今回は化学専攻を考察してみます。
将来性
これは「ニュートラル」だと思います。確かに化学分野はまだまだ技術的進化の余地を残しており、産業として大きくなる可能性があるのですが、大手の寡占化が進んでいるため、大手に潜り込めるスペックがないと、さほどの需要はないといっていいです。
中小で化学系を雇うとするなら、めっきなどの表面処理技術、樹脂材料開発、技術、と言うところでしょうか?一定の需要はあるものの、機電ほどの汎用性はなく、ほとんどどんな業界でも必要とされる類の専門ではないが、農学、生物系ほど需要がないわけでもないです。だから、中立って感じですね。
自分の得意分野を見つけて、ニッチに専念して、その分野で一人者になるつもりで取り組むなら、いいと思います。化学分野は結構幅が広いので、あんまり人が手を出していない領域も結構あります。特定用途の樹脂開発とかしていれば、その業界では価値がある存在になることもできます。
コンピューターサイエンスなんかを専攻すると、高等数学が理解できない、コーディングが肌に合わない、とかになると、落ちこぼれて中退するような羽目になることもありますが、化学で専攻で才能がないために落ちこぼれることはほとんどないと思います。一生懸命取り組んで、手を動かす実験系の研究室に所属すれば、それなりにはなるでしょう。
化学、プラント
日本の化学会社は遅れており、ニッチ分野はともかく、王道を走る財閥系科学会社は他国の競合に規模の面で大きく後れを取っています。化学会社は投資額がハンパなく大きいため、規模を大きくして、国策企業化するほうがメリットがあると思います。何年か前に三井住友が合併する、という噂がありましたが、結局はそのまま放置されており、このままでは日本の化学業界自体が競争力がなくなる恐れがあります。
それに対して、プラントエンジニアリングはLGP分野で世界トップをひた走っており、ここの部分では他の追随を許していません。ただし、メインの石油分野では欧米に太刀打ち出来ておらず、これは元請が欧米資本で固められているため、アジア人である日本企業がそこに食い込むのは本当に難しいからでしょう。技術的な問題よりも、利権の問題が大きいと思います。
化学専攻でプラントエンジニアリングに行く人は欧米系外資を目指してもいいかもしれません。日本採用されてもいいですし、シンガポール採用されてもいいでしょう。多少の英語が出来きて、きちんとした技術があれば、本社異動も十分に可能性があると思います。そこからは白人でないと、先は難しいですが、トップまで行きたい、と思ってないなら、十分です。
また、プラントエンジニアリング志望なら、温かい家庭を望まないことです。転勤が多いだけでなく、僻地勤務が多いため、サラリーマン人生の半分は単身赴任をすることになるでしょう。そうなると、温かい家庭を築くのは困難で、様々なトラブルと付き合っていくことが要求されます。この辺は土木、建築系職場と同じで、職業的に避けることは出来ません。
女性向け
化学専攻は高度な数学、物理の素養がそれほど要らないため、女性向きだと言ってもいいのですが、その職務内容は余り女性向きではないです。まず、上記のプラントエンジニアリングは転勤が非常に多い業界だということです。ずっと本社、研究所勤務をするのならいいかもしれません。
化学プラントは女性の妊娠出産能力に悪影響がある可能性があります。私の知り合いの女性化学技術者は欧米系外資への入社時に何が起こっても、裁判を起こさない、という契約書にサインしたそうです。化学材料は何が人体に悪影響があるのかはっきりわかるまで時間がかかります。アスペストなんかも一昔前は使いまくっていましたから。
だから、これも「ニュートラル」です。女性向きな要素もあれば、そうでない要素もあり、強いて勧めはしないが、明らかに数学センスがないのにコンピューターサイエンスに進むよりは確実にいいと思います。まあ、職場によってはおしゃれができない場合もあり、派手な女性には不向きだと思います。常にスッピンで白衣着ている、くらいでは済まず、頭にビニールキャップかぶって作業するのが苦にならないなら、いいでしょう。
まとめ
数学が苦手であるが、理系を望んでいて、中堅レベルの化学科に入れてるなら、いい専攻だと思います。あまり注文を付けすぎない限りは就職口はあるし、そこでニッチを見つけて頑張っていくこともさほど難しくないからです。ただ、Dラン、Eランの化学科だと、景気次第では就職に苦戦するかもしれません。
また、業界全体が寡占化しているため、英語が苦手だから、バリバリの日本企業に入ったつもりだったが、知らぬ間に外資に買われたりして、英語が必須になってしまった!っと言うことはほかの業界よりもあると思います。これは製薬系も同じことであり、巨額投資が必須な業界の宿命でしょう。
