最後に投資家編に行きたいと思います。
村上世彰氏
この人の評価はなかなか難しいです。
[amazonjs asin=”4163906657″ locale=”JP” title=”生涯投資家”]これを読むと非常に理に適ったことを言っています。何でこの人は逮捕されたの?執行猶予はついたけど、実刑食ったの?と言いたくなります。ホリエモンと同様に庶民の嫉妬であり、感情論です。その意味では韓国の司法を笑えないなと思います。
私個人的には好きな人で、すごくストレートです。父親が台湾人なので、典型的な華人的な人であり、身内には甘いが、他人には厳しく、特に無能者には極めて辛辣な人です。だから、経営者はできない、純粋に投資家なのだ、と言い切っています。
この人はオーチャード、日本でいう銀座みたいなところに住んでいて遠くないベイエリアをウォーキングしているそうです。(出くわしことはありません)そんなに飲みが好きではないみたいですが、カッページにもたまに顔を出すと聞いたことがあります。
この人は英語に不自由しませんし、親の代からシンガポールに縁があり、財閥のホンリョングループとは家族ぐるみの付き合いをしてきたので、シンガポールではっちゃけるときはローカルと弾けるのでしょう。
ただ、この人もシンガポールは暇をする、と言い切っており、渋谷に家を持ち、年の3分の1くらいは日本で過ごしています。奥さんとまだ小学生の小さな息子さんは日本に帰ってきていると聞いたことがあります。
長女の絢さんは跡を継ぎ新生村上ファンドを率い、長男さんはフィンテック系PEで修行中のようです。この辺も華人らしく、どんなに大きくなっても家族と他人はしっかり分けるので、他人である部下とは裁判沙汰になったり、喧嘩別れするのがパターンですね。
阿部公久氏
フェラーリマン、個人投資家の阿部氏もシンガポール在住です。プライベートバンカーでも少し登場します。チャラい遊び人のようですが、芯のところでは極めて冷静で、やって良いライン、ダメなラインをきっちりと分けており、派手そうで極めて堅実な人です。
外銀バブルの最後っ屁を味わった世代です。寝食削って稼いだお金でシンガポールでアーリーリタイアをすることになり、オーチャードにあるIONという目抜きショッピングモールの中層階に住んでいます。
外銀マンだったので、英語にも不自由はせず、ローカルの金持ちとつるみ、フェラーリ友の会で遊び、飲み歩き、バーの経営に失敗し、カジノにハマり散財していますが、一線は絶対に踏み越えません。
NHKに出てみたり、ドキュメンタリーの取材を受けたり、ツイッターで貧乏人を煽ってみたりするのも子供がいないというもあると思います。狭いシンガポールでこれほど名前を売ってしまえば、子供は虐められますよ。
印象的なのは「俺はこんなポジションとったぜ、すげえだろ?」とやるトレーダーは時間の問題で死ぬと言っていることです。これは暗に村上氏、ホリエモンを指しているのかもしれません。どんなに優秀で頭が切れても、踏み越えてはならない一線を越えるとやられると言いたいのでしょう。
中田英寿氏
この人はシンガポール在住ではありませんが、割とシンガポールには出没します。実際、私もチャンギ空港で見たことがあります。グラサン、マスクで絶対に話しかけえるなオーラを出し、引退したにも関わらず、意外にも低身長でムキムキの身体をピチピチのブランド服を纏って歩いてましたね。
彼は「旅人」のあだ名で呼ばれるくらい世界中をほっつき歩いていて、パーマネントトラベラーで節税したいのか?と噂されていましたが、巨額キャピタルゲインが発生するようなイグジット案件があったわけでもないので、そういうわけでもなさそうです。
ふと気になって、大株主であるサニーサイドアップを調べてみると、登録住所は東京都渋谷区と記載されているので、今の時点ではパーマネントトラベーラーではありません。仮に国外滞在が半年を超えても、住所を渋谷においていたら日本、渋谷に納税義務が出てきます。
引退して間もない頃はどこに行ってもチヤホヤされたんでしょうが、10年もすれば、知らない人の方が増えますし、過去の栄光も続きはしないのでほっつき歩いていているのにも飽きて日本で趣味的な事業に勤しんでいる感があります。
[amazonjs asin=”B0194W6F4Y” locale=”JP” title=”永遠の旅行者 完結上下巻セット 【電子版限定】 タックスヘイヴン”]一連の流れで上記リンクの本を買ってしまったのですが、強烈につまらなかったので完読できませんでした。人間は永遠に旅行者ではいられません。数年もすると強烈な孤独に襲われて帰属意識を切望します。これはその日暮らしの長期バックパッカーですら声を揃えて言います。まして、過去にチヤホヤされるような経歴、実績がある人間が耐えられることはあり得ません。
この本の主人公は各地にあと腐れなくタダマンできる女、突然の連絡にも歓迎してくれる友達を持ち、地道な営業活動しなくても口コミで仕事が舞い込み、退屈しない程度に仕事をしていられるようなポジションを得たという設定です。リアリティーゼロで読むのがキツくなり、我慢していましたが、上巻で断念しました。
橘怜氏の作品はそれなりに面白いんですが、あくまで評論家、小説家目線であり、実体験ではないので違和感を感じることが多く、彼の年代にありがりなアメリカコンプなどもうざったく感じますし、同年代の落合信彦氏みたいなマッチョフィクションを楽しめる人でないと辛いと思います。
とは言いながら、私はシンガポールが舞台の下記の作品は読んでいます。
[amazonjs asin=”4344424662″ locale=”JP” title=”タックスへイヴン Tax Haven (幻冬舎文庫)”]これはシンガポールが舞台だったから完読できただけで、これもリアリティに欠ける娯楽読物ではありましたね。なんで、娯楽性を追求すると、人間味のないイケメン主人公と気軽にセックスする女性がいたり、男性役が女性が演じてリアリティを削除してしまうんでしょうね?
