アングロサクソンに憧れ、英語に熱狂し、バイリンガル教育にはまり込む親がいますが、本当に無駄だと思います。極めて困難、リスクが高いのにリターンが少ないからです。
ここで「バイリンガル教育」と言うのは日本、日本語をベースとした子供が趣味の英会話レベルでなく、インターナショナルスクール進学、早期留学など、教育システムそのものを英語にすることを指しています。
10歳以下
言語の臨界期を越える前ならどんな子供でもバイリンガル環境におけば、多かれ少なかれ二か国語を話すようになります。必要な語彙自体が少ないですし、言語を使って何かを本格的に学ぶ時期でもないので、遊び程度に英語教育するのも悪くないでしょう。
子供の耳はいいので、聞こえたままの英語のきれいな発音に親は興奮しがちですが、こんなのは英語力そのものとは関係ありません。そして、耳で覚えたことはその環境になくなれば忘れてしまいます。つまり、ずっと継続するしかありません。
例えば、親の駐在で英語圏に行って数年後にはきれいな英語を話すでしょうが、それは子供レベルの英語でしかありませんから、帰国してからも同じ環境が整えられるなら話は別ですが、インターナショナルスクールにでも入れるしかないですが、それにしてもネイティブ環境とはいえません。
それでも、10歳以下ならカリキュラムも緩いのでバイリンガル教育を継続することもそんなに難しくありません。日本人家庭が英語圏に住んで、現地校に通わせ日本語補習校に行かせていれば、英語、日本語はネイティブの子供レベルとさほど変わらないでしょうね。
10歳以上
問題は10歳以上で、ここを超えてくると学校のカリキュラムも難しくなりますし、そこにきちんと付いて行くだけで大変です。習い事、部活をしっかりやり出すのもこの頃ですし、時間が絶対的に足りなくなり、子供にとってバイリンガル教育を維持するモチベーションを保つのが困難になります。
中学に上がると、科目平均点自体が下がってきて、理解しているラインの8割を割り込む子供が続出します。5教科で8割以上取れてなければ、大学進学を前提した高校への進学は厳しくなりますので、このライン維持は中等教育で死活問題です。
そこを割り込まないために塾に行ってなんとか維持する子供がいくらでもいるのですから、それでもバイリンガル教育を維持できるのは授業を聞いているだけで9割確保できる子供だけでしょう。普通の子供は学校のカリキュラムと部活だけでいっぱいいっぱいになります。
それでも、普通の子供が部活を捨てたり、睡眠時間を削って時間を作ってバイリンガル教育を維持すると、意識し出すのは私立文系進学で、ひたすら時間を使ってきた英語で大学受験を押し切ろうと考えるのは自然です。
自称進学校あたりに進んで、すぐに理系科目を捨てて、私立文系コースを選んで、得意の英語で模試の点数が取れることに悦になって、「偏差値の高い順に」私立文系を受けて、そのうちの一番数字の良い学校、学部に行くようになります。
大学
日本にしろ、英語圏にしろ文系に進んでしまえば、専門は身につかないし、得意の英語力を生かす機会は限られていますし、その機会は英語の普及が進むにつれてどんどん減っていきますから、苦労して覚えて英語はプライベートでは役立っても、飯の種にはなりません。
よほど語学の才能があり、時間かけてきたのでないなら、そうして手にした英語力ですらネイティブとは雲泥の差がありますし、英語ネイティブとして仕事をするのも基本的には無理だといっていいです。だったら、英語を母語として日本語を学んだほうがいいでしょう。(それも難しいですけど。)
AO、指定校推薦などで基礎学力を無視して、なんとか理系に進んでも、中等教育に穴があると、大学でかなり苦労します。かなりの努力家でないと、大学の勉強が嫌になって中退するか、何とか卒業はするけど、文系就職することになるでしょうから、これも飯の種になりません。
どのステージの教育も大事ですけど、「飯の種」と言う意味で大学ほど大事な教育はないので、このステージでしっかりと専門を身に着けて、それを軸にして磨いていき、飯の種として通用するレベルにしていくなら、人生はハードモードになりますね。
一昔前なら英語が出来るだけで仕事があるし、色んなチャンスがあったんでしょうが、今更、これからそんなことはまずありません。どんなことも需給で価値が決まるので、供給過剰になった市場は値崩れを続けます。そんなことをコストをかけ、リスクを取ってやる意味は何でしょうか?
