じゃあ、W村上、吉本

文芸の話でも少ししたいと思います。日本の文芸が最後の輝きを見せたのはバブルの頃で、W村上、吉本ばなな、というスターを生み出しました。その彼らがどうなったのかを書きたいと思います。

村上春樹氏

大学在学中から学業そっちのけで趣味のジャズにはまり込み、ジャズ喫茶をはじめ、小説家としてのキャリアは遅く始まっており、三十路前に不意に小説を書こうと思い、新人賞を取り、あっという間にスターダムに駆け上りました。今では外国人でも知っている国際作家です。

元々、彼はアメリカ文学が好きで、アメリカに住んで、大学の非常勤講師をしていたこともあり、アメリカに大きく影響を受けた作家だと思います。日本人作家にありがちな欧州志向で、難解な書き方をするのでなく、読みやすく心に訴えかけるような書き方が持ち味です。

ちなみに彼はアメリカかぶれで、アメリカ人作家の翻訳本もあるくらいですが、英語のスピーキングはメチャクチャ下手です。大作家でなければ、このくらい下手だと、学生からクレームが来るだろうと思います。まあ、滞在ビザの為にちょっと教えていただけで、日本びいきの学生が来ていたのでトラブルにならなかったのでしょう。

少し読んだだけで、誰が書いたかのかわかるくらい独特で、真似できそうで真似できない作家だと思います。70歳近くになっても、一線級の人気作家ですし、毎年のようにノーベル賞が噂されています。もしかしたら、国民的ヒーロー作家は彼が最後なのかもしれません。現在、小説自体がほとんど売れてないので、ヒーローが出ようがありません。

私個人としてはそれほど好きではありませんが、無視できないくらい偉大な作家であることは間違いありません。実際、私も半分くらいの著作は読んでいますし、その実力は素晴らしいと思います。すでに古典的作家と言っても良いのかもしれません。(おじいさんですしね。)

村上龍氏

大学生の頃にデビュー、芥川賞受賞と恵まれたスタートをして、「限りなく透明に近いブルー」は石原慎太郎氏の「太陽の季節」みたいな扱いで、「これが理解できないなら、あんたら、もうヒットは出せないんじゃないの?w」というような煽り的スタンスで芥川賞選考委員を真っ二つにしました。

「限りなく透明に近いブルー」を読んだことない人に説明すると、どこを切っても同じ味がする、というメチャクチャな文章が延々と続いていくだけの実験小説で、私は苦痛に耐えながら、何とか読みきった覚えがあり、まったく内容が記憶に残らない不思議な作品です。

この人のスタイルは90年代に色んな人に真似され、村上龍風文体を持つ新人作家が筍のようにウヨウヨいましたが、今は誰一人残っていません。(誰かいるのでしょうか?)影響を受けたかは知りませんが、同じようにマスコミによって有名になった金原ひとみさんが似たスタイルなのかもしれません。(彼女も今ではほとんど売れていません。)

案の定、これが彼の最高作品となり、小説は徐々に書かなくなり、ドキュメンタリーなんかを書くようになり、それはそれで活動の場を広げたので、良いんじゃないかと思います。単に小説家としてはかつては並び称された春樹氏とは比べ物にならないくらい才能がないので、その方が良いのたと思います。

「カンブリア宮殿」の汚いおじさん、という印象を持っている人もいると思いますが、この人は小説がさほど好きと言うわけでもなく、チャラチャラしたことをやって、たくさんの女性をものにするのが好きみたいです。そういうことをエッセイに書いていますし、正直な人です。

吉本ばなな氏

実はこの人のお父さんは吉本隆明さん、と言って団塊世代にはヒーロー的な詩人、評論家です。デビュー当初はその娘として知られていましたが、今では彼女のほうが圧倒的に有名だと思います。ちなみに、この人のほかにも娘のほうが有名な作家は江国香織さんがいます。

