じゃあ、黒田電気

ちょっと前から注目しているんですけど、黒田電気って面白い会社で、シャープの液晶パネル特約店として、ホンハイのシャープ買収に巻き込まれ、村上ファンドの娘からも狙われています。地味な電子材料商社がこんなに注目されるなんて、珍しいことです。

歴史

黒田電気のシャープの付き合いが始まったのは正確にいつからなのかは知りませんけど、特約店契約が始まっているのは昭和50年からなので、40年以上前の話になります。まだ、日本が高度経済成長に沸き、イケイケだった時代の話で、メーカーは自分で販売せず、代理店が販売するのが一般的だったみたいです。

シャープに加えて、住友グループの商材(テープ、積層板、ワイヤー)に対して特約を持っており、それが黒田電気の商売の基本となります。その為、黒田電気はディスプレイ製造会社を相手に仕事をしてきて、今でも仕事の半分以上はディスプレイ関連事業となっています。それに加えて、自動車産業への部材供給があり、それ以外は小さな仕事です。

世紀が変わるころから、家電日本勢は凋落していき、黒田電気の最重要顧客は韓国、サムソンになりました。今ではサムソン向けの供給が最重要となっています。有価証券報告書には最大顧客はサムソン、メキシコだと書いてあるので、これが完全に止まったら、えらいことになるのは見えています。注文確定分は責任があるのでするでしょうけど、それ以降はどうするのでしょうか?

村上ファンド

村上ファンドが乗り込んできたのは2015年で、一線を退いた、という形になっている世彰氏の娘である、絢氏がトップとして、黒田電気株を大量に買占めが始まり、株主総会で大暴れして、自分達を社外取締役として向かえるように吠えたのですが、これの試みは失敗に終わりました。

それでも、絢氏の資金源は父親、その取り巻きなので、短期的に利益を上げる必要がなく、あきらめず、虎視眈々と黒田電気を狙ってきました。そして、2017年、3/16付けで1/3を超える議決権を手にした、という報告がなされたのです。さて、これがどういう意味を持つのだろうか?、というところです。

1/3の議決権は特別決議に対する「拒否権」の発動がされるので、定款変更、取締役・監査役の解任、会社の解散・合併、事業譲渡、資本の減少等、が特別決議になり、実質的に村上一派を取締役にせざるを得ない状況になったわけです。過半数抑えているわけではないので、完全に掌握したわけではありませんが、かなり迫ったといえます。

ホンハイ

ホンハイ、総帥、テリー・ゴー氏の野望はホンハイブランドでの世界制覇だといわれており、サムソンに液晶パネルの供給なんてしたくないわけで、16年末、17年の供給停止を通告しました。当然、サムソンは怒り狂って、ホンハイ、シャープ、黒田電気の三社をアメリカ、ニューヨークで提訴して、国際裁判に持ち込むとともに、LGからの供給を模索し始めています。

テレビは組み立てするだけになって、それほど難しい技術がいるわけでもなく、単に巨額投資さえすれば、誰でも出来るわけで、単にブランド名が必要なだけになりつつあります。だから、ホンハイは他社名でテレビなどを作っているEMSで、自社ブランドで出来るなら、したいに決まっています。製造だけなんて、美味しい部分は全部持っていかれます。

だから、ホンハイはシャープブランドでホンハイの製造力を使った製品を売り出すことからはじめるのが定石で、誰でもそれは想像するでしょう。そして、シャープの液晶パネルはシャープブランド、フォックスコンでEMS生産分だけに供給を制限するのも当然の流れです。その中に黒田電気はどんな形で残るのでしょうか?

