じゃあ、憚りながら

私はヤクザモノが好きで、ウィキペディアの山口組組織を延々と見ていることがあるのですが、その中でも後藤忠政さんに興味を持っていて、読みたいと思いつつ、読んでいなかった「憚りながら」をようやく読んだので紹介したいと思います。

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ヤクザ

後藤さんはある意味でヤクザ最後の時代の人です。現在、世の中はヤクザへの徹底的な取り締まりをしています。ヤクザは完全に汲々して、分裂し、ほとんど力を失っています。いくらなんでもこんなことで逮捕して良いの?、と言いたくなる様なことで警察はヤクザを強引に逮捕し続けています。

私はヤクザを支持はしませんし、いなければ、それに越したことはないと思います。でも、ヤクザがいなければ、別の犯罪集団が現れます。それが日本の法律を超越したような不法移民だったり、完全に地下にもぐって、傍目から全然わからなくなってしまう方が怖いな、と思います。

だから、今ではヤクザよりも半グレと言われるようなセミプロが世を騒がせたり、中華系マフィアが幅を利かせたりしています。このことは後藤さんも本作で言及しており、世の中のはみ出し者は確実にいるので、そう言ったはみ出し者が管理できる状態にないと危険だとのことです。

シンガポールみたいに小さな国なら、国がヤクザの役割をして、徹底的に管理をして治安を守れば良いですが、日本くらいの国土を持つ国がそれをするのは現実的ではありません。だから、ヤクザは必要悪要素も大きく、なんとも言えない存在だな、と思います。本当にこのまま壊滅させても良いだろうか、と疑問に思います。

経済

この後藤さんが面白いのは単なる武闘派だということだけでなく、経済ヤクザと呼ばれた経済感覚に優れたヤクザであったことで、この本でもお金がなければ、子分を養えないし、影響力を維持できない、と繰り返し言っており、非常に現実的な人だと思います。

地元の富士宮にいた頃から、不動産、宗教団体、株など、お金になりそうなものはほとんど手をつけていますし、本人は政治はお金にならない、といいながら、政治家との繋がりも十分に生かしています。政治経済を実地で知り尽くしたヤクザで、綺麗事でないお金の回し方を習得しているのだろうと思います。

女性関係もある意味でキレイなもので、警察のパソコンがウィルス感染したことで、後藤さんに芸能人の情婦がいたことが知られていますが、自宅に連れ込まない、手当をケチらない、付き合いが長ければマンションくらいは買ってやる、というキレイな付き合いをしたので、別れてからもうらまれなかった、と言っています。

実際、情報流出した芸能人の愛人であるSさん、Kさん、Mさん、誰もが後藤さんのことを暴露したりはしていません。その後の生活に困っているように見受けられる人もいますが、完全にシラを切りとおしているので、別れる時にやることはやってあげたからなのかな、と思います。

暴露

もうヤクザを引退しているため、凄まじい暴露をしまくっており、糸山先生、武富士、創価学会など、嫌いな人の暴露話は一見の価値があります。お金を大きく作ろうとすると、何かしらの形でヤクザとのかかわりは避けられなかったのでしょう。(今はヤクザは表に出なくなりましたけど。)

ちなみに糸山英太郎先生がオネエチャンとやることやって、1-2万円のはした金しか渡さない、と暴露していたのには笑いましたw 先生は淫行でも逮捕されていますし、ルールの守れないセコイ人みたいですねw イトヤマタワーで下々のものを見下ろしているような大物気取りですけど、後藤さんに言わせれば、小チンピラだそうです。

さすがにご本人のアメリカでの肝臓移植に対する疑惑は暴露しませんでしたが、これに関しては色んな人が動いてくれたので、迷惑をかけないために墓場まで持っていく、と言っています。身内、敵対組織の隠し口座をFBIに垂れ込むことを条件にしたとの噂がありますが、これはどうなのかわかりません。

この人以上の大物ヤクザ本人が暴露本を出版することはまずあり得ないでしょうから、この本は貴重な戦後のヤクザ史を語る資料で、ヤクザはこんな活動をして力をつけてきたのだなぁ、と言うことがわかる秀逸な作品だと思います。

まとめ

どんな仕事をしても、大きくなるなら、筋を通して、お金を持っている必要があるんだな、と思いました。そして、ケチると、それが色んな形で自分に返ってくるから、お金関係を身奇麗にするのは大事なんだな、と思いました。でも、糸山先生を見る限り、ケチでもお金を作れないわけでも、偉くなれないわけでもなさそうですw

カンボジアで貴族になった後藤さんが余生を楽しく過ごさせることをお祈りします。やらない善より、やる偽善なので、目的がどうあれ、恵まれない立場の人を助けるために身体を張ることは立派ですし、わけわからないボランティアでなく、現ナマを渡して、その使い道も見届ける姿勢は素晴らしいです。

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ナマケモノ
6 years ago

お金の作り方や交渉術などは、善悪は別にして、勉強になります。命懸けや必死さが、人を強くするのだなと思いました。
ここ数年、急な取締り強化が始まった印象なのですが、きっかけなどはあったのでしょうか。記事の通り、日本が海外勢に支配されると、何をされるかわからなくて、本当に怖いなと思います。

