じゃあ、シンガポール留学

あまりメジャーではないですが、シンガポール留学についても記事にします。

レベル

NUS、シンガポール国立大が東大を超えた、とか言いますけど、それは全くの嘘っぱちで、シンガポールが国策的に世界大学ランキングを意識した環境づくりをしているため、ランキングが東大の上に行くだけで、入試難易度、学生の質、論文の引用数、など、総合的な大学の評価ではそれほどたいしたことはなく、私の感覚的には日本で言うと、上位駅弁くらいの質の学校だと思っていいかと思います。

じゃあ、何でポイントを稼いでいるかというと、英語教育を行っているいうこと、外国人学生の多さ、世界的研究者が多く来ていること、トップスクールとの業務提携なんかで、お金にものを言わせてブランド力を高めているわけです。

NUSのシンガポール人学生はそれほど大したことないですが、周辺諸国からフルスカラーシップで来た学生は確かに優秀です。の国立大学のDean List (優秀者表彰)を見ると、恐らくはシンガポール人ではない名前がほとんどを占めます。シンガポール人のエリートは英米のトップスクールに行くからです。

とは言え、教育環境はいいな、と思います。キャンパスは広くて、きちんとお金をかけていますし、きちんと実績にある教授陣が揃っているので、まじめに勉強したければ、いくらでもできる環境です。周りの学生はシングリッシュを話していますが、ほとんどの教授はきちんとした英語を話しますし、きちんと意識をしていれば、正しい英語も身につきます。

難易度

なら、シンガポールの大学に行こうかな?、と思う高校生がいたら、気になるのは難易度だと思います。TOEFL90、SAT、IBを8割は取ってないと、国立大学の合格は厳しいかと思います。私立大学なら、ほとんど無試験で合格しますが、シンガポールで私立大学は全く評価されず、国立大学に入れない落ちこぼれの受け入れ先とみなされるため、就職でも初任給の提示額が違います。

正直なところ、日本育ちの日本人がTOEFLで90とって、SAT,IBで8割以上とれるなら、東大文系ならほぼ確実に合格してしまいますし、理系でも高い確率で合格するでしょう。それでも、シンガポールの国立大に行くの?、という疑問はあります。

SAT、IBは日本でいうところのセンター試験みたいなものなので、基礎レベルの試験を英語で八割取れれば、これで東大のセンター試験足切りを超えて、二次試験までこぎつけ英語で圧勝して他の科目がそんなに悪くなければおそらくは合格するでしょう。

日本人でその後の人生ほとんどを日本で生活するなら、シンガポールの国立大より、東大のほうが圧倒的にブランド力がありますし、その後の立ち回りに有利なので、身もふたもないことを言えば、東大に行くのをお勧めします。

あえて、シンガポールの国立大に行くなら、博士、ポスドクかな、と思います。個人的には東大の低予算で汲々しているなら、シンガポールに来たほうが明らかに良いと思いますが、東大出身者がシンガポールにはあまり来ません。

やはり、ほとんどの学生は世界最強国のアメリカに行きたがります。東大出身でもないのに、東大より世界ランキングが上のNUS大学院で学ぶ、とか偉そうなことを言っている人もいますが、単なる負け惜しみです。

資金力

シンガポールの最大の魅力は資金力で、すごくいい条件で受け入れてくれます。シンガポールの国立大に通う外国人学生でまったくなんの援助も受けていない学生はほぼゼロだといってよく、少なくとも私の知る限りで、完全に自腹を切っている人を知りません。

ともかく、合格さえすれば、何かしらの形で政府からの援助を受けられるので、経済的負担は低いです。最近は外国人学生への優遇批判が高まり、負担増になる傾向がありますが、それでも英米の大学に行くより安く勉強できます。

特に博士課程が顕著で、日本では自腹で博士課程に通っている人がいますが、シンガポールで自腹で通っている人はゼロだといって構いません。日本の学振より簡単に、高額の援助が受けられるので、本当にお勧めです。