まとめ

村上一派の本当の目的って何なんでしょうか?確かに黒田電気は長い歴史で溜め込んだ内部留保はありますけど、シャープの特約を失ったら、仕事の半分はなくなってしまうわけで、実際、黒田電気は業績予想の下方修正をしています。このまま行けば、すぐに倒産はしないですけど、右肩下がりになるのはほぼ確実です。

絢氏の語る名目は村上一派の持つ人脈、経験でM&Aを進め、黒田電気の持つ歴史、遺産との相乗効果が期待できる、ということですけど、そんな上手くいくのかわかりませんし、もっと別に狙いがあるような気がするんです。じゃなきゃ、こんな地味な会社狙わないでしょう?黒田電気からシャープが消える可能性を把握していなかったわけがありません。

今後、ホンハイが黒田電気をどういう風に扱うかも不透明で、すでに価格競争が激化した業界で、マージンを与えなければならない代理店をそのままにしておくでしょうか?資本が入っているわけでもないですし、サヨウナラ、という展開になる可能性も高いです。そうしたら、村上一派がどんなに頑張っても、どうしようもないくらい経営は悪化します。

本当のところを知っている人、意見がある人はぜひ教えてください。

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かりりん
7 years ago

本当のところを知ってる読者さんからのコメント、あるといいですね。
株価が急落していて、ビックリです。

私なりに調べてみたところ、既にこちらの記事で触れられている内容(おそらくすでにシンさんが知りえた情報であろう)にあったので特筆すべきものは見つかりませんでした。
ICCで何かアップデートがないかも調べてみましたが、まだ公開している情報はないようです。

ここから先は自身の勝手な予想なのですが。。。
そもそもソフトバンク、孫氏が ホンハイにシャープの買収を促したそうで。
ホンハイは表向きは台湾企業ってことになっていますが、本体は中国と聞いています。
ホンハイはサムスンを敵視しており、また自社製ブランドの世界戦略を狙っているので、最近の一連の動きはホンハイがやりたい方向に進んでいる気がします。。

さて黒田電気は、純粋な日本企業ですよね。

浅はかな予想かもしれませんが、ホンハイの黒田電気に対する 次の打つ手はサヨウナラ か 買収か? 
になると思っています。

なんだか戦争抜きで、気付いたらいつの間にか日本は中国資本に乗っ取られているような未来予想図で悲しくなります。
前のシンさんの中国人に関する記事、コメントしてませんが、まさにあの通りです。
アングロサクソンはもっと酷くて、自分が一番で 家族も邪魔になったら切り捨てますね。
他人、組織は論外です。社交辞令的な挨拶やコミュ力は長けてますけどね。

日本人はもっと非情にならないと、国際ビジネスでは勝っていけないでしょうね。

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かりりん
7 years ago

シンさん

おそらく村上ファンドが投資する理由は、黒田電気が持っている特許に目をつけたのではないか?と私も思いました。
もう既に見ていらっしゃるとは思いますが https://www.kuroda-electric.co.jp/asset/2332/view
少し古い資料ですが、欧州への今後のビジネス展開などを視野にいれ、また子会社に黒田テクノはハンダ付けや精密機器等も扱ってますね。特許出願は結構されている風です。こういう地味だけど地道な会社、個人的には好きですね。

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かりりん
7 years ago

内部に精通している方のコメント、もしくは プライベートでシンさんへのコンタクトがあればいいですね。
シンさんと目的は違うかもしれませんが、私も企業分析は好きです。
ぬるりファンド! 期待してます!
その暁には、くじ引きでもいいので 何名かシンガポールにご招待くださいねw

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z
7 years ago

記事に対するコメントでなく申し訳ないのですが、もしファンドを立ち上げるとしたらどんなタイプのファンドになさるのか?興味があります。アクティヴファンドでしょうか?

先日の米株市場高値更新ラリーの後、手持ちのアクティヴファンド世界株式100%型の4分の1を売却しました。フランスの選挙が落ち着いたら欧州株のポジションを増やそうと思っていますが、買い増し分はインデックスリンクのETFでやるつもりです。

売却したファンド(フランスの Carmignac 社のもの)、私が使っている金融機関はファンド購入手数料を負担するので、それは無料。このファンドは年間手数料が平均で1.5%ほどでした。(Index linked ETF はこちらだと購入手数料が大体0.2%、年間維持料が0.5%以下くらいです。)それくらいなら妥協範囲かと思って購入しましたが、私のケースでは中期視野での結果を見るとやはりインデックス(この場合はMSCI World )に対しておおよそ手数料差分負けています。