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ナマケモノ
Reply to  シン
6 years ago

一般人への被害が一因なのですね。知りませんでした。

国内勢の締め付けを強化したために、海外勢につけこまれて、自由奔放にやられてしまう構図は、表社会と似ていますね。海外勢は、日本国外に逃亡できるし、組織の維持費用も日本人より安価で済みそうですから、有利ですね。

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しゅうまい
Reply to  シン
6 years ago

>>絶対に引かない気迫が相手を圧倒するのだ
これは本当にそうだと思います。日本企業が海外で舐められるのは、この「絶対に引かない気迫」が欠けているからじゃないかな、と思う事があります。自分が折れる事で穏便に摩擦を避ける事を美徳とする文化が影響しているのかもしれません。

特に白人相手の交渉事で話を押し通すには、法と契約による支配でガチガチに理論武装する事も重要ですが、それと共にこちらは絶対引かない、必要とあらば法廷闘争も辞さず、莫大な損害賠償で相手の身包み剝ぐまで追い詰める覚悟だ、という気迫を見せるのが重要だと思います。
無下に扱ったらただじゃ済まさんぞ、と相手に印象付けておくことが重要で、一旦舐められるとこいつらは契約違反しても黙ってるからいいや、と遠慮なく搾取してきます。

金融や不動産、性産業などの生の金が大きく動く業種では、ヤクザと接触する事が避けられない事事態も発生しますが、彼らには多くの場合経済合理性が通用するので、ちゃんと筋を通せば比較的話が通じる相手であると思います。むしろ面倒臭いのは宗教や政治などのイデオロギーに突き動かされた人たちで、彼らの様に論理性や合理性が通用しない相手はビジネスでは一番避けなければいけない相手だと思います。お金で解決できる相手はむしろやりやすい、という話です。

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ニコ
Reply to  シン
6 years ago

日本人でも帰国子女に多いのですが上から目線で相手を出し抜こうとする人や表面的には人格者を演じますが考えていることが怖い人っていますね。
欧米系の社会にいるとそうなってしまうのかな?と思います。
親がしっかりしていると日本人というアイデンティティを持つことを教育しますけど。

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松本
6 years ago

YouTubeにアップされている新築祝パーティーは盛大ですね。

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Garfield
6 years ago

力の空白は別の勢力が結局埋めることになることの典型ですね。幼馴染が昔ヤクザに関わって学校を中退して警察にパクられしばらくして家庭崩壊し、私の実家と彼の実家が断絶するようになったのでヤクザはやはりウンコみたいなもので嫌いですが、外国人が我が物顔をするよりかはまだマシですね。関わりたくはないですが。

最後の譲れない一線を以って白人に媚びずに反撃し、最後は勝利を勝ち取るというコメント中の話については、最近メディアで話題のマレーシア大富豪の方の逸話がありますが、やはりすごい人は違うなあと思います。本当の話ならば見習いたいです。

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ran
6 years ago

最近は、暴力団への締め付けが厳しいので、隙間産業的に、暴力団ではないが、暴力団並みの勢力を誇る犯罪集団がいるようです。
その代表例が、関東連合で、海老蔵事件や朝青龍事件など、芸能人ともつながりがあるほどのグループでした。
しかし、そんな関東連合も、無関係な人を対立するグループのリーダーと勘違いして、100人近くの客がいる夜のクラブのなかで、集団で金属バットで殴り殺した事により、ついに警察に検挙され、壊滅しました。
リーダーの見立真一は、中卒だが、IQ145以上の測定不能と、マンガの設定のような人間です。
杉並区の中流以上の教育熱心な家庭出身で、特に家庭に問題があったわけではないようです。
身長は167cmとやや小柄で、単純な腕力では関東連合のなかでは特別強い方ではなかったようですが、恐怖で支配していて、絶対的存在だったようです。
例の撲殺事件で、フィリピンに亡命しましたが、未だに逮捕されていない強運の持ち主です。

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かりりん
6 years ago

私もヤクザもの本、映画、ドラマなど大好きです。
昔、岩下志麻さん見て かっちょええー と唸っていた頃があります。
割と最近(。。。。でもないか)だと、ごくせん なんか笑いながら見てましたね。

確かに、日本からヤクザがいなくなったらなったで別の問題が出てきそうで
そっちのほうが怖い気がします。
どんな時代も、物理学的にも、生物学的にも
この世界は対極によるバランスが取れていないと滅ぶ運命にある気がします。
歴史を見ても、滅亡 もしくは 解体 -> 再建 -> 繁栄を繰り返してますね。
日本は繁栄の時代が終わりに近づこうとしているのでは?と思うこともあります。

別の視点では、融合することによって、新しく生まれたものでも、時を経て また対立することも珍しくなく。。。
なにが真で、なにが偽なのか?
これは国や時代によって変わっていくものなのでしょうね。

なんだかとりとめのないコメントで申し訳ないです。

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