プロジェクトに参加することで、給与を得つつ、パートタイムという形で博士課程に進むこともできますし、プログラム自体に奨学金がついていることもあります。条件のいいものになると、日本円で30万円くらいにはなるので、日本で新入社員やっているより、お金になります。

研究職につくなら、資金力がモノを言うので、低予算で頑張っても、報われない可能性が高く、より資金があるプロジェクトに参加して、目に見える結果を求めて、努力していかないと、テニュアはいつまで経ってもとれません。テニュア取らなきゃ、プー太郎を延々も続ける必要があり、ある程度の年齢まで行って、テニュア取れないと、世捨て人みたいになってしまいます。

まとめ

私が知る限り、日本人はシンガポールの大学に対して過大評価、過小評価に偏りやすく、日本のマスコミによるシンガポール推しから、東大超えた、とかいう過大評価もおかしいと思うし、シンガポール在住日本人のNUS卒なんて大したことない、とか言うのは単に日系企業に来るNUS卒は落ちこぼれ、やる気ない人なので、優秀なNUS卒を知らない、関わりがないだけです。少なくとも、私の知っているNUS卒の優秀な人が日系企業に就職したケースを知りません。

シンガポールの国立大はそんなにレベルが変わりません。シンガポールにおいてNUSが日本の東大にあたるものではないし、専攻の方を重視して、南洋工科大、シンガポール経営大にも流れます。専攻で初任給が違うので、選ぶ側も必死です。弁護士資格と直接繋がる法学部を除けば、理系の方が1.3-1.5倍高いです。

日本でくすぶった文系卒の事務系サラリーマンが現実逃避にシンガポールでMBAなどの文系修士を自費で取ろうとするのはたまに見ますが、意味はないので、やめた方がいいと思います。シンガポールでも大したオファーもらえないし、日本に帰っても、同じです。どうせ、ブランド力が欲しいなら、アメリカのトップスクールにしておくべきで、入らないなら、諦めた方がいいですよ。現実逃避にお金と時間を使うと、後の人生設計に狂いが生じます。

一応言っておきますが、シンガポールの私立大学は話にならないので、まったく進学するメリットはありません。

追記

延々とPVがつくのでNUSの最低募集要項を確認しましたが、英語はTOEFL92-93とあります。これだけ取れたら、他はボロボロでも英語だけで私大文系なら押し切れるくらいですよ。海外で生活したことない日本の高校生でこれだけ取れたら天晴れです。

東大文系に行きたい気持ちを抑えてNUSにそれでも行くのか?、という話です。理系はその限りでもありませんが、なんのスキルもつかない文系なら本国で少しでも知名度が高い大学に行くのが無難だと思いますね。

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Garfield
7 years ago

こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。東大と英語の関係について、その通りだなと思ったので私の体験を記します。

私は理Ⅱに10数年前に入り、その後理系の院を卒業しました。今も当時も東大(日本の他の大学もですが)の英語の配点は高いです。学部入試ではセンターが110点に圧縮されるのでほとんど差が付かず、二次試験において合計440点中230~240点取れれば理Ⅲと文Ⅰ以外は合格できます。英語は120点満点なので、TOEFL iBTで80点とか90点取れるならば東大二次では100点を狙えるでしょう。そしたら残り320点中130~140点で済んでしまいます。実際理Ⅲでも数学が120点中20点台なのに、英語が110点台で後は理科で稼いで受かった人がいました。今から振り返れば、東大入試の中で英語だけは他科目に比べて明らかに簡単です。(当時は難しく感じましたが・・・。)

東大院になると、学部によりますがさらに英語の配点の割合が高くなります。私のところではTOEFL ITPテスト(団体向けTOEFLテスト)を利用していましたが、1000点満点中確か300点が英語の配点でした。合格最低点は公表されていませんでしたが、他大学で学部時代に英語圏に交換留学していた人が楽々合格して入ってきていました。英語の配点が高すぎるのはおかしいと教授が怒っていましたが。

