常連読者さんに勧められた本を読みましたので、書評を書きます。
[amazonjs asin=”4781616550″ locale=”JP” title=”底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる”]文章
典型的な商業文で、良くも悪くもこなれていて読みやすいですが、味は全くありません。吉野家で牛丼を食べているような確実に想像していたものが出てきて、可もなく不可もなし、という感想を持ちました。ここで食べなくても、どこでも食べられる味です。
カワノアユミさんが商業誌のライターですし、丸山ゴンザレスさんが協力というか、彼、彼の部下が書いたのかもしれません。キャバ嬢が頭を捻りながら書いた拙くも凄みのある文章ではありません。荒いが、癖になるような文章うが好きな私としては自然と評価が下がります。
その分、癖が強くてスラスラ読めないと言うことはないので、流し読みでサクサク進んでいき、一時間ちょっとくらいで読み終わりました。そう言う意味では金子光晴と対極にある文章であり、辻政信はその中間です。キレイゴトを連ねて、着飾った文章ですね。
こういう文章なら、そのうちAIでも書けるようになるだろうなぁ、と思います。そうしたら、ライターなんて人たちは消えてしまうのかもしれません。やはり、作家の歓喜、嗜好、絶望、後悔、苦痛が文章から伝わらないような作品は価値がないと思います。
だったら、誤字脱字だらけの書いている人の人間味が伝わってくるぶっちゃけブログでも読んだいる方がマシであり、味のあるブログがいくらでもある中、素人に毛が生えたようなライターなんかの文章を読むのは時間の無駄かな?と思います。週刊誌記事みたいなものです。
内容
東南アジアの風俗を知らない人には面白いかもしれませんが、知っている人には当たり前過ぎるくらいの話で、まったく新鮮味はありません。ただ、数カ国に渡って実体験をまとめて書いたのは評価できますし、まったくの嘘を書いてません。他に書いた人もいないので貴重です。
ただ、素人にありがちな自分の都合の悪いことは一切書かないので、面白くないし、何の深みがなく、この辺は市橋達也氏の本と似ています。読んでいて心臓をえぐられるようなことはありませんし、衝撃を受けることもまったくありません。
やましいことは一切なかった。居候させてもらった駐在員ともセックスしなかった、とか、ことさら書いてしまうのは明らかな蛇足です。そのくせ、他人の不倫、枕営業は暴露して来るんだから、そりゃないっしょ?と言いたくなります。
カワノアユミさんは見ただけで、病んでそうな雰囲気です。高い確率で顔をいじってるだろうし、強烈な厚化粧に隠された汚らしい本音が隠れているだろうに、そこは一ミリも書かないのでもったいないなぁ、と思います。
前に化粧、パットの厚さは見栄の強さだ、と読者さんからコメントがあり、なるほどな、と思ったものですが、読みたいのはその薄汚い見栄であり、欲なんですよ。西村賢太さんが言うに、私小説は経験が最近過ぎると生々しくて書ききれず、しばらく寝かせる必要がある、と言うことですが、カワノさんにはもう少し時間がいるのかもしれません。
ともかく、内容そのものはさほど面白くありません。私は東南アジアの風俗でもっとエグい話、面白い話はいくらでも知っているし、本人達から話を聞いてます。多少の実体験とあります。ただ、それをわざわざ書いてもないから、そこで止まっているわけで、カワノさんは書いたから、そして、本人の経験したこと、という価値があると思います。
オススメ
Kindleで千円くらいなので、特に損したとは思いません。3/5くらいの評価で、東南アジアの風俗を知らないが、興味がある人には良いと思いますが、それ以上でもそれ以下でもなく、カワノアユミさんの他の作品を読もうとは思ってません。
[amazonjs asin=”4781616550″ locale=”JP” title=”底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる”]
