じゃあ、三兄弟

日本が誇るお爺ちゃん経営者、永守、柳井、孫、三氏は友達であり、ある意味で三兄弟と言っていいくらい親しいそうです。彼らほどの大きな投資を行う人、資産を持つ人は日本人には数人しかおらず、彼らにしかわからない感覚があるんでしょう。

永守氏

私は彼を「戦国武将」と称しますが、ともかく老獪であり、強烈に辛抱強いです。そして、七十過ぎて尚、野望に満ちており精力的な人です。未だに朝から晩まで働いているそうですし、仕事そのものが自分の生き甲斐であり、死ぬまで現役を続けるつもりなのでしょう。

彼が孫氏からARMの買収を聞いた時、高すぎる、十分の一が適正価格だと言ったそうです。徹底的に買い叩くことを投資哲学とする永守氏からすれば、孫氏の飛びつくような買い方はまったく賛成できるものではなく、呆れた高掴みに見えるようです。

実際、永守氏の買い方はうまい買い方するよなぁ、と溜息が出るような価格、タイミングで買いますし、海千山千のブローカーにカモられることはあり得ない、という徹底した自分流の突き通し方は凄いとしか言いようがありません。

買ったら買ったで、自分で連れてきた側近に部隊を組ませて、占領側として進駐し、徹底的に永守流に染め上げてしまいます。統治法、人事も一流があり、馴れ合い、協調を尊ぶ、日本人、日本企業にないようなやり方をします。

飛行機のビジネスクラスをスカウトの場としているらしく、どうせ暇する移動時間を会社がビジネスクラスを買ってくれる程度には評価されている人材と話してみて、面白いと感じたら名刺を渡してみる、と聞いたことがありますが、変わってます。暫定社長もそうやって引き抜かれたんでしょうか?

そうして引き抜かれた人も底値で拾って来た人ばかりなのが面白いです。元シャープの片山さん、元日産の吉本さんなんかもある種の底値買いであり、大きな仕事をしたことがあるが、先はなく、誰も手を出さない状態を拾って来て、使えなきゃ捨てるでしょう。

息子さんが二人いますが、継がせるつもりもないようで、既に四十になろうというのに実家に戻してもいないので、本当に継がせるつもりもないのでしょう。長男さんは自ら上場企業を立ち上げてますし、次男さんは少し日本電産にいたものの、起業するために辞めています。

柳井氏

柳井氏は投資はさほど好きではなく、実業、本業に力を注ぐべきだ、と孫氏には助言しているそうです。それだけ聞くと、地に足の着いた地道な人を想像しますが、彼こそが最も常人のメンタルではないのではないか?と思いますし、私は三兄弟で最も仕えたくない人です。

自分がしたいこと、目指していく場所に行くために、どんな手段を使ってもいいと考えている節があり、タブーとされていることも平気でします。親族を後継者にしない、と明言して、社長の椅子を餌にして色んな人を誘っておきながら、最終的には自分の息子を後継者にするみたいですが、節操ないな、と思います。

自分の会社の潜入取材、内実の暴露をしたジャーナリストをメンタル崩壊するほど追い込んだり、末端社員に対するブラック労働、撒き餌のようにキラキラした将来を夢見させて、本社は外資コンサル、総合商社出身者の小売り現場経験のない人で固めているところは弱者を食い物にする人だな、と思います。

経営者としては冒険をする人ではなく、着実にテストをしていき、勝てることが確定してからしか大きく踏み込まないので、ユニクロの海外展開も遅くてゆっくりでしたし、北米市場で勝つために何でもやっていき、世界一のアパレル企業にする、という気持ちはないのだろうと思います。比較的簡単に成功できそうなアジアに注力するのは彼らしいですね。

孫氏

言わずと知れた大投資家の孫氏は感覚で踏み込みます。大成功であり、代名詞となったアリババの投資は馬雲氏の目つきが気に入った、という理由で投資を決めたそうですし、会うまでは否定的なことを言っていても、会ってみて気に入ったら、ものの三十分で巨額投資をするそうです。

当然ですが、こんなことをしていれば、失敗数も膨大であり、ITバブルが弾けた時には投資先がほとんど破たんして窮地に陥っています。それでも天運を持っていうのか、次の投資が上手くいくので、なんとなくお金が回っていく、という日本が生んだ稀代の天才です。

彼は寸暇を惜しんで走り回っており、自転車操業は凄まじい勢いで漕いでいれば、何の問題もない、と言い切っていますし、やっていることは常に多局面戦争であり、一つのテーマに従って、それを一定規模まで膨れ上がらせる、という地道さは全くありません。

今現在、アメリカのスプリントを軸にしてアメリカのインフラ、通信産業に食い込みつつ、次世代IT産業のライドシェア各社に投資してソフトバンクファミリーだと言い切って互いに競争させ、欧州においてはイギリスの至宝、ARMの買収をしています。

こんなメチャクチャなことをしてお金を回し続けていられるのは孫正義、その人しかおらず、後継者は日本人に限らず、どこにも存在しないのは当たり前だよな、と思いますね。腹心の宮内さん、弟の泰蔵さん、引き抜いてきたアローラさん、誰もが後継者としてふさわしくありません。

バークシャーがバフェット氏の死を持って、インデックスファンドみたいな存在になることが想像されるように、ソフトバンクも孫正義氏の引退、死を持って、サラリーマン社長が順繰りにポジションを渡していく、ありふれた大企業になるのかもしれません。

まとめ

彼らに共通するのはサラリーマンをほとんどしたことない、ということです。永守氏はほんの数年サラリーマンをしてますが、あっという間に子会社役員になり、そこで得た資金を元手に起業しています。柳井氏は親の命令で少し修行に行ってましたが、すぐに嫌になって実家に帰ってきています。孫氏は学生起業をしており全くサラリーマンをしたことがありません。

だから、経験、知識によって経営者、投資家として大きく育つ、ということはなく、そういう才能を持って生まれた、としか言いようがないのでしょうし、少なくとも時価総額数千億円クラスの企業を育てるのはテクニックではなく、本人の生まれ持った熱量が周りを巻き込んで熱狂の渦にしていくのだろうな、と思いました。

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6 years ago

リレジョブ通信というブログを運営しておりまして、ブラック企業について調べるうちに、ぬるりさんのブログに迷い込んでまいりました。この記事、三投資家をほめているようで、あまり快くは思っていらっしゃらない様子で、ぬるりさんの心の優しさを垣間見たような気がしたのは間違いでしょうか(笑)。

一労働者としては、孫さんはともかく、異常な労働を従業員に要求する永守さん、自社の暗部を暴いたジャーナリストに2億2千万円の巨額名誉毀損訴訟を起こす柳井さんに対しては、怒りしか湧きません。少なくとも人権を尊重し、理想を説くアメリカの巨大企業の経営者たち(コーク一族などを除きます)に比べると、人間として質が低いと感じます。

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ニコ
Reply to  シン
6 years ago

昔、読んだ漫画に会社なんか元々儲けたいおっさんが血反吐吐きながら起こしたものであり、そこで長年の労働組合や社員との争いから福利厚生やベースアップを要求して働きやすくなったと描いてあり、だから大企業を目指すべきなんだと書いてありましたね。

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Reply to  シン
6 years ago

おっしゃるとおり、日本人には「戦って権利を勝ち取る」ことを避ける傾向があります。悪徳経営者が幅を利かせる理由の一つです。ただ、権利闘争に関わる人達に極左のような極端な思想の持ち主がいて、下手に関わると反社会的な活動へ引っ張られてしまう怖さがあります。健全な権利闘争ができなかったのは、日本にとって不幸でした。

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