じゃあ、システムエンジニア

IT革命によってITエンジニアがそこらじゅうにあふれるようになり、日本ではその総称としてSE(システムエンジニア)と呼ばれるようになりました。しかし、このSEは和製英語であり、シンガポールでシステムエンジニアというのはシステム工学をする解析、分析をする研究系エンジニアのことを指していて、日本のそれとは意味が全然違います。

高校生が漠然とIT関係の仕事をしたいなぁ、と思っていても、具体的に何をするのかわからない、ということは多くあると思いますので、日本でSEと呼ばれる人をいくつかの種類に分けて、具体的にどんなことをしているのかを考えていきたいと思います。明確な定義があるわけでもなく、私の勝手なイメージで分類していくので、食い違うところがあったら教えてください。

研究系

シンガポールでシステムエンジニア、と呼ばれる人たちは研究系でほとんどが博士号を持っています。彼らの専門はアルゴリズムだったり、オペレーションズリサーチだったり、情報系分野でも数学に近い専攻であり、彼らは銀行でモデルデベロッパーをしたり、高度データ解析をしていたりもします。

特殊な才能をもった人たちの集団であり、一般人は何をやっているのかすら理解できないでしょう。高等数学を理解できる人が世の中にどれくらいいるのかわかりませんが、高校で数ⅢC履修している子供が2割以下、その中でも理学系学科に進み、その中でもトップクラスのセンスを持っている人、となれば、1%は軽く割り込むくらいだと思います。

多くの人には関係ないので、あまり気にしなくてもいいと思います。高校生だったら、教科として数学が大得意というレベルではなく、趣味で「大学への数学」とかを勉強して楽しむことができるくらいなら、この分野で飯を食うことを検討してもいいのではないかと思います。そうでない人がこの手の理論系専攻に進むと、全く理解できず、精神状態をぼろぼろにされるでしょう。

SIer

ITでは上流工程にいる人は多かれ少なかれシステムインテグレーターであり、発注元、元請は実装をするプログラマーではなく、発注したシステムを評価したり、統合したり、そのプロジェクト管理をしたりするので、彼らは純粋なエンジニアではなく、ある程度を理解していれば、高度な技術は必要とはされないといっていいでしょう。

そのためなんでしょうが、日本には文系SEと呼ばれる情報系学位を持たず、素人同然でIT業界に身を投じる人たちが多く存在します。まあ、技術も大事なんですが、何社も存在する下請けを管理したり、社内の要望をまとめたり、とコミュ力が要求される要素も大きいので、「文系にするか?」というところなのでしょうか?

しかし、シンガポールを含めて、日本以外で情報系学位を持っていない文系のSIerなど聞いたことがなく、営業に多少の文系出身者がいるが、大半は営業であっても情報系学位を持っています。文系でなくとも、農学部出身SEみたいな意味わからない経歴の人も聞いたことないです。日本の文系SEの話を外国人にすると「そんなんで仕事になるのか?」っと驚きます。

プログラマー

大手が取ってきた仕事の一部分を請け負う下請けで、ソフト屋と呼ばれることもあります。「デスマーチ!」「IT土方!」「ブラック職種の申し子!」などと揶揄さえるのはこの分野です。「高卒でもなれる!」「文系でもなれる!」っと滅茶苦茶言われます。実際に簡単なプログラミング言語さえ覚えれば、誰でも出来るのは事実です。

じゃあ、「なんでこんなにきついか?」って話なんですが、土建業でも下請けは薄利でやらなければならないように、旨みは元請に吸い取られてしまうからっていうこと。また、プログラミング言語は世界共通なので、別に日本人がやらなくとも、10分の1の値段でインド人がやってくれるからです。従って、価格競争になるってことです。

また、日本ではウォーターフォール式の仕事をするので、上流で仕様変更すると、下流では納期が詰まった状態で、仕事を投げつけられるからです。世界的にはアジャイル式が一般的になりつつあり、小さなチームでテーマを分けて、そのチーム内である程度完結させた仕事を後でつなげて、一つの製品として完成させるやり方をしたほうが明らかに効率がいいのですが、日本人はこれが大の苦手です。

プログラミングはITエンジニアの基本であり、出来なければ話にならないのですが、それだけ出来たとしても、何かしらの付加価値をつけない限りは凄まじい競争に晒されて、とてもやっていけないのです。一物一価の原理が最も早く浸透してしまった分野だとも言えるでしょう。海外事務みたいなもので、英語さえ覚えれば、基礎がなくても出来るけど、高度なことしたいなら、付加価値を付けられる専門がないと話にならないってことです。

工学系

このIT時代にどんな簡単な設備でもソフトを使っていないものはほとんどありません。その設備のソフトに関わる人たちが工学系と言っていいでしょう。この人たちはどちらかというと機電系に近い人たちで、ビルの中でスーツを着て仕事をするのではなく、工場の中で作業服で働き人たちだと言っていいでしょう。

