じゃあ、日産自動車

リクエスト記事で日産自動車について書きたいと思います。

成り立ち

日産自動車は日産コンツェルンの傘下としてスタートしています。鮎川義介、という人が日産コンツェルンの創業者で、山口県出身の元勲、井上馨に連なる名門の家に生まれ、東大を出た後、現場で一さ業者として働き、井上馨の支援を受けて金属業を始め、次々に商売を広げていき、財閥化します。第二次世界大戦後に財閥解体になり、その勢いはなくなり、日産自動車だけがしっかりとした形で残っています。

戦後、日産の代名詞になる「ダットサン」の開発に成功し、国内外からの評価を得る会社へと成長、経営難になったプリンス自動車を吸収して、産業用ロボット、航空飛行技術、宇宙開発までの開発技術力を持つ会社になります。しかし、「技術の日産」として技術力は評価されていたものの、販売力でトヨタ自動車に劣り、徐々に苦境に陥っていきます。

今の日産と正反対なので、変な感じがしますが、発祥は日本政府の権力筋に近い政商的立場からスタートし、戦後はマーケテイング、ブランドイメージで戦う企業ではなく、質実剛健な技術を売り物とする会社であり、日本の復興、技術大国を象徴づけるような国策企業だった、ということです。

そして、シーマ、シルビア、スカイライン、と今に続くようなフラッグシップモデルの開発に成功し、バブルを謳歌し、イケイケの時代、若者が憧れるようなカッコいい車を製造する会社になっていきます。愛知県にある田舎臭いトヨタ自動車よりも、横浜、湘南のイメージがする日産のほうが若者に好まれたようです。好調がいつまでも続くわけでもなく、バブルが弾ける頃には新しいモデルが不調に陥ります。

経営危機

バブルの頃に評価された燃費が悪いが、見た目がカッコいいモデルがバブルが弾けると売れなくなり、軽自動車のような実用車が評価されるようになるのは当然の流れですが、日産は実用車を得意としておらず、販売に苦しみ、長年の業界第二位の立場さえ失う危機に陥ります。

日産はソニーみたいに官僚主義になっていきます。ありがちな学歴主義、序列主義が当然のものとして受け止められ、東大出身でなければ役員にはなれない、学歴順に採用を決めていく、と言うような体裁ばかりを気にした決定がなされていた、と聞きます。実際、最後の日産日本人社長は東大文系出身です。

当然、その序列主義は日産本体だけでなく、系列各社にも広がっていき、序列順に部品の採用を決め、QCDを無視したサプライチェーンの構築が当然になっていき、話にならないような部品であっても、系列各社との資本関係、人間関係を優先させて、競わせないのが当たり前になってしまいました。そうなれば、高い、質が悪い車が出来上がっていきます。

ルノー

ミレニアムになる頃、日産が2兆円もの有利子負債を抱えて、どうにもこうにも立ちいかなくなり、国内に救いの手を差し出す会社はなく、ドイツ、ダイムラークライスラーと話をするもののギリギリのところで妥結できず、捨て値でルノーに拾われることになります。

ルノー日産アライアンス、というのは名ばかりで、日産はルノー子会社になり、フランス企業になりました。そして、社内官僚が駆逐され、剛腕、ゴーン氏がフランスから派遣されてきます。この人はレバノン系ブラジル人、フランスで育ち、名門エコールポリテクニークを卒業し、ミシュランに就職、若干30歳で工場長を務め、成果を出し、ルノーに引き抜かれた人です。

ルノー、ゴーン氏がやったことは簡単で、「リストラ」です。不採算拠点の整理、子会社、系列会社の整理をして、今まで序列によって決定していた流れを数字だけを見て断行するようになったのです。言うのは簡単ですが、やるのは並大抵のことではなく、日本人がやれば自宅に帰れないくらい憎悪の対象になったでしょう。外国人だからやれた、と言えます。

そして、日産は復活、ルノーとしては最高の底値買いを出来た形になり、事業規模、時価総額共に日産はルノーを凌いでいますが、過去の経緯からルノー傘下でしかなく、日産が持つルノー株は議決権行使も出来ませんし、日産出身のルノー役員もほとんどいません。フランス人の一喝で日本人はシュン、となります。