「インデックスファンドは常時全資金投入型が多いので、上げ調子なら強いし、市場が下げた時の下がり幅も大きい。比べるとアクティヴファンドは上げ場面には手数料分負けるが、下げ場面・非常時には売り処理ができるので強いはずだ。」ということですが、そんなことは素人のインデックスファンド投資でも買いっぱなしにせず自分の許容範囲を超えそうな下げ市場だと思うなら売ればいいことであって、1%以上の年間手数料を払ってやってもらう必要はないんじゃないかと思った次第です。

シンさんはアクティヴファンド購入にメリットはあると思われますか?また、アクティヴファンド運用者はその報酬に見合う仕事ができると(あくまでも理論として)思われますか?

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CI
Reply to  z
7 years ago

zさん
数あるアクティブファンドから市場平均を上回るパフォーマンスを上げ続けるファンドを選ぶのはなかなか難しそうですね。

信託報酬が1%を超えるのは手数料が若干高いかなとは思います。
ただ、その手数料に対して運用手法や理念に納得しているのであれば、アクティブファンドでもよいのではないでしょうか。

私はほどんどのリスク資産は市場平均連動のインデックスファンドですが、
唯一市場平均と連動しない物としては、最小分散ポートフォリオのファンドを保有しています。

マニアックな話になってしまいますが、最小分散ポートフォリオは、効率的フロンティア曲線のリスクとリターンが最小値となる銘柄で構成されています。
これは、最小分散ポートフォリオのインデックスに連動するので、厳密にはアクティブファンドではないかもしれませんが、市場平均とも異なる値動きをします。

こんなアクティブファンドがあったらと思う物に近いので、市場平均連動のインデックスと比べて手数料は高いですが、納得して購入しています。

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z
Reply to  CI
6 years ago

Cl さん

未来に市場平均を上回るアクティヴファンドを見つける方法、それに支払う妥当な報酬についてたまに考えます。
もし「過去の成績は過去のものであり、どんなハプニングが起こるかわからない未来にも保証されたものではないゆえ、市場平均を上回るであろうアクティヴファンドを当てることは不可能だし、そうであればインデックスリンクファンド以上の手数料を払うのは無駄だろう」というのであれば、例えば過去の成績を参考に売買されるプロスポーツ選手の登録権や報酬なども、トッププレイヤーの超高価格は(試合観覧チケットの販売増、選手名入りチームシャツ等の売り上げ、各種広告収入やらを考慮したとしても)、無駄に割高になっているということなのだろうか?...とか。

自分でやってみたいと思うような銘柄選びをしているアクティヴファンドに出会えればぜひ試してみたいとも思いますが、私の場合、まだまだ勉強不足です。自分で納得できるくらいの知識がつくまでは、経済サイクルに合わせて「政策金利の底をねらって割安になっているはずの株式市場でインデックスリンクファンドを仕込む」→「バブルがはじける前に株を売り流動化」→「バブルが弾けたら債券市場は高金利になっているはずなので、そこから信用リスクは低いのにとばっちりで高金利になっている発行元の債券を買ったり、さらに低リスクがいいなら定期預金や別管理の保険などで高金利を固定する」→「不況が底打ちすると金利が下がり始め、先に買った高金利固定の債券価格が上昇するのでいいところで売って流動化」→「景気回復のために政策金利が下げられるので、底をねらって割安になっている株式市場でインデックスファンドを仕込む」… を繰り返していくくらいがいいのかなぁと思っているところです。まぁ、もうそれほど若くもないので「全力・全資金で」ではできませんので、あくまで「ポートフォリオの比重を変える」ということですが。

最小分散ポートフォリオというのは初めて聞きました。調べてみます。
私も分散投資として少し国を分散してみたり、原油関連、資源もしていますが、無駄に分散しているような気もしていました。結局、私の場合は組み込み銘柄の60%が米株のMSCI World + EUROSTOXX50、定期預金も含む各種債券・保険 で十分なのではないかとも思い始めています。

身体的加齢でリタイヤしなくてはいけなくなるまでになんとか自分の投資スタイルを見つけて、それ+ボケ防止に銘柄選んで個別株、なんかできたらいいなあと思っているんですが。

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