じゃあ、鶏肋

さて、三国志の故事を取り上げます。やはり、名作と呼ばれ、長く読まれている作品には味がありますよね。

あらまし

三国志の曹操が漢中で劉備を攻めていて、どうもうまくいかなかったんです。その時、食事に鶏肋(鳥の骨)のスープが出てきて、将軍、夏侯淳の前で「鶏肋、鶏肋」っと呟いたそうです。これは鳥の骨が捨てるにはもったいないが、もうしゃぶるところは無いっていう現状と重ねて思わず呟いた独り言だったようです。

そこに参謀、楊修という人が現れて、夏侯淳はこんなことを言われたのだが、どういう意味だろうか?、と尋ねます。楊修は「それは撤退しろ!」っという意味だから、引き上げの準備をすべきだ、と助言をしたのです。しばらくして、慌しい陣中に驚いた曹操が「何事か?」っと部下に尋ねると、夏候惇は事のあらましをわかりました。

結果、曹操は勝手に判断した楊修を処刑します。ちなみにこの戦争が最終的にどうなったかと言うと、曹操は引くに引けず、無為に劉備攻めて、被害を拡大させて、最終的には撤退します。結果としては楊修の判断は正しかったし、曹操もそれがわかっていたから鶏肋と呟いたんです。

小賢しい

曹操のような万能型の君主にとって小賢しい人間は最も忌むべき存在です。彼は自分で孫子の注釈をつけるくらい自分の能力に絶対の自信があるわけです。そういう人間がとっさに発した言葉を見透かされて、勝手な行動を起こされれば、激怒するのは目に見えています。つまり、楊修は完全に余計なことをしたのです。

これは非常に参考になる故事です。特に読者さんがオーナー企業に勤めている場合は特に参考にして下さい。オーナー企業、特に創業者は自分の能力に絶対の自信を持っていて、その信念の元に物事を進めてきた結果が今なのです。少々学歴が高いとか、技術があるだとか、資格があるだとか、なんて彼らオーナーからすれば鼻くそです。余計なことをすれば、解雇されるのは当然です。

もし、何かを感じたなら、「XXXとおっしゃっていましたが、YYYと言う意味でしょうか?」っと曹操に直接聞くべきです。まして、その場にいて直接聞いた夏侯淳が聞き返すならともかく、又聞きしたに過ぎない楊修が勝手に判断すれば処刑されても仕方ありません。明らかな越権行為です。

実社会

絶対的権力者の顔を潰すようなことは絶対にしては駄目です。それが合っている、間違っているの問題ではなく、権力者がそういうなら「黒いカラスも白い」のです。「能ある鷹は爪を隠す」っと言うように、自分に権限が与えられていない以上は権力者の好きなようにさせていればいいのです。

どんな組織にも絶対権力者って言うのはいるものです。上場大企業でも派閥があり、派閥の領袖がいるはずです。彼らも何かしらの能力がずば抜けているから、サラリーマンとしてのし上がってきたわけで、自分の配下から望んでもいない助言なんて聞きたくも無いのです。そういうボス猿心理をきちんと理解しないとドツボにはまります。

どうしても嫌なら自分がボス猿になるべきで、それが出来ないからしがないサラリーマンやっているのに小賢しいことを言い出すので下の下です。サラリーマンは命令の範囲内、与えられた権限の範囲内で結果を出すことです。自分の思うようにやって結果を出しても、それがまったく評価されないどころか、処罰になりかねません。

まとめ

サラリーマンの読者さんはこの故事を肝に銘じてください。余計なことをすれば、それが正しくとも処罰されるのは当然です。仕事で余計なことを考える必要はなく、与えられた仕事に精一杯取り組めばいいのです。

この故事は三国志演義であり、正史では曹操の後継者争いに首を突っ込んで処刑された、側面もあるようです。これもよくあるお家騒動であり、必要が無い限り首を突っ込むべきことでもなかったでしょう。いずれにしても、余計なことにクビをつっこんむタイプの人で、早かれ遅かれ処刑されたと思われます。

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どなるど
7 years ago

私も会社員です。勉強になります。
IT化に伴い業務量が増え、いちいち指示してられないため、リーダーシップや仕事に対する能動的な姿勢が労働者に求められています。自信の能力を過信し、越権行為を行う人は、上記のことを自分の都合の良いように解釈してると思います。

結局のところ、労働者は資本家の道具だと考えます。労働者は、変な顕示良くなどださず、よろしくやってればokだと思います。それが嫌なら起業して資本家側へ行くべきだと思います。私も行きたいので種金をためてる最中です。

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カッペ
7 years ago

昔を思い出して笑ってしまいました。
けど、会社って「じゃあ、鶏肋」みたいな事は絶対に言いませんよね。
逆に「忌憚のない意見を」とか言ったりして。
どう言うつもりなんでしょうか?w(カマトト)

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ハロルド
6 years ago

とても面白い記事をありがとうございます。
小生も三国志が好き(演義は興味なし)で、この記事を読んだ時に、蜀の馬謖と似てるなと思いました。

馬謖は街亭の戦いにおいて、敢えて孔明の軍命を無視し、張郃の部隊を引き付けておくことで、逆に孔明に対して馬謖のほうから、孔明の本隊で、ダイレクトに長安を突いて欲しかったと思います。

当時の長安には、曹叡がおり、首を挙げることができれば、この戦争は決着がつきます。この考えは遠征実行前に魏延が主張した長安急襲策と同じ作戦となります。

しかし魏延が北伐の開始前に献策した長安急襲策については、孔明が始めに却下していました。軍中に於いても今回の孔明の作戦が奇襲ではない点については、周知の事実でした。馬謖も承知の上だったが、曹叡が長安にくることで、考えが変わったと思います。

曹叡が長安に出てくるのは孔明が祁山を攻略し、南安・天水・安定の三郡が蜀に寝返ったからで、当初と状況が変わり、魏の皇帝本人が自ら長安にまで出てきたとなれば、これを討ち取って、大手柄をあげたいと。

欲が出て、軍規を乱したのです。

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