ソフト(情報)、ハード(機械)はそれぞれ単独では意味はありませんし、媒体(電気)がないとソフト、ハードは動きません。これを導入、運用、メンテナンスする人が工学系、ということです。知り合いに医療系のソフト、ハードを作って、介護ロボットを研究している人がいますが、こういうのはこれからの高齢社会に大きく起用するでしょう。

時代がどんなに変わっても、設備なしに何も出来ないので、工学系の人たちが職を失ってしまうことはまず考えられません。また、設備は高いので、一度導入されると、何十年と使われるため、その設備の導入、運用、メンテを知っているだけで、会社内での立場は失われません。

事務

社内SEと呼ばれるIT関係の雑用をする人たちです。多くのおじさん、お姉ちゃんは自分でパソコンの設定も出来ないので、社内にお助けマンが必要になります。「おい、このサイトにログインできねぇ!」っと怒り出す人のパソコンを見て、セキュリティーを変えたり、「Wifiのシグナルが弱い!」っといっている人の近くにルーターを設置したり、とかするわけです。

この人たちは事務ソフトの導入、メンテ、データ処理、などもするので、広い分類では事務職だと言っていいでしょう。そして、この手のIT事務職はどんな会社にも要ります。飲食、小売なんかも、手作業で売上を集計する分けないので、ソフトを導入して、きちんとメンテ、データ処理して、経営者に報告しなければなりません。

大して技術はいりませんが、浅く広く知っている必要があり、大学で情報系学位を取る必要もなく、どちらかと言うとITが好きで、ITモールに出入りする趣味レベルのマニアが好まれるでしょう。本当に専門的な話になると、下請けに振るだけなので、知っていても意味ないからです。

オペレーター

銀行などの膨大なデータをひたすら処理するオペレーターもいます。すでに組まれたシステムをひたすら処理していくだけのつまらない仕事です。シンガポールの外国人ITエンジニアはこれが一番多いです。大したことはしていないが、金融バックオフィスとしてそれなりの待遇も得られるし、ミドル、フロントへの異動を狙っている人もいます。

こんなのは情報系学位は要らないと思いますが、シンガポールではこのデータアナリストはみんな情報系学位を持っています。作業系のつまらない仕事なので、マネージャーになるのでもなければ、転職していく人が多いです。邦銀だとフロントほどきつくはないが、銀行の比較的高い給与体系が味わえることが旨みなのかな?、と思います。

しかし、白人はネーミングが上手いですね。単なる作業者を「アナリスト」とか言って、プライドをくすぐるのです。何の分析もしてない、もっと賢い奴らが作ったシステムのバグをチェックしているだけだと思うのですが、そういう人間もはっきり言い切られると哀しいので、名ばかりの「アナリスト」と言う名前に酔うのです。

まとめ

あまりにもやっている範囲が広いため勘違いされることも多い分野です。「デスマーチ!」っとかはIT業界の一部分であり、その一部分があまりにも凄惨であるため、そこの部分ばかりが注目されて、事情を知らない人を震え上がらせているところはあるのですが、一般的に見れば、将来有望な分野だといえるでしょう。

しかし、範囲が広い分、自分が何をするのか?っていうのをそれなりに明確にしておかないと、いざ働こうと思ったときに選択肢の多さに困ってしまうでしょう。研究系は一般人あまり関係ない、変態凄腕プログラマーとかでないとプログラマーはあまりお勧めしないので、他の選択肢から何が自分向きかを考えるといいでしょう。

前にもブログで言ったと思いますが、情報系だけで学部を作ってもいいくらい範囲が広いです。そして、それ相応の受け入れ先があります。ただし、日本では学位が軽視されて、経験ばかりが重視されるので、とにかく採用してみて、そこで鍛えるから、文系でもいい!っとなるので、地位が落ちるのです。また、機電と違って設備が安く、未経験者に触らせてもいいって言う感覚になるのかもしれません。まあ、パソコン触ったことない人は存在しないので、壊しはしないでしょうw

日本に文系SEが存在する理由は色んな要因があると思いますが、日本人の基礎教育レベルは高く、特に高校レベルの数学は世界でもトップクラスだと思います。そのため、文系であっても、独学でプログラミングの基礎を学ぶくらいの素養があるっていうのは大きいでしょう。また、新卒採用、終身雇用がまだまだ基本なので、何の基礎もない人間を連れてきて、鍛えてあげることもそれほど嫌がらないからでしょう。

シンガポールの場合、新卒に対してもほとんど導入教育もせず、いきなり仕事をさせるので、大学でその分野をきちんと勉強していないと途方にくれることになります。上司もコロコロ代わる部下を教育するつもりがないし、先輩もライバルなので教えてくれないので、自分で何とかする以外に方法がないのです。