私自身あまり大学の成績は良くなかったのですが、大学時代に英語を多少勉強したことで、就職先では海外事業に関わることができました。ネイティブには程遠すぎて悲しくなるものの、TOEICは900点台後半であったので、日本企業ではかなり評価されたようです。これによって、ありがたいことに欧州のとある国へ駐在するきっかけを得ることができました。

シンガポールの大学がどの程度のレベルかは実際のところ私にはよく分からないですが、まともに学問をやろうとするならば東大で十分できます。研究レベルもやはり高いですし、すごい学生もやはり多いです。新卒カードが強い日本ならばやはり東大という名前は就職にも強いです。語学以外は出席もあまり取らず単位も緩いので、自分のやりたい勉強をする時間はかなり確保できます。国立大ですし授業料免除も受けられる(私も受けていました)ので、地方から来た学生にも優しいです。なのでシンガポールの大学に学部からわざわざ行く必要はあまりないのではと思います。英語もちゃんとやればそれなりに使えるようにはなると思います。

今の中学生や高校生への提言としては、英語をしっかりやろうと言いたいです。若いうちなら頭も柔らかく時間もたっぷりあるので、モリモリ勉強すればTOEFL100点越えだってできるんじゃないでしょうか。そしたら日本の大学入試で非常に有利です。英語で点が取れれば、自信が付いて他科目の勉強も心理的に楽になるでしょう。金銭的な余裕があるならばアメリカやイギリスのトップ大学を狙うこともできると思います。そして何よりも今後の世界で働く上で大きな力になります。英語がそれなりにできる日本人も当時に比べれば増えてきましたが、まだまだ10年くらい優位性があるんじゃないでしょうか。もちろん働く上では英語以外にちゃんと専門性があることが前提にはなりますけどね。

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Garfield
Reply to  シン
7 years ago

返信いただきありがとうございます。確かに英語ばかりだと意味がないのはおっしゃる通りです。どれだけやっても母語もネイティブも普通は超えられないですし。

あと他のエントリーでも触れられていますが、何となく高偏差値大学に行くのも良くないですね。自分語りばかりで恐縮ですが、私も特にやりたいことがなく入学した者なので・・・。受験で燃え尽きたのか単位を取得せずに駒場で放校処分になって学生番号が掲載される学生が毎年何人もいました(理Ⅲも一人見かけました)。一方で最初からエンジニアをやりたくて東工大とかに行った同級生はバリバリの能力で自分ではかなわないというのが正直なところですし、社会人としてももっと生き生きしていると感じます。

元々の学力がそれなりに高いがゆえにそのまま東大に入ったもののくすぶってしまった人間はたくさん見てきたので、やはり高校生の時点で進路についてある程度以上は方向性を自分自身の意思で明確にできるような教育と、それに見合った試験制度が日本には必要だろうなあと思います。

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ニコ
7 years ago

英語だけできても意味がないんですよね。メーカーの知財部の国際特許で英語の翻訳担当の人も理工系の大学を卒業した人です。逆に文系で英語しかできない人だと仕事がないそうです。
設計や開発が苦手でも技術的な背景を理解する、まがいなりにも興味がある、勉強をしたことがあるというのは貴重ですよね。

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マチ弁
6 years ago

はじめまして。突然のコメント失礼します。
「シンガポール 留学」で検索してこの記事を読ませていただいた者です。

私は地方の弁護士(8年目。マチ弁の仕事に飽きたので、留学あるいは転職を検討しています)で、NUSのLLM(弁護士向けの大学院)への留学を考えています。
その理由は3つあります。
①アジアの法律が学べる
②英語の勉強になる
③今後のキャリアに活きる(留学歴、英語力、アジアの法律に関する知識があれば外の弁護士との差別化が図れる)
というものです。

