日本では非正規雇用って惨めな立場の象徴ですけど、これは契約の問題であり、本来は惨めでもなんでもないんですよね。日本で非正規雇用が悲壮感を持った響きになるのは同一労働同一賃金でないからなんですよね。
正社員
日本の正社員は法律でしっかり守られており、無断欠勤、無断遅刻を繰り返すとか、横領などの犯罪でもしなければ解雇するのは難しいです。会社自体が傾いて事業ごと整理するわけでもないなら、能力不足を根拠に指名解雇することはほぼ不可能です。これは公務員に限ったことではありません。
だから、日本企業のリストラは極めて陰湿で、自己都合退職に持っていく為にありとあらゆる嫌がらせをするわけです。追い出し部屋とか陰湿にも程がありますね。これも全部記録をとって労働基準監督署に持ち込めば、カチコミしてくれるので、精神力さえ強ければ、解雇されることはほとんどありません。
正社員は年功序列時代に作られた標準コストテーブルに乗っかった給与体系になる為、長年勤務する事務のおっさん、おばちゃんがビックリするような待遇で働いている一方で、そのダメージを引き受けるのが非正規雇用ということになります。
例えば、日本航空の正社員エアホステスは同業他社と比べてびっくりするような好待遇です。日本航空が特殊なサービスで高収益を上げているならともかく、単に税金ぶち込み、複雑に入り組んだ労働組合が喚いて、そうなっているわけです。その一方で、契約エアホステスはワーキングプアレベルの待遇なんです。そして、蒲田で待遇低下による安全低下懸念を表明しているそうですw
派遣
小泉元首相の肝煎りで始まった単純派遣契約の合法化ですが、これは片手落ちになってしまったのが問題であり、労働契約の流動化は特に問題のないことだったと思います。単純派遣契約の合法化は正社員特権を消滅させることとセットである必要があったのですが、それが出来なかったのです。
結局、派遣社員は雇用の調整弁として使い捨てられるようになりました。正社員への移行義務の発生する2年の期限が来る前に解雇されたり、形だけ異動させられて、ずっと不安定な派遣社員を続けることになり、同じ業務をする正社員と別のテーブル、条件で働く奴隷になってしまったわけです。
改革以降、偽装請負、二重派遣と言った法律ギリギリのグレーゾーンで仕事をさせる奴隷商人が当たり前のように跋扈するようになり、小泉元首相の側近だった竹中平蔵さんは派遣会社とベタベタに結びついて奴隷商人の親玉になってしまいましたね。
企業と人材を結びつける会社があるのは良いけど、やはりルールは厳格であるべきで、最初から正規雇用する気のない派遣社員だとか、明らかに元請け正社員の指揮下にある業務請負なんておかしいですよ。こういうことを政府は摘発する気もないし、やめさせる気がないんです。
契約
会社がきちんと契約を結ぶ能力があるなら、派遣社員は必要なく、契約社員として直接雇用すればいいです。そうすれば、派遣会社を通す必要もなく、2年ルールも発生しません。でも、日本企業に管理のプロはいないので自分の手を汚したくないから、奴隷商人にやらせるんですよ。
アメリカ、シンガポールに正社員、契約社員の壁はほとんどありません。同一労働同一賃金が原則だし、どちらにしても流動的だからです。契約社員で入社して使えると思えば、正社員に切り替えますし、正社員おして入社しても使えないと思えば解雇されます。
正社員でも個別に契約を持っていることも珍しくありませんし、更新時にオプションをつけたりすることもあります。会社命令で海外転勤になれば、パッケージの交渉をするし、本人希望で海外転勤するなら、グレードに物価係数が掛けられるだけでお終いです。それ以降は現地の法律に従って働いて下さい、というだけです。
日本人は契約意識が薄いし、お互いにメリットのある関係を築くことが苦手であり、権力を盾にした一方的な命令以外に業務遂行することができない人達です。だから、何を目的にして、どういう人を採用して、何を基準にして評価するか、を決められないんですよね。
まとめ
非正規雇用問題って、正社員利権、派遣会社利権、日本企業体質が絡み合った身分制度みたいなもので、一度非正規に落ちると、そう簡単には這い上がれない社会システムになりつつあります。そうなると、正社員は自分の立場に甘えて、文句だけ付ける評論家になっていき、派遣社員は一切帰属意識を持たず、やらされる仕事をこなすだけになります。