この人も村上龍氏と同じように大学の卒業制作で注目され、卒業の年には本格デビューしていますので、ほとんど苦労知らずの作家であり、「キッチン」がメチャクチャ売れて、「TSUGUMI」も売れて、ガツンと人気作家になっていきます。

2000年代に入ると、どんどん寡作になるだけでなく、ほとんど注目もされなくなり、昔のファンが買ってくれるから文庫本にはなるけれど、世の中の注目を集める存在ではなくなりました。かろうじて、「海のふた」が新聞連載、映画化されましたが、ほとんど話題にもなりませんでした。

もう才能が枯れてしまったのか、と思います。正式に結婚はしていないですが、お子さんがいるようで、子育てに忙しく、文芸に集中できないのかもしれません。子育てが終わったら、再び力を注いで、最後にもう一花咲かせられるでしょうか?

まとめ

バブルの頃は並び称されましたが、華のあった龍さんはタレント化、女性人気を誇ったばななさんはお母さんになって、ほとんど書かなくなった、と言う形で、春樹さんの圧勝という形で作家としてのキャリアは終わりそうです。

もう、彼らほど注目を集める作家は出ないでしょう。平野啓一郎さん、綿谷りささん、金原ひとみさん、最近だと又吉直樹さんがマスコミによって、売ろう、売ろう、と必死に宣伝されていますが、もう、文芸やって、ヒーローになれる時代ではなく、若い人がほとんど興味のないことは廃れるだけです。

新しいやり方として、ブロガーからスターが出る可能性もなきにしもあらずですが、ブロガー出身で文芸?で一本立ちした「ちきりんさん」「藤沢数希さん」なんかは吉本ばななさんと同年代のバブル世代であり、若い世代でもありません。20代、せいぜい30代のブロガーでガツンと人気にならないと、ダメでしょうね。

一時期、携帯小説みたいなものも流行りましたし、無理ではないと思うのですが、既存のマスコミに利益がまったく落ちず、敵対関係にあるので、なかなかスターになりづらく、仮に私が電子出版で人気作家になっても、芥川賞なり、直木賞を取れる可能性はゼロです。主催の文芸春秋をはじめとした既存の出版社に一円も落ちていないので、候補になる可能性もありません。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、W村上、吉本” への 17 件のフィードバック

  1. 娯楽の主体が文字を読んで「感じる」から映像やVRをみて「体験」するに遷移している気がします。

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    1. 読書、ラジオ、映画、テレビと娯楽の王様が変わり、今はネットになろうとしています。でも、過去の娯楽がなくなってはいないし、やり方次第ではやれるような気もします。この点ではアングロサクソン流が参考になりますが、彼らは世界語で発信しているので、ローカル語でやる日本人には分が悪いですね。

      シン

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  2. テレビゲームやエンタメが発達したので、今さら将棋ではヒーローになれないかと思いきや、空前の将棋ブームがきていますね。

    映像メディアやネットが発達したから、文芸が売れないのではなく、売る側が文芸は高尚なものとして、消費者に寄り添っていないのも一因だと思います。その偉そうな態度が、若者に敬遠されてる気がします。

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    1. 確かにそれはあります。

      書き手が読み手を意識するより、出版社様、編集者様を意識して書いて出版させてやっているという上から目線スタンスではダメだと思います。

      その点で私のようにブログで発信しながら、読者さんの生の声を聞きながら、書きたいことを形にしていくのなら、もっと出来ることがあるのかもしれません。

      一読者としては気取ったバブル世代のブロガーではなく、氷河期、ゆとり世代の淡々と戦う人の文章が読みたいです。炎上芸、アフィ芸人はお腹いっぱいです。

      シン

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  3. 私は村上春樹の作品が好きではなく、その理由は広げた風呂敷を畳まないことです。
    海辺のカフカを例に出すと、序盤は謎がどんどん出てきて、いったいどんな風に終わるんだろうと期待していたら最後はスピリチュアル的な感じでよく意味が分からず終わりました。
    好きな人に言わせれば、彼の作品はその文体と世界観が良いと言ってたので、物語を楽しむよりも雰囲気を楽しむ人向けの作家なんでしょうね。
    私はストーリーを楽しむので、きちんと話を作り上げる東野圭吾が好きです。