まとめ
私はバイリンガル教育を否定しているわけではなく、基礎能力が高く、中等教育を授業を聞いているだけで9割得点できる子供ならいいと思います。そういう余裕のある子供が英語でも同じレベルのカリキュラムをやって9割得点できるなら、英語圏のトップ高校、大学に奨学金をもらっていけるかもしれません。やはり、英語圏、特にアメリカで羽ばたけるなら、大きな力になるでしょう。
でも、ほとんどの子供は授業を聞いているだけで9割以上取れないし、塾に行ってなんとか8-9割取るのがやっとだったり、塾に行っても取れない子供もざらにいます。そういう子供が英語のそのものでなく、「英語で」勉強するのは無理です。単に余計なことになります。
楽しみとして英語を続けるのは賛成だし、体育会部活が肌に合わない子供が英語クラブに入るのはいいでしょう。ギャップイヤーで英語圏で遊んできてもいいし、趣味で英語力アップを継続するのは素晴らしいことです。でも、需給を考えると他を犠牲にしてまで集中すべきことではないってことです。専門を身に着けるための準備期間を大切にすべきです。
バイリンガル教育って、金と暇のあるマダムの趣味みたいになっていますよね。
そういった教育をさせている私カッコいいという感じで、プライドが高く関わると面倒くさそうなオバさんが多いです。
また、中学入試・高校入試などと異なり、既存の序列の枠外なので、子供の出来が悪くてもプライドを保っていられるのもバイリンガル教育(特にインターナショナルスクール)のメリットだと思います。これは女性が白人と結婚する動機にも似ています。
でも、それもほとんどが小さい頃(10歳程度まで)で終わり、英語教育だけでは駄目だ、日本の教育を受けさせないと、と目覚めて勉強し、上智や青山学院といった英語重視の大学に入学するのが、こういった人達の典型的なパターンになります。
それにしても、インターナショナルスクール出身で成功した人ってほとんど見ないですね。まあ、宇多田ヒカルや関根麻里といった二世タレントくらいでしょうか。女性はまだ居るにしても、男性はほとんど居ないはずです。
確かに女性のマウンティング回避に英語、アングロサクソンブランドが利用される、と言うのはありますね。子供が英語集中、私立文系という流れを望んでいるのでしょう。
>それにしても、インターナショナルスクール出身で成功した人ってほとんど見ないですね。
インターナショナルスクールの絶対数が少ないのと、学費が高いので誰でも通える学校ではないですからね。帰国子女なら中堅、中小企業まで海外拠点を持つようなったので絶対数が増えて成功者も多くなりました。全体的な傾向としてアングロサクソン教育を受けた人は良くも悪くも根拠のない自信を持っているので芸能人は向いていると思います。台湾、韓国、香港あたりでも帰国子女の芸能人は多いです。
シン
ミッション系の理系の大学に通っていた人ですが、優秀な人でも国語が苦手な人が多いです。
受験の話になりますが
仕事や生活の日本語のレベルは問題ないですがセンター試験で4割程度が精一杯だから私立文系や国公立は無理っぽいから推薦や私立理系しか無理だとか言ってました。英語は満点近くできます。
知り合いは、古典や漢文の趣なんかわからないとかぶん投げてました。
理工学部の知り合いは、キチンと卒業して社会で活躍できているのでいいんですけど、やはり高校入試レベルで日本語力が頭打ちになる傾向が帰国子女はあるみたいです。
国語って差がつかない科目だと思っていたのですが、日本育ちと帰国子女だと雲泥の差なのですね。
自分にとって国語はいくらやっても伸びない、かと言って特にできないわけでもない不思議な科目でした。
日本語力(国語力)を伸ばすべきか英語力を伸ばすべきか、どちらにするかは悩ましい問題ですね。
でらさん
しかも、センター試験レベルで4割くらいになってしまう人で公立トップ高くらいの学力があった感じです。