金子光晴との共通点は、アジアを旅して色々書き留めた点だけですね、すみません。シンさんにとっては、面白くない本を薦めてしまいました。
私は、カワノさんの本を読んで、日本には無いこんな世界があるのかと新鮮で、面白いなと思っています。彼女の行動力も凄いと思います。一方で、シンさんは、カワノさんよりも経験豊かなためか、つまらない内容と感じています。
一般的に、やりたいことはやるべき、後悔がないよう経験するのが正しいこととされていますが、未経験のことを想像して期待している間の方が、実際に体験した後よりも、幸福度や満足度が高いのは、妙だなと思います。
井の中の蛙で、大海を夢想している人生は、端からみたら、一見侘しく思えますが、本人の心は大海に出た者より、ワクワクした状態に置かれているかも知れません。現代人は、宇宙での生活を夢想し、一生懸命ロケットを打ち上げたりして、まだ見ぬ世界にワクワクしていますが、未来人からみれば、たかが宇宙旅行なんて、新鮮でも何でもないと思うはずです。
つまり、願望や欲望は、叶うことより、叶う過程が楽しいのだと思うので、遠回りしてなかなか叶わないように仕向けると、幸福感をコントロールできると考えます。そのため、東南アジア面白そうと思っても、その想像力を楽しみたいので、なかなか旅行はせずに、東南アジアを夢想して楽しんでいます。
客観的には虚しく後ろ向きな遊びですが、とことん主観的になると、実際に旅行するより、満足するから不思議です。臆病者のやせ我慢かも知れませんが。
いえいえ、割と面白かったですよ。ただ、読み返すことはないし、ズッシリと来るものはありませんでした。
彼女の行動力は面白いですが、全てに関してやり切ってないんですよ。観光ビザの範囲内でチョロっと経験してサヨナラをくり返しているので、観光旅行の域を抜けておらず、そこで泥を啜ってません。パッケージツアーと大差ないように感じます。本音も書かない、恥は書かない、読者が本当に知りたいことも隠してしまう、と厚化粧の下が面白いはずなのになぁ、と思います。そこが書けるというなら、次作が読みたいです。
金子光晴は乞食、タカリ、押し売りを繰り返してパリまでたどり着き、帰国しているわけで、その恥を徹底的に書くからガツンと刺激されます。まず、妻を横恋慕されて、取り返し、間男から引き離すためにパリに向かう、というスタートがカワノアユミさんとは次元が違います。だらしなくキャバ嬢繰り返して、キャバ嬢の中でも底辺で海外に飛び出したなんて、よくいるキャリアのつまみ食いで派遣社員を繰り返してワーホリにいく女性、バックパッカーする女性と大差ありません。水商売であることが新鮮なくらいで、そうじゃなかったら価値はゼロですね。
シン
ここで教えてもらって、金子光晴氏の本を初めて読みましたが、言葉選びが詩的で、あまりに美しく、知性や気品に溢れており、恥を書き尽くしている印象よりも、情景描写の巧みさが印象深いです。繊細な人だと思いました。
>味のあるブログがいくらでもある中
→検索方法が下手なのか、感性が鈍いのか、定期訪問したくなるブログって、シンさんのところだけです。
確かに、カワノさんは本音や恥は書いていないので、明け透けに書けば、面白くなるのに、隠し事をしては勿体無いですね。恥ずかしいことをさらけ出すのは、抵抗はありますが快感でもあるので、自分も恥を晒しながら生きたいです。
金子光晴は詩人ですからね。言葉の選び方は非常に上手くて割とグロいこともサラッと書いているので読んでいて辛くなりません。
>検索方法が下手なのか、感性が鈍いのか、定期訪問したくなるブログって、シンさんのところだけです。
割とそう言われる読者さんがいて恐縮です。更新はないですが、T-Thaiみたいにブログの最高峰みたいな文章がタダで読めますし、コメントで触れられていたセミリタイア失敗ブログも面白いです。ただ、ダメ人間ブログはリタイアしてしまうとつまらなくなり、日々のストレスへの共感がなくなり、単なる余生を過ごす人の趣味の話なんかは極めてつまらないことが多いですね。
>恥ずかしいことをさらけ出すのは、抵抗はありますが快感でもあるので、自分も恥を晒しながら生きたいです。