    ちなみに荒木飛呂彦曰く、マンガはストーリー、世界観、そしてキャラクターのどれかに魅力があれば成り立つそうですが、小説やドラマなどもきっとそうなんでしょうね。

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    1. 確かに村上春樹さんはストーリーの作りこみはイマイチで、雰囲気、独特の文体を売りにする作家です。そのやり方で一流になっているので、それはそれでいいのでしょうが、私もそんなに好きではないです。

      >マンガはストーリー、世界観、そしてキャラクターのどれかに魅力があれば成り立つ

      これもまったくです。何かが尖がっていれば、何か欠けていても、それでやっていけます。

      シン

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  4. 別に有名にならなくても、このブログの光る文書を
    楽しんでいる人はいますよ

    でも、本とかででたらうれしいですね
    出版しても味が変わらないとうれしいですね・・・

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    1. 有名になりたい、と言うか、もっと読者さんが増えて、もっと色んな意見をもらえて、私がもっと楽しめないと飽きてくるというのが大きいです。飽きたら、継続できませんからね。

      皆さんと長く楽しみたいです。

      シン

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  5. 村上龍さんの13歳のハローワークという本を読んだことがありますが、イマイチでした。
    村上龍さんが、実際にそれらの職業を経験したわけでなく、ネットで調べればわかるような薄っぺらな情報しかなかったような気がします。

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  6. 個人的には村上龍は昔からあまり好きではなく、まだ村上春樹さんのほうが作品としては純粋に楽しめました。
    村上龍って、作家としてはどうかな?どうして当時評価が高かったのか、不思議でしょうがなかったんですよね。
    吉本ばななさんも確かに一時期一世風靡しましたね。代表作しか読んでなく、しかも読んだ作品の内容も何も覚えていません(笑) いまひとつ、自分的にはインパクトがなかったのかなと。。。

    日本の作家で好きなのは、最近では 東野圭吾、湊かなえ、宮部みゆき あたりですね。
    彼等の作品は 多数ドラマ化、映画化されていますが、実際個々の作家の収益とはどれくらいなのか想像もつきませんね。 私自身、よく本は好きですし、ほぼ毎日何かしら読んでいますが、日本の小説に関しては定価で購読した本はごく一部のみで、あとはBOOK OFFなどで格安で購入しています。
    あと変り種で好きだったのは 田口ランディ。
    これはなんとなくなんですが、田口ランディの初期の作品 と 椎名りんご ちゃんの世界ってなんとなく共通するものを感じます。ちょっと昔の作品ですが「スカートの中の秘密の生活」や「コンセント」なんかは個人的に面白いなと思いました。

    ちなみに私は本までデジタルで読みたくない人です 笑
    仕事がめちゃくちゃデジタルなので、その反動でしょうか?
    本をめくるパラパラ感が好きというか、レトロな気分になれるというか。
    そのほうがホッとして、純粋に本の世界に没頭できます。

    ここ10年くらいは、たまに日本人作家の本を読みますが、大半は英語圏の作家ばかりですね。

    昔と違い、作家にしても、ミュージシャン等にしても、世に広める手段は敷居が低くなったと思いますが、売れるとなるとやはり昔と同じく一握りの人のみ。しかも売れたとしても、安く もしくは 無料でエンドユーザーには閲覧できてしまう分、高収入を得ることは難しい領域になりましたね。インターネットが世界を変えたんだなと、どの分野を見ても思います。

