一昔前は通訳、翻訳ってある種の専門技術をもつ職人的存在でしたが、今では完全にコモディティー化しており、それだけで食っていくのはかなり困難になりました。何かしらのベースがあって、通訳、翻訳でないと、自立はできないでしょう。
一昔前
ニクソンショックの前は円はドルに対して360円に固定されており、海外に行くって言うのは出張に行くだけでもエリートだったんです。留学ともなれば、官費留学はバリバリのエリート専用、私費留学は富裕層の特権的行為だったのです。当然、帰国子女なんていうのも珍しくて、生の英語に触れることが難しく、触れたことがある人は特別だったのです。
単に英語ネイティブと生で話すだけでも都会に住んでいないと困難でしたし、練習に使う音源もカセットとか使っていたくらいですし、米軍向けラジオを聴きながら、訓練するくらいの血のにじむような努力の末に英語を習得していたのです。だからこそ、英語が話せるって言うのは技術だったんです。
今では英語を学ぶのも本当に手軽になり、Youtubeなどでそれなりにいい教材がタダで転がっていますし、Skypeでコーヒー一杯飲むくらいの感覚でフィリピン人と英会話レッスンできるようになりました。やる気さえあれば、誰でも出来るんですね。そのやる気がない人が淘汰されていくだけです。
帰国子女だ、英語圏留学経験者だ、なんて腐るほどいるし、彼らもピンきりに過ぎないって言うことがばれてしまって、特権的立場をすでに失いつつあります。帰国子女入試も徐々にハードルが高くなり、企業も単なる英語自慢なんて欲しくなくなってきたのです。古い体質の会社くらいしか、帰国子女に加点しなくなりつつあります。
当事者
さて、通訳、翻訳はあくまで第三者を介しており、正確に伝えることが非常に難しいです。どこまで行っても、当事者同士でやり取りしたほうが圧倒的に伝わるのです。例えば、同じ専門を持つ人間なら、片言の英語でも言いたいことがわかるだろうし、普段からブロークンでいいので、コレポンのやり取りをしていれば、仕事に関連することならわかるものです。
したがって、当事者でない通訳、翻訳って限られた場面以外で要らなくなっているんです。簡単なやり取りなら、通訳なんか使わずに英語で当事者がやりとりしますし、翻訳するのはよほど重要なものだけで、そうでなければ、英語のままでやり取りを残しておけばいいからです。当事者が辞めても、後任者も英語がわかるので、それを英語で読めばいいだけです。
私はまったく知識のない分野の話は日本語でされても、さっぱりわかりませんので、通訳して欲しい、と言われても、「それは無理です!」っと言うしかないです。英語力以前にまったく知らないことは通訳しようがないのです。通訳が特定の分野に特化しているならともかく、何でも知っている人なんて存在しませんので、専門的であれば、あるほど、上手く伝わない、と言うことになります。
要するに簡単なことは当事者同士でやり取りをするし、難しいことは通訳がその専門を理解していないと通訳しきれないので、的を絞らないと仕事が取れず、的を絞りすぎると、それだけで食っていけない、という「帯に短し襷に長し」というなんとも言えない状態になりがちです。
特殊分野
会議通訳、国際会談通訳、などの特殊分野の需要はなくならないのでしょうが、あくまでニッチであり、需要は限られているのに、やりたい人間が多すぎて供給過多だと言っていいでしょう。英語を含めて、語学が好きな人は沢山いますが、彼らを必要とする舞台がほとんどないのです。
「じゃあ、マイナー言語の通訳はどうだ!」っという話ですが、需要がないほとんどない上、特殊なバックグラウンドでもない限り使えるレベルになりません。例えば、アラビア語通訳になりたいとしても、アラブ人の多くが英語を扱えますし、英語と違って、アラビア語の教材がほとんどないので、片親がアラビア語の母語話者で幼い頃から指導を受けている人でもない限り、普通の人がまともに通訳できるレベルにはなりません。
警官の友達にポルトガル語通訳なら、結構仕事があるって聞いたことがあります。理由は日本には出稼ぎブラジル人がいて、貧窮して、犯罪に手を染めて、警察の厄介になるが、まともに日本語も話せないし、当然英語も話せません。母語のポルトガル語で話してあげないと、調書も取れないからだそうです。ただし、正採用は少ないし、リスクも高いので、お勧めはしないって言っていましたね。
何と言っても、犯罪者なので、言っている事が二転三転するし、感情的になっているので、何を言っているのかも良くわからない状況で、責任持って通訳やるのは困難でしょう。「犯罪者なんぞ、適当な通訳で、豚箱にぶち込めばいいんだよ! 冤罪?、疑わしきは罰しろだ!」っという鬼畜精神を持った人にはいいかもしれません。
まとめ
映画翻訳の大御所として知られる某先生、英国魔法使いの話を翻訳する某先生の英語力はかなり怪しいと言われています。長期英語圏で過ごしたこともなく、英語圏の学位を持ってもいないだけでなく、意訳を完璧に通り越した誤訳を頻繁に目にするからです。戦後の混乱期に見よう見真似で始めた仕事で大御所にまで上り詰めただけで、きちんとした基礎がないのでしょう。この分野に限らず、こういう人はおじいさん、おばあさんでは珍しくありません。