今後

ルノーは不祥事で揺れた三菱自動車も底値買いしました。フランスはイギリスと覇権を争った国だけあって、投資、植民地経営が上手だな、と思います。フランス人はゴーン氏に代表されるように、学歴エリートに権限を集中させて、トップダウンで一気に進めるスタイルの統治を好みます。ちなみにルノーの大株主はフランス政府です。

日本では三菱自動車は人気がありませんが、海外向け、特に発展途上国の道路状況の悪い国では重宝されています。国内では救い手はないですが、海外という意味なら、美味しい投資だと思います。三菱自動車を見事復活させて、日産と同様にお宝にしてしまうのだろうと思います。

現在の日産では以前の官僚主義は鳴りを潜めているようです。フランス人に限らず、様々な国出身の外国人が日産には勤めていますし、生え抜き主義でもなく、中途採用でも抜擢があるそうで、実際、日本電産で暫定社長になった吉本さんもカルソニックカンセイから日産に転籍し、若くしてタイ拠点の社長まで務めています。

自動車産業そのものが大きく変わる時代なので、ルノーがどんなかじ取りをするのか?はわかりませんが、少なくとも今の段階では経営危機が襲うことはなさそうですし、ダイムラーを含めてアライアンスの強化を行うことで、規模を拡大しながら生き残りをかけていくのだと思います。

まとめ

日産自動車は外資でありフランスの会社です。だから、日本式を好む人は日産自動車に勤めないほうがいいし、日本車が欲しい人は日産車を買わないほうがいいです。社風、設計思想までフランス式ですし、部品メーカーも含めて外資と親密ですし、純粋な意味で日本製でありません。その意味ではトヨタ、ホンダという国産とは違いますし、それが合う、という人には良い会社、良い車だろうと思います。

EV対応に関しては早かったですし、フランス政府、ルノーもアメリカで情報収集、ロビー活動をしているので、時代の流れに一気についてこれなくなることはないでしょうが、自動車産業は生き残りをかけてし烈な争いは続いていくのは間違いないです。

日本と同様に欧州も自動車を主産業の一つとしていますし、これを失うと莫大な雇用が失われるため、かなり危機感を持っていますが、今後の展開はソフト側が主導権を握っていくでしょう。アメリカはソフト、ハード両面からプラットフォームを奪おうとしていますし、中国勢もシェアを奪おうと虎視眈々と狙っています。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

「じゃあ、日産自動車」への13件のフィードバック

  1. 技術の文献をよく読む立場から日産は、攻める会社の印象があります。
    とにかく、リスクを取ってでも、売れるかどうかわからないけど家電のように新しい技術を世の中にスピード感をもって出しまくる会社だと思います。
    ただし、世の中を驚かすような技術がないかわりに失敗を繰り返して進化させていく点が外資だなと思います。

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    1. フランス人は議論好きで異論は認めます。そして、やりたいなら、ともかくやってみろ!っという気質があります。日産もそういう文化なのだと思いますね。

      シン

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  2. 先日、日産の人から話を聞いたのですが、上司はほぼ全て外国人で、日本人が昇進するのは難しそうだって言ってましたね。
    国籍は見事にバラバラのようです。思ったより外資系なのだなと思いました。

    日産の検査時の不祥事についてはどう思われますか?

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    1. フランス人は本国主義で、ルノー採用であることをこだわります。逆に本国採用なら、人種国籍はさほど気にしないというか、フランスは割と気軽にフランス国籍を与えるので、フランス人になってしまいますね。外国人部隊がそうですし、当のゴーン氏がそうです。日本人で出世したいなら、フランスの学校、グランゼコールからルノー採用されると良いと思います。あと、フランス人は英語があまり得意ではないし、フランス語にプライドがあるので、フランス語がある程度できると、可愛がられるだろうと思います。この辺は英語の得意なドイツ人などのゲルマン系にはない習慣です。

      >日産の検査時の不祥事についてはどう思われますか?