ところで、シンさんのこの記事では、日本のくすぶった文系リーマンがNUSで修士をとるのはやめたほうがよい、アメリカのトップスクールに行くべきと書かれています。
弁護士業界においては、大手法律事務所の弁護士の多くはアメリカ(あるいはイギリス)の大学のLLMへ留学するのが一般的です。
ただ、それだと差別化が図れないので、あえてシンガポールを選ぼうと考えているのですが、シンさんは私の選択を悪手だと思われますか?
私としては、アジアの法律について専門知識のある弁護士はまだ少ないので、ここでアジアの法律を学ぶ意味は大きいのではないかと考えています。

お時間があれば、忌憚のないご意見をいただければ幸いです。

なお、②についてシンガポールの英語が特殊であることは知っていますが、留学に至るTOEFLの勉強や講義で少なくとも日本にいるよりは英語力をつけられるものと思っています。
また、本音を言えば、欧米の環境の良い場所で勉強するのも良いなとは思っているのですが…(シンガポールは行ったことがありますが、居住するという意味であまり良い印象はありません)。

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マチ弁
Reply to  シン
6 years ago

シンさん、丁寧なご回答ありがとうございました。
たしかに欧米とアジアにおける法律の性質の違いはあまり意識していませんでした。
遊び、浪費のつもりでやってみて、少しでもリターンがあればラッキー程度に考えておきますw
ご存知の通りただ地方で弁護士資格を持っていても将来性も何もない業界ですので、このままマチ弁を続けていてもそれこそ人生の浪費としか思えませんから…
貴重なご意見に感謝いたします。

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ベイビーUSA
5 years ago

現在中学生の男の子供にシンガポール留学を勧めようと思っていましたが、シンさんの記事を読むとどうもお金を無駄に捨てるかもしれないと思いだしました。矢張り欧米の英語圏の学校に留学させる方が将来的に有効だろうと思いなおしています。私自身が欧米に留学した経験では人種差別がひどくて嫌な思いをしたことが多かったのですが、そこは我慢してでも学力の蓄積に効率的な米英への留学を考えることにします。

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JK
4 years ago

イギリスに留学して、スイスで学会発表をして、アメリカ合衆国に移住するのが、一般的な知識人のルートだと思います。しかし、「どの国に留学するのか」ではなく、自分の興味がある研究テーマを指導してくれる指導教官が、在職している大学へ進学するのが、普通だと思います。日本は、少子化の関係で定員割れを起こしている大学も多いので、大学入試センター試験で、ある程度の点数が取れれば、大学全入時代になったので、ある程度まで自分の好きな研究テーマで、大学を選べると思います。どの大学に所属していても、学会で先端の研究発表をしていれば、研究の水準は、大して変わりません。私が大学院を卒業した直後に、大学が独立法人化しました。東大を含めて、理系学部で、金に変わりそうな研究をしているなら、大学、大学院在学中に、ビジネスを立ち上げた方が良いと思います。手っ取り早く、自分自身と世の中を知りたければ、自分が起業するのが、最短です。理系の指導体制は、良く知りませんが、応用研究と基礎研究を、その研究室に属している研究者自身が選べるのでしょうか。指導教官から、基礎研究を割り振られて、不本意ながら、いつまでも結果が出ない事例は存在しています。現在は、大学教授も5年契約が常態化しており、終身在職権(=テニュア)を取れる人物の方が少ないと思います。インターネットを含めて、情報が簡単に共有される現代において、教授の学説を、大学院生が習得して、教えを広めていくという、大学の在り方、そのものが、変化している可能性があります。大学で研究した内容が、そのまま就職に繋がるのが、最適だと思います。残念ながら、大学教授を含めて、教育を進路として選んでしまった場合は、「自己利益を追求する」という観点から言うと、最も不適切で、正反対の選択をしてしまったことになります。

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