英語の勉強はすべきですが、入れ込んでも、それ自体を職業とすることは困難なので、あくまで自分の専門を生かすためのツールだということをしっかり意識して、やるべきだと思います。どうしてもと言うなら、通訳業務の公務員になることをお勧めします。仕事が減ってもクビになりません。フリーランスだと完全に干上がります。私が知る限りで、フリーランスの通訳、翻訳はワーキングプア覚悟か、副業としてやるものです。
一介の通訳から世界的サッカー監督になったモウニーニョさんっていう人がいますが、彼の強みは英語ではなく、元々は選手で、サッカー業界のことを理解しているっていう専門性があった上で、英語が出来たので、通訳として裏方に入り込み、徐々に政治力を発揮、結果を出すことで、のし上がることに成功しました。
彼は通訳上がりなので、インタビューも英語で受けますが、お世辞にも上手いとは言えず、よくいるラテン系の英語話者くらいで、大したレベルではないです。私が知る限りでも、シンガポールであったラテン系英語話者の平均レベルって所だと思います。あのくらいの英語力のポルトガル語母語話者でいいなら、腐るほどいるでしょうが、サッカー業界経験者っていう条件を入れると、母数ががくっと減るのです。
つまり、通訳、翻訳業界で生きて生きたいなら、モウニーニョさんのように何かしらの専門性、アクセントを加えないと、単純通訳では競争が激しすぎるため、とても生活していくこともできないし、まして、そこからのし上がっていくことなんて無理ゲーすぎますよ。英語を売りにして何かをしよう、ということ自体が時代遅れだと思います。
通訳について、英語以外の語学は趣味、そして英語バイリンガルになれたとしても、
それだけで食っていくことはできない、という主張はごもっともです。
ただここで一つ提議させていただきますが、韓国語・中国語の通訳はどうでしょう?
確かに、シンさんが議論の対象に挙げておられる技術者やトップエリートは皆英語を使うので、
理系で手に職を付けているのであれば、韓国語・中国語など学ぶ価値はありません。
しかし、知能が足りず適性がなく、理系に進めなかった場合の選択肢として、
韓国語・中国語を習得するというのは意味がないでしょうか?
この場合の就職先は、韓国・中国人向けの観光ガイド、韓国・中国人客の多いホテル・飲食店・
土産物屋の店員、韓国・中国人の移民の多い自治体の公務員が想定されます。
無論、これらの仕事は大して割りが良くありませんし、マナーやモラルの欠落した韓国・中国の
一般大衆に関わるなど嫌だという人も多いでしょう。
ただそれでも、何の専門分野も手に職もないクズ文系にとっては、
食い扶持を確保するための手段として価値があると思いますがどうでしょうか?
また、韓国・中国語は日本語と共通項の多い言語なので、日本語話者にとっては
本来的には英語より格段に習得しやすい、という利点があります。
まだ、中国、韓国との賃金格差があるので、日本語を使う中国人、韓国人を雇ったほうが、中国語、韓国語を使う日本人を雇うより安く上がりますし、お金を払う客とネイティヴ言語、文化でやり取りできるほうがメリットが大きいですから、意味ないと思います。
シン
ブラジル・ペルー・アルゼンチンなど日系人向けのポルトガル・スペイン語の需要は
警察の他に病院、家の売買など契約時の通訳などもあるようですが、日本語が堪能に
なった日系人がやれば良く、警察官・医者・司法書士の使う言葉は定型化しているので、
日系人の心情に寄り添う必要ありポルトガル・スペイン語のネイティブが望ましいでしょう。
顧客と共通の母語、文化を持つほうがいいですからね。公務員など、日本国籍でないと、採用されない仕事でないと、日本人である意味がありません。その意味で日本がバブルの頃は外資が英語を話せる日本人を高額で買っていのですが、今は外資の現地化が進み、新しく参入する会社も少ないので、英語だけ、外国語だけ出来る人の需要は少ないです。
シン
確かに普通に、通訳、翻訳だけで食べていくってのは難しいですよね。
グーグル先生に聞けば、いろいろ教えてくれますしね。。。。
ただ、グーグル先生はボキャブラリーレベル、単純な文章ならきちんと翻訳してくれますが、複雑な文章になると、結構、赤ペン先生をいれないといけなくなるので、やはり基礎的な英文法の知識要でしょう。
とは言っても、中学校レベルの基礎文法がバッチリなら問題ないので、敢えて勉強するほどのことではないと思いますが。
最近、翻訳業務としてアメリカ発信のITに関連した技術書を短時間でアップデートするというのは日本では需要があるようです。ITの新しいテクノロジーやニュースはアメリカ発が多いので、ほぼリアルタイムにアップデートする必要性があるからではないかと思われます。ただ、やはりIT関連技術経験者やある程度の知識がないと、翻訳は難しいのだろうとは思いますが。。。 シンさんはどう思われます?