大学の付属の高校が1/3が東大、京大、国公立医学部に3割近く合格するレベルなのでわかるのですが、帰国子女で国語の能力も問題ないレベルになると国公立の医学部を現役で合格できる人になります。
バイリンガル教育は子供に大きな負担になるので、トップレベルの学力を持った子供以外には母語育成の阻害になる、ということだろうと思います。この辺はシンガポールの環境を見ると納得がいきます。
シン
入試の国語は解き方を知ってさえいれば簡単だというのが実感です。特に現代文は原則というか唯一のルールとして問題文に書いてあれば正解、書いていないことは一切不正解で、それに従ってさえいればセンター試験程度なら比較的楽に満点が取れます。実際自分も方法を知るまではひどい点でしたが、知ってからは本当に楽で実際センター本番の現代文は満点でした。
上記は日本語の母語話者ならコツと練習だけの話ですが、日本語レベルのあやしいバイリンガルという名のセミリンガルの場合は、そもそもコツと練習だけという前提にさえ立つことができていないのではないかという疑いがあります。一方で英語が満点なのは入試問題が簡単すぎるからだろうなと推測しています。
国語と英語を伸ばすことに関しては、母語の水準を外国語が超えることは通常ありえないので、母語を鍛えることがまず重要だと考えています。換言すれば、母語の水準が低ければそれだけ外国語の伸び代も小さくなってしまいます。しかしながら発音については、ある程度の年齢以上になってから学び始めるとどうしても母語に引きずられた訛りが入ってきてしまうので、小さい頃にやった方が良いのではないかと感じています(子育てで実験中)。
>入試の国語は解き方を知ってさえいれば簡単だというのが実感です。
寄稿してもらった教育学部の記事にありましたが、その解き方を学校で教えてない、というのはありますね。だから、伸ばし方がわからない、という意見が出るのだろうと思います。フランスのバカロレアみたいに本質的な問題に対して自由に論じさせるような試験は別ですが、選択式、論述なら、なぜ正解なのか?を問題文に見つけられないと出題者の責任問題になるので、それ見つける練習をするなら点数は上がります。そんなことをしても根本的な国語力は上がりませんが、一つのアプローチとしてはありだと思います。
>母語に引きずられた訛り
これを気にする日本人は多いですが、ナデラ、ピチャイ両氏を見ても、訛りは優先順位として高いのか?と思います。ネイティブ英語話者のゲイツ、ペイジ両氏にとって訛りが問題なら、インド人の両氏はマネージャーにすらなれなかったでしよう。
シン
私の大学の英文学の先生でバイリンガルの人の語学に関わる脳の働きや感覚を研究している人がいましたが、私の意見ではシンガポール人のように両方とも中途半端で言いたいことも言えない残念な人になるか、能力の高い人でもどちらか一つの言語が思考や感性の中心になり、あとは道具として扱うって感じではないでしょうか?
それ以上でもそれ以下でもないです。
このブログではその議論はそこに行き着いているし、議論の余地ある異論も出てきませんが、バイリンガル、英語ネイティブという響きには強烈な魅力があり、あれこれ理由をつけてインターナショナルスクールに通わせたがる親は多いですね。
確か、皇族と結婚された方がインターナショナルスクールに通っていたそうですが、そういう上流の匂いがする学校だと言ってもいいと思います。この人は文系、銀行を即辞め、ロースクールでもない法学大学院に行き、予備試験から司法試験も取れない。最終的に何がしたいかわからないが、米国弁護士資格を取るためにパラリーガルしている遊び人だったと思いますが、上流階級の仲間入りを果たしたので、結果オーライですね。
シンガポール、リー王朝の一人も学習障害の為、特例でアメリカンスクールに入りアメリカの大学に行きました。北の大将の甥っ子もそうだし、欧州王族にも例はありますね。
出来の悪さをアングロサクソンブランドで隠してしまいたい富裕層にはうってつけの学校みたいです。
シン