先にする法律を設定していますし、トランプ大統領はその合言葉が生命線の一つでしょう。だから、仮に粘りに粘ってMRJがアメリカで認証されても、買うアメリカ企業はないでしょうね。

    米国は綺麗事を建前にした経済ヤクザみたいなものです。米国の利益にならないと判断されれば、あからさまに潰しにきます。ボンバルディアがエアバスに取り込まれた途端に、突如として300%!の懲罰的関税食らって米市場で息の根を止められそうになっているのが偶然なわけありません。

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    1. 他の国がやったら、猛バッシングして圧力をかけますしね。まさにジャイアン、ジャイアニズムの国ですね。

      シン

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  2. トヨタ系はアメリカの事業に慣れてますよね。
    リコール問題の際に、どこかの州知事があまり叩きすぎると雇用が失われるのでやめてほしいと言ってる様子も見たことあります。
    本社機能はなしにしても、製造だけでもアメリカに置いてあげるだけでも好感度がだいぶ違います。
    アメリカで生産してるメーカーなんて少ないし現場と生産技術を育てていると感謝され、毎年アメリカ支社のお偉いさんが日本に来ますし、州知事から感謝状をいただいてます。
    ソフトの規格やなんかをアメリカの顔を立てるために協力してもらうだけでもだいぶ違ったと思ってます。

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    1. 雇用問題って政治家にとっては生命線で、ともかく仕事があって、お金が回るっていれば、諸問題は何とかなってしまいます。だから、アメリカできちんと雇用を生み出しているなら、一時的に叩かれても潰されはしないです。きちんとウィンウィンにする政治力を身に着けないと、外国で仕事はできないってことでしょう。

      シン

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      1. シリコンバレーのIT技術者よりもメーカーの現地生産のがアメリカには好まれる気がします。
        アメリカで生産してる製品って少ないですからね。
        本社機能やサプライヤーじゃなくて決められた仕様に従ってシコシコ図面を仕上げて、生産技術や製造が中心で主体性の少ないトヨタ車体のようなボデーメーカーだけだぞ?って思っても、トヨタがアメリカに工場を作ると言っただけでトランプさんはそれ以上何も言わなかったですからね。

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        1. 単純労働者の雇用を増やすのが難しい時代なので製造業は雇用対策に非常に有効です。シリコンバレーのIT技術者は誰でもなれるものではないので、アメリカ人だからアメリカの国策企業、グーグル、マイクロソフトに就職します!とはなりません。でも、トヨタの期間工なら、腹くくって取り組めば、そこそこ誰でもできるんですよね。そこから正社員採用もありますしね。

          シン

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  3. 就活で三菱重工の関連会社を受けたことあるのですが、今思えばCADを使ったことあるか?やうろ覚えですが部門によってはかなり低レベルな次元で設計が遅れていたのかもしれませんね。
    当時は、新卒の面接で合わせてくれたのだと思いましたが、もしかしたら三菱重工のプロパー社員がシミュレーション解析だけして設計を下請けに丸投げでプロパーも経験がないので旗振り役にもなれずに納期だけ遅れてしまったってイメージが想像できます。
    あくまで予想ですけど。

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