さて、中田氏に話を戻すと、彼も孤独には耐えられないし、承認欲求から逃れることが出来ず、訳の分からない事業に手を出して無駄なリスクを負ってしまうのが人間の物悲しさを感じます。ニューヨークの不動産に手を出して火傷をしたこともあるようです。
村上氏がどれだけの資産を手にしても引退できない。阿部氏が大人しくアーリーリタイアを楽しめない。中田氏が話しかけるなオーラを撒き散らしながら各地をほっつき歩き続けられなかった。それが人間なのだと改めて思いますね。人間は誰かに承認され、他人と関わりながら生きて行かないと病んでしまうのでしょう。
まとめ
残念ですが、軽くFuck you moneyを持っている人でも孤独には耐えられません。有能である上、その自己顕示欲が強いほど無駄なリスクを負ってしまうし、負う必要もないリスクを取ってしまうのは承認欲求から逃れられないからです。
Fuck you moneyは憧れですが、手にしても、その後の人生はあります。老人になってから手にしても相続に悩み、若くして手にしても時間に持て余します。クロノ・トリガーの「強くてニューゲーム」が全然面白くないように、人生において挑戦をなくしてしまうと消化試合のようになってしまうんですね。
金は全てではないが、全てのことに金がいる、とウシジマくんは言いましたが、彼もまた、Fuck you moneyを手にしても、命の危険を冒して新宿に戻り、宿敵の滑川、因縁の獅子谷をぶちのめしても、闇金をやめる事なく債務者に刺される最後を描いたのはなかなかリアリティがありますね。
読者からの批判もあったようですが、私は丑嶋が引退して沖縄あたりでのんびりと好きな時に新宿な戻り、柄崎、高田と適度な距離感で楽しく交流し、マサルと徐々に和解してハッピーエンドというような展開はあまりにもフェイクだと思います。
この観点で考えるなら、社畜と言えるサラリーマンですらある程度納得してやっているならその報酬の多寡はともかく、それなりの生活を送って行けるなら人生の満足度は決して低いわけでではないと思います。まあ、私はサラリーマンは嫌ですけどw
承認欲求の強い競争好きな人には近寄らないのが無難ですね。
そういった人達はこの世界のランダム性を正しく理解する知恵がなく、世界を単純化してやたらと物事を類型化したがります。
手段と 目的の違いを常に意識できるようにしたいものです。
承認欲求からほとんど解き放たれて、ポツンと一軒家みたいな山奥で一人暮らししてる人は、ある種の精神的エリートですね。ああ言うのを見ると、病気になったらどうする、とか言う意見も出ますが、なったらなったで死ぬだけ、くらいに悟ってるかもしれない。
ああいう生活できるのは生まれ持った才能でしょうね。
シンガポールも住みやすかったです。私はプール付きコンドミニアムが嫌でチャイナタウンの汚い一角でしたがw
日本だけかもしれませんが、他人に気を使わずに、ビジネスライクな空気がとても合ってました。タイは行ったことないのでわからないですが、確かにアングラな人たちの潜伏先となってるので、そうなのでしょう。
あと、橘怜氏の著書(特に貧乏はお金持ち)は私も好きですが、つまらない本もあるのですね。永遠の旅行者、逆に興味が湧いてきました。
>日本だけかもしれませんが、他人に気を使わずに、ビジネスライクな空気がとても合ってました。
外国人、ゲストとして過ごすなら、日本も同じことです。田舎はともかく、東京なら迷惑をかけられない限りは他人に関わりません。それが、住人としてその国に住むことになるなら気を使うことになります。
>あと、橘怜氏の著書(特に貧乏はお金持ち)は私も好きですが、つまらない本もあるのですね。
橘怜氏が単に考えを述べる評論本は面白いと思いますが、小説としてストーリーにすると、実在の人物に対する綿密な取材をして書き上げるスタイルではないのでまったくリアリティのないが、現実世界で起こる話なので読むのが苦痛になります。
プライベートバンカーの感想でもリアリティがある分、起承転結がない!っと文句を言う人もいるので現実離れした登場人物が現実世界で躍動するストーリーが好きな人もいると思いますし、それはそれで好みだと思います。
シン