こんな環境で良い物が生まれるわけないし、元気がなくなるのも当たり前です。日本社会はこの問題をクリアしないと、ずっと停滞するんだろうと思います。
いつもながら、シンさんの分析に基づいた解説、本当にわかりやすいです。
ごく普通に考えて、同一労働同一賃金ですよね。
政治家も改める気もさらさらないし、日本の停滞は避けられないですね。
いつも思うんですが、日本の政治家って特に野党の政治家は自分の票にならないことはまずしないですね。
従来の正社員と、今から就職していく派遣社員のどちらが票になるかということしか考えてないんでしょうね。
このままで日本がいい方向に行くわけないですね。
みんなが痛みを伴う変化に耐えるべきところを特定の弱い人だけに変化を要求したので、今の構造になってしまいましたね。民主主義ではなかなか本当の平等には出来ませんね。
シン
> 単純派遣契約の合法化は正社員特権を消滅させることとセットである必要
日本の大企業で早期退職割増退職金や、金銭解雇がもっと大々的にトレンドになれば良いですね。
ラインで部長・課長になれなかった人(文系・理系問わず、担当〇長というようなくすぶった人)を辞めさせられるようにできれば間接部門が肥大化して競争力が無くなった組織もスリム化し、効率化すると思います。
(そうなった場合の失業率は?社会保障は?となった場合のところが政治としては難しいところですが、何とかして欲しいものです)
そうなんです。だから、私は日本人はキャリアが上手くいかなかったケースを想定してないし、会社を離れた場合の飯の食い方を模索してない平和ボケした人たちだと思います。
解雇が当たり前の国が報酬にこだわりまくるのは明日もしれないからだし、フリーランスでやれるだけの技術、経験を身につけようとしたり、ファッキューマネーを手にしようと真剣になります。そうでなくとも、何かしらのニッチポジションを会社内で見つけてしがみつきます。
必要のない人を切ると失業率が高くなるのは当たり前ですし、税金上げて、失業保険を充実させたり、中高年が軽いアルバイトをすることを推奨していくのがいいのでしょう。このままでは共倒れになります。欧州型社会への移行が必要な時期です。
シン
特定派遣の技術者を見てきましたが、契約期間3~5年雇ってもらえる人ってのは正社員より技術のある人しかいないですね。
納得いかないのは、些細な失敗や覚えが悪く、要領が悪い人はすぐに追い出されてしまいますし、プロパー上司と議論や揉めると契約してもらえないことがあります。
なんとかしないといけないですね。
非正規側には利権が無いですからね。
そういうルールなんですから、どんな形にしろ、なるべく利権の近くに居ないと。
当初、豊かな働きかた、とか煽った連中は反省して欲しいものです。
「(チッ、うっせーよ) 反省してま〜す」とか。
また、あまり日本の非正規雇用のやり方をやりすぎると労働者の質が低下するおそれがあります。
友達の先生から聞いた話ですが、少子化を見越して正採用を減らして非常勤講師の先生ばかりにしたらgoの過去形をgoedとかいうような学力不足な先生がきたり、非正規雇用のリスクを避けて特に理系の人が先生になりたがらないと言ってましたね。
非正規と正規の本質的な違いって何だろうと考えます。
正規でも安定しているわけではなく、クビが無いかわりに上記のような嫌がらせがありますし、人間関係で辞めざるをえない状況に陥ることがあります。そう考えると、正規といえど「安定」はしてないなと思います。
世間からの評価はまったく異なります。信用度が段違いなので。次の仕事を探すときに非正規では話になりません。
給料は、業界や職種にもよりますが、非正規から正規になったら段違いに上がったという話も聞くので、やはり正規に越したことはないのかなと思います。
私も雇用はもっと流動化するべきだと考えているので、小泉首相の正社員特権の消滅に失敗したことについて気になります。韓国ほどではありませんが、日本も一度レールを外れると戻りにくい世の中です。
日本企業の非正規雇用に重要な仕事はない、と言えるし、実際はともかく世間がそう見るので、一度、非正規雇用に落ちると相手にされなくなる危険があります。そういう被差別階級、スケープゴートみたいになっている感があります。
シン