よほど成果を出したのでもないなら、カッコつけた自分語りなんて誰も聞きたがらず、恥を晒した方が聞いてくれるものです。私も恥を恐れず、ぶっちゃけて行きます。
シン
ナマケモノさんのおっしゃること、よく分かります。
自分も、欲しいものをオークションで探したり、中古品店で探してる時が手に入れた時よりもワクワクするものです。
人は、未知のものに期待する傾向があると聞いたことがあります。既に名声を得た画家への賞賛よりも、これから取るだろう画家への期待の方が勝るように。
なので、人は将来をなかなか決めたがらないし、婚活でももっと良い人がいるのではないかと未来に求める傾向にあるのでしょう。
ぬるり的老後の記事のコメント欄に、T-Thaiのホームページのリンクを貼ってくださっていた方がいたので、読むことが出来ました。赤裸々に生き様を吐露されており、素晴らしいです。
人様の作品を読んで、文章で人の心を動かすことが、どれほど難しいことかと改めて感じます。
自分自身で体験する物事は、自分事なので、強烈に自身の心を動かしますし、何よりも興味深く、面白いです。
しかし、読み手にとっては他人事である、人様の小説やブログで、深く染み入り忘れられないような文章を読ませるのは、とても難しいことです。
私自身、今ではもう残念ながら、小説を面白いと、感じることが出来なくなってしまいました。
どんな文章であっても、自分が経験した訳ではないのだから、我が心ここにあらずという感じで退屈になり、途中で読むのを止めてしまいます。
日々、文章を書いていて、シンさんはこんな気持ちになることは、ありませんか?
出来ることなら、この憂うつから脱出し、再び本を読むことを、楽しみたいです。
>どんな文章であっても、自分が経験した訳ではないのだから、我が心ここにあらずという感じで退屈になり、途中で読むのを止めてしまいます。
私も同じことを思うので、自分で書いている、という側面はあります。小説を面白いと思うことはほとんどありません。例外的に私小説は面白いですが、これも赤裸々に自分の恥をさらけ出すから面白いですが、ファンタジーは数ページでやめてしまいます。ほとんどの漫画も面白くなく、歴史物でよく考察されているものくらいしか読みません。
他人の心を動かそうと思うなら、本当のことである必要があるな、と思っていて、色々と短編を書いたものの、自分自身が白けてしまい、出版せずに放置してます。次に書くなら自分をベースに書こうと思っています。
シン
ご自身をベースに書いた私小説、楽しみです。いつか、ぬるり基金で賞金を掛けて、読者から私小説を募り、私小説集として出版するのは、いかがでしょうか?
あまのじゃくですが、普段、積極的に自身を語ったり、表現するのを好まない人間の頭の中こそ、私小説にして、引っ張り出して、拝読したい願望に駆られます。
小説家の小説は世に溢れていますが、表現に縁の無い人の作品は、当然ですが世に出ません。
普段小説を書かない人たちの作品を集め、アウトサイダー私小説集をまとめたら、過去に例のない作品となるかと思います。
出版に興味を持ってくれる方が居ないこと、自分に嘘偽り無く、赤裸々に表現することの難しさなど、色々課題はありそうなんですが。ちなみに、ぬるり基金の原資貯金は、今のところ、まずまずの成績です。
面白いですね。ただ、出版のハードルは高いと思います。ともかく、長く続けることで見えてくるものがあると信じています。末永くよろしくお願いします。
シン
個人的には、日本人が外国で外国人向けにサービスをしている話に興味があります。
別記事にあるように、国外で日本人を相手にしてても、日本とあまり変わらないからです。
例として、澳門では大人の健康ランドが合法ですが、そこでは日本人、韓国人、ロシアが沢山働いています。
そこでは日本人が最高値ですが、その理由は半日教育を受けた中国人に人気だからだそうです。
無茶苦茶されそうで可哀想ですが、割が良いからやっているのか、あるいは借金なのか、気になります。
また、日本人は白人からも人気らしいので、ひょっとしたらオランダあたりで働いている日本人がいるかも知れません。
彼女らが国別の男を比較して書いたら、面白そうだと思いました。