      日産本体の方針ではなく、ディーラーの昔からの慣習なんだと思いますね。

      シン

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      1. フランス人の英語は、フランス語なまりがあって分かりにくいです。インド人並みに分かりにくいなぁと思いますねw
        日産で本腰入れてやっていくには、かなり作戦を練って、日産に寄せた戦略をとらないといけませんね。そこまでするなら、他の外資メーカーのほうが労力のコスパがいいのかな、と思います。
        参考になりました。ありがとうございました。

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        1. 数字がすべての米系、おっとりとしたドイツ系、と比べると仏系はめんどくさいので、シンガポールではあまり人気がありませんね。数字を出しても、本国に異動するのは英語圏、英語が通じやすい国でない為、旨味がなく、生活しづらいです。

          その意味で日系は全く人気がありませんw 数字が明確でない上、日本人だけで幹部を固め、本国は英語がほとんど通じません。

          シン

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  3. 思った以上にフランスのメーカーに成り下がったのですね、日産は。

    明治維新の元勲連中は家柄も何もなかったくせに、藩閥、学歴とくだらない伝統作りやがって。日産がなれのはてですか。

    私の知りあいの女性はフランスかぶれなので、今度ニッサンの車を勧めようと思います。

    初めて乗ったプリメーラはいい車でした。

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    1. ルノーとの共通部品も多いですし、生産も一緒にしているのでフランス車と言っても、差し支え無いと思いますが、見た目のデザインは分けてますね。ルノーはフランス的で、クセが強く、好き嫌いがハッキリ分かれるようなデザインをしてます。

      >明治維新の元勲連中は家柄も何もなかったくせに、藩閥、学歴とくだらない伝統作りやがって。日産がなれのはてですか。

      鮎川家はとうの昔に関わりがなくなっているので、単に源流、という感じですが、明治からの政商を流れ組む数少ない会社ですね。

      >私の知りあいの女性はフランスかぶれなので、今度ニッサンの車を勧めようと思います。

      そういう人は純フランス車のルノー、プジョーが好きなんだと思います。中身は日産だろうが、ルノーだろうが、外面を優先するでしょうねw

      シン

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  4. 日産はルノーに買収される前に、栃木リンチ殺人事件の隠蔽を会社ぐるみで図った疑惑などがあり、根本から腐っている印象を持っていました。
    もしもゴーンの登場がなかったら、早晩潰れていたように思います。

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  5. フランス人は議論好きというコメントから確か共和制というのもフランスが走りなんですよね。
    イギリスは立憲君主制に落ち着いてますからね。

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  6. 日産さんはサプライヤーとしての立場からすると手ごわいでしょうね。自動車の開発は息が長いので、一回入り込んで信頼関係を得られれば、品質問題が無い限り、長期的な購入が約束されているようなビジネスでした。ゴーン体制になってから、日産は本当に最後の最後までサプライヤーで競わせて、従来の日本企業にありがちなサプライヤーとの慣れあいを完全に断ち切りました。2000年前後の日産のリストラで日産社内だけでなく付き合いのあった企業にも大激震が走った筈です。

    >>日本では三菱自動車は人気がありませんが、海外向け、特に発展途上国の道路状況の悪い国では重宝されています。国内では救い手はないですが、海外という意味なら、美味しい投資だと思います。
    →軽自動車の検査記録偽造の後に三菱自動車の設計、開発部の知り合いと話したんですが、正直ビジネスとして日本国内の軽自動車はおいしくない。もう思い切って海外にシフトしたいというのが本音だそうです。日本では下火のデリカやパジェロは中東ではまだ売れているようですし。ただし国内の自動車工場は地域の雇用の大きな創出源なので、政治家や行政の圧力で止めたいけど辞められないみたいです。世間から見たら不遜と受け取られないでしょうが、上流部と世間に物凄く温度差があることに驚きました。
     