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    1. 村上龍さんがデビュー当時は天才扱いされていたのは今から考えると本当に意味不明で、まともに面白い作品なんて一作もありません。自伝はまあまあ面白かったと思います。やはり、俺が理解できないなんて遅れてるね?wという煽りに乗せられたんでしょう。私も読んでいるので、乗せられているんですよね。

      直木賞カテゴリーの作家の方がきちんと作り込んで、感性に任せて投げっぱなしをせず、キチンと伏線を拾い上げて行くように思います。

      電子書籍は結構いいですよ。何よりもいいのが場所をとりません。エコですしね。自分の電子書籍を買えとは言いませんけどねw

      へー、田口ランディさんの作品を読んだことないので、機会があれば読んでみますよ。

      芥川賞作家が文芸で食えずにバイトして何とか暮らして行く時代なので、ストーリーを二次利用出来るほど作り込まないとまともな収入にならないんです。

      シン

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    2. <日本の作家で好きなのは、最近では 東野圭吾、湊かなえ、宮部みゆき あたりですね。
      自分は、本は基本的にミステリーしか読まないですが、湊かなえは、イヤミスで有名ですね。
      自分は、湊かなえは告白しか読んだことがないですが、爽やかな読後感ではなく胸糞悪かったです。
      ちなみに、「告白」は中学の女教師が、自分の教え子に幼い娘を殺されてその復讐をするという話です。

      自分が最近読んだ小説で、面白かったのは、我孫子武丸の「殺戮にいたる病」です。
      ある男が、ある日急に真実の愛に目覚めて女性を次々に殺害していき、最後には…という話です。
      最後にどんでん返しがあり、そのどんでん返しが高く評価されていますが、自分はそれ以外でも、異常者の心理を描いたサイコホラー小説としてもいいと思いました。
      ただ、残虐な描写があるので苦手な人は苦手だと思います。自分は、視覚的な残虐なものは苦手ですが、言語的な残虐なものは大丈夫なので、問題なく読めましたが。

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      1. 重松清の疾走が面白かったです。小説を読むことが年々億劫になっていましたが、これは最後まで読みきりました。

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  7. 疫病神シリーズの黒川博行さんが好きです。少し前に直木賞も取られていました。
    ヤ◯ザ関係の作品が有名ですが、警察の利権やパチ屋、北朝鮮などタブーっぽいものや、オレオレ詐欺や後妻業など犯罪者の話も多いです。ほとんどアングラ系です。

    個人的な趣味で恐縮ですが、ウシジマくんが好きなシンさんなら黒川作品も好きかなと思いコメントしてみましたw

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  8. 私は30年ほど前両氏の作品を初めて読みました。「コインロッカー・ベイビーズ」、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。前者が龍氏、後者が春樹氏の初期の代表作です。前者はとにかく読みにくい。感情移入が全くできない登場人物達、退廃的というかアウトローな世界観で読むのが苦痛でした。一方後者はサクサク読み進めることができ、非常に面白かったです。何が面白いの?と聞かれても答に窮するのですが、春樹作品には珍しく、ハルキニスト以外にも評判は良かったと思います。余談ですが、春樹氏は龍氏のコインロッカーに影響を受け、作家一本という意志を強固にしたようです。

    その後も春樹氏の長編は何となく読んでしまうわけですが、どれもこれもサクサク読めるのですが、何が書きたかったのかいつも理解に苦しみます。結局、騎士団長も読んじゃいましたが内容はもう忘れました。平凡だけど何かオシャンティな生活を送っている主人公が奥さんと別れ、意味不明に登場してくるアラフォーの女性とセックスをして、わけの分からない世界に入っていき、何となく終わるといういつものパターンですね。こんなこと書くとハルキニストに殴られそうですけど。
    私は基本的にミステリー、警察物、ハードボイルド位しか読みませんので、やはり伏線を緻密に回収したり、逆に大藪春彦氏の伊達邦彦シリーズのような単純明快で破茶目茶な小説の方がすきですね。

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