プラントエンジニアリングやバルクケミカル事業は様々な観点から女性には難しいところがあるかもしれませんが、ファインケミカル事業ならば前者よりは働きやすいのではないかと思います。化学系も裾野が広いので、就職については良いと思います。薬学部からの転向も良いのではないかと思います。
バルクケミカルの傾向としては、例としてMCHCは鹿島でのプラント縮小や水島での旭化成との統合を進めていますが、SinopecやSABICなどの新興国と戦うとなるとかなり辛い状況ではあります。一方でファインケミカルの研究開発においては日本の技術はまだ先を進んでいますが、こちらはBASFやダウをはじめ欧米系が依然強いです。
規模だけでなく利益率でも大きく諸外国と差をつけられており、更なるファインケミカルの重点化や研究開発体制の強化、さらには人事的な効率性に踏み込んでいかないと利益も株価も低いままで、東芝がやらかして半導体を売ることになってしまったように、いつか諸外国の巨大会社に飲み込まれやしないかと心配にはなります。
理系に行きたいけど物理が苦手で消去法的に化学を選んだ人が多い印象です。(旧帝大を除く)理系人の能力としては機械、電気、物理、情報などからは若干落ちるのではないかと思います。化学も根源的な反応理論は量子力学ですし、もはや物理がカバーすべき領域となっています。高度なシミュレーションとなるとプログラミング能力も必要とされます。化学科の中堅層以下は地場のメッキ加工会社、ペイントメーカー、肥料メーカーなどでは需要があるのでしょう。
化学系学部は中堅以下なら理系の素養がなくても(真面目に学生実験をしてレポート書けば)卒業できる上に、物理や数学の素養を必要としない処方設計者(いわゆる塗料屋や化粧品屋など)の職があります。 処方設計者の代表的な就職先である日本の塗料屋はまだ顧客-メーカーの関係が濃い(顧客ごとに設計仕様が違う→既存メーカーが顧客仕様に精通→新規が参入しにくい)ので、零細塗料メーカーでも潰れることがないらしいです。 塗料が嫌なら化粧品屋や接着剤屋など処方設計者の就職先は少なくないです。
確かに化学メーカーの仕事は、人体に悪影響のある化学物質を間近で取り扱わなければいけないのが1番のネックですね。爆発事故も含め。
まぁ、事故はそこまであることではないですし、製造に関われば、多かれ少なかれ同じですが、化学だと、将来の悪影響があり得るのが不気味ですね。
シン
数学素養が必要かどうかは分野に非常に依存します。
必要なのは、理論化学と化学工学で、それ以外は数学嫌いでも何とかなる場合が多いものの化学アレルギーだときついです。
理論化学は理論物理みたいなもので、化学工学もプリゴジンなど偉大な情報理論学者を輩出してるぐらいで、本来は機電並みに数学必要で化学に詳しい必要ないです。
ただ機電でも化工でも他の工学でも、数学得意な人は東大でもごく一部しかいないのが現実です。
私のケース(低偏差値、高齢大学生)ですが、学校を選ぶなら、一定の成果(=卒業)で、就職可能性が低くない理系が良く、特に数学の素養が低くても卒業できる見込みがある化学系が更に良いです。
素養を選ばずに働ける(数学の壁)、職務能力が磨きやすい(職人芸的な要素が高い)、過去の知見が陳腐化しにくい(完全廃れる材料は少ない)点から、機電に行けない人にとって化学系は「穴」だと思います。
※社会人以降は、主スキル(職務上の実務能力)+αを身に付け、スキルの相乗効果でできる業務の幅を増やし「業務の囲い込み」をすべきですね。
機電が受け付けない人には化学はいいと思います。汎用性がある程度あるので、上手く業務の囲い込みをすれば、一定の立場が築きやすいです。
シン
化学系の欠点は他の技術系(機電やIT)より求人数が少ない点です。 しかし比較的汎用的な分野で川下側(研究より開発や技術)で経験を積めば、転職活動にも耐えられるキャリアが得られると思います。
薬学部と比べて見るとどうなんでしょう?
薬学もある意味化学専攻のようなものだと思うのですが‥
化学、数学得意なひとでも就職が安定している(いそうな)という理由で化学科でなく薬学部にいく子が何人かいました。
就職が安定していることより、資格が付いている安心感ではないでしょうか?薬事法が変わる可能性は否定しませんが、今の所、薬剤師は名前を貸しているだけで、割高な報酬がもらえます。
シン
化学メーカーだと知財って重要らしいです。
訴訟が起きると金額が大きいのと特許で儲けることが可能だからです。