     産業革命は生産性の向上の側面だけでなく、ノースキルで思考力の無い人達にとりあえず言われたことだけやっていれば安定的な給与を保証させることを可能にした側面もあります。(ラインの流れ作業など)しかしながら、現在ではそれが裏目に出始めている気がしています。申し訳ないですが、ノースキルの人の雇用を確保するために、頭の良い人の機会損失が発生してる面は否めないですね。
    日本の大手メーカーには社員の海外出張を手配するための旅行代理店や社内の清掃員、事務員を斡旋するためだけの人材派遣会社などがあります。上記の旅行代理店はsky scanerのようなグローバル価格検索システムの登場で既に用済みです。それでもまだ子会社として飼っている会社は多いと思います。正直言って無駄でしかないし、その人達のコストを設計、研究開発のエリート部隊の人達の持ち出しで支えているのが実情です。その実態を知ったら、そうした人たちはバカバカしくなってやっていられなくなるでしょう。(海外出張の手配で、子会社の代理店を通すために煩雑な事務作業をやっていた姿は目を当てられませんでした。ネットで電子チケット買えば終わりでしょ。)
     社内の旅行代理店が無くても、多くの企業は付き合い、慣れあいでJTBなどと特約代理店契約を結んでいると思います。しかし、オンラインで海外のホテルを予約できるこのご時世、通常の国内旅行代理店の存在意義は徐々に喪失しかけていると思います。(強いて言うならば団体手配のニーズくらいでしょうから、突発的、個別的な企業の出張ニーズにはそこまでうまく対応できている訳では無いし、おまけに高いです)そのような訳でいい加減そんな付き合い止めたらって思います。agodaやexpediaの方が情報量も多いし圧倒的に安いのですよ。
     話は脱線しましたが、資本主義の中で勝ち残っていくために、そうした負のなれ合いを断ち切った意味で、サプライヤとしては手ごわいですが、日産が一石を投じた意義は大きいかもしれないと思いました。

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  7. 奇しくも私もルシさんと同様、最初に買った車がプリメーラです。
    1990年に発売された変哲のない4ドアセダンですが、当時の日産の901運動の集大成とも言え、欧州をターゲットとし、徹底的にドイツ車を意識した作りこみ(要は足回り等見えない部分にお金がかかっていた)で初めて欧州車に並んだ日本車との好評を博したものでした。日本でも予想外にヒットしたのですが、保守的なユーザからはそのスパルタンな乗り心地や雰囲気が不評で、なぜかそういった声を重視した日産がマイチェン、フルチェンで改悪を重ね、ブルーバードと顔が違うだけの車になってしまいました。最後のモデルはルノー傘下後に発売されましたが、もはや初期モデルの美点が微塵も感じられない車に変わっていました。思い起こせば90年台の迷走した日産の象徴となった車と言えます。
    個人的にはルノーの傘下に下ったこと事実よりも、日産の凋落が日本市場でのトヨタ独り勝ちを生み、市場全体に車は単なる移動手段というトヨタイズムが蔓延し、活力が全く感じられなくなった点が残念です。エンジニアの人達にとっても、今の日本市場向けに開発する車はつまんないだろうなと傍から見て思います。

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  8. コメント欄で車種がいくつか出されているので、
    私の意見も述べさせていただきます。
    マニアックすぎましたら恐縮です。

    確かに、日産は実質、外資メーカーに変わったと思います。
    そして、グローバル化の一環として、国内専用モデルの数を減らし、
    同じ設計のクルマを、仕向地別に異なるブランド・モデル名で販売しています。

    これは自動車業界では頻繁に行われている商法ですが、
    日産の場合、日本向けモデルのブランドバリューを
    毀損しているケースが幾つか見受けられます。

    特にひどいのはスカイラインですね。
    90年代後半まで(R34型まで)は独自の設計で開発されました。
    しかし、2000年以降、V35型から、インフィニティ(海外の高級車ブランド)と共通設計になって、
    初期型は、スカイラインの伝統である丸型テールランプを搭載していなくてひんしゅくを買って、
    そして現行モデルは、インフィニティのバッジすら変えず、
    後ろにぺろっと”SKYLINE”という名前を張り付けただけ。。

    スカイライン廃止派と継続派の間で発生した
    社内抗争による妥協の産物、と聞きましたが
    これはいくらなんでも、惰性で販売しているのが見え隠れしている、と思います。

    他にも日本市場を蔑ろにしている所が散見されますが、現行型スカイラインはそれを象徴していると思います。
    冷徹な外資系企業としては日本市場に旨味を感じられない、と言われたらそれまでですけどね。

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