また私事で恐縮ですが、やっぱり老後は日本かなぁと最近、考えるようになりました。
アメリカで年取って、また病気になって弱っているときに、今ですら四苦八苦している医療専門用語を英語で医師、看護師に説明するのは大変だろうと想像に難くないからです。
さすがにアメリカ生活も20年経ったので、それなりに病院のお世話になっているので、医者に何度かどこらへんに違和感があるとか、痛みがあるという説明をせざるを得ない経験が何度もあるので、その度に ああ、この臓器は英語ではこういう言うのか、この関節やこの部位は英語では?辞書だ、グーグル先生だ! とあたふたしつつもなんとか理解していただけたというようなことはあります。ただ、日本と違って、アメリカの病院って、かなりしつこく頼まないと、きちんとした検査をしてくれなかったり。。。ここらへんはやっぱり保険でカバーできる検査はしたくないってこと?(私の現在の保険はかなり良い保険でほとんどの検査は無料でカバーされます)さすが、病院といえど、完全に資本主義なんだな。。と苦笑します。。。
ただ、ゾンビ老人にはなりたくないので(そこまで弱ってまで生きていたくはない)、私が老人になる頃には日本の老後ケアサービスも多少変わってくれてるといいなとも思います。わがままですかね?
専門の上に通訳、翻訳、と言うのは需要があると思いますので、まずは専門を身につけないと、いくら英語をやっても無駄だと思います。
多くの在米外国人が老後は故郷に帰るのは歳をとって、体に不調が出ても、母語でない英語で説明しなければならない、医療が高額になりすぎ、資本主義的すぎるからでしょう。日本がいいとは思いませんが、日本語で体の不調を訴えられるだけでも、メリットだと思います。
シン
非英語圏だと医者はなんとか英語を話してくれたとしても、看護師には期待できないので格段にハードル高くなりますね。
弱っているときは同国人に相談したいですし、駄目でも英語で話したいです。ほとんど言葉でコミュニケーション取れない人に囲まれて入院するとか、地獄絵図ですね。
シン
若い頃はその地獄絵図も楽しい思い出なのですが、年取って気弱になった状態が想像できないです。気弱になったら男は存在価値が無くなりすぐ逝くような。寧ろいろいろ鈍感になって楽観的になるような気がします。
長く海外にいた人も老後は母国に帰りたがる人が多いので、やっぱり体が弱ると、心も弱って、里心がつくんだと思いますよ。特に男性は仕事を辞め、妻に先立たれ、心の支えを失うと、すぐに亡くなる人が多いのではないか?、と思います。
シン
アメリカが、いつでもドルと金を交換するということができなくなって、1ドル360円の固定相場が崩れたと思います。ニクソンショックの時で、変動相場制に移行したのは1971年ですね。私がまだ学生時代だったころのことなので覚えていました。
プラザ合意は1985年です。
私の誤りです。ニクソンショックで変動相場制廃止、プラザ合意で大幅円高の流れですね。修正します。
シン
米国人が講師をする技術セミナーに参加した際、通訳の英語力は高いが技術的な話になると機能しないため、数人の参加者しか通訳用のイヤホンを使っていませんでした。
通訳の費用も参加費から出ていると思うと、納得出来ません。必要な人だけで、通訳費を割り勘して欲しいです。
欧州、インド、シンガポール辺りだと、そもそも英語通訳はいないのではと思います。日本がそのレベルになるのは何年後なのでしょうか。
何故か日本では、大卒なのに英語が出来ないことを恥じる人が少ないです。