そりゃ、常に増収増益できたら、それに越したことはないんですけど、そんなことは現実的ではなく、どちらかを優先させるというなら、売上なんだろうと思います。規模さえ大きくなれば、利益と言う果実はそのうち確保できますが、売上が少なくなれば確保が難しく成ります。とは言え、赤字を垂れ流しながら売上を膨れ上がらせても、あまりにも酷いと融資、出資が受けられなり、投資できなくなるので一定ラインで妥協してお金を回す為に赤字上場となるのでしょう。
売上
前時代ですら、競争の激しい業界で生き残れるのは二社までと言われていましたが、IT時代になり、勝者総取りの業界すらあります。検索はグーグル一強、SNSはフェイスブック一強、となっています。(日本ではLINEがシェアトップをとりましたが、世界的にはワッツアップ一強でフェイスブック傘下だし、インスタグラムもフェイスブック傘下です。)二強なのは携帯電話はアップル、サムソンの二強、パソコンOSはマイクロソフト、アップルの二強、携帯OSはアップル、グーグルという感じですね。
そうなってくると、いかに早く市場占拠してしまうのか?という時間勝負になり、素早く巨額投資を行って数年のうちに勝ち抜くことが至上命題になります。だから、売上絶対主義、市場シェア絶対主義で利益を無視したような戦略が選択されます。具体的には無料でサービス提供して、ある一定の時点で課金を始める、というパターンですが、無料時代は赤字の垂れ流しになります。
逆に言うと、増収が達成できなくなった時点で新興企業は終わりっていうことであり、規模が膨れ上がらなくなったら、そのまま壮絶に萎んでいって形が残らなくなります。フェイスブックに負けた、フレンドスター、マイスペースなんかは完全に消えましたね。日本のミクシはソシャゲ屋として事業転換しました。どんなプラットフォームは最低二位になれないなら負けってことです。
利益
利益って成長を諦めたら簡単に確保できます。将来への投資をやめて、最低限の固定費だけ払って過去の遺産を食い潰していれば、かなり高い利益率を確保できるでしょう。設備投資はしない、研究開発もしない、人も最低限しか雇わない、という方針なら利益は確保できて当然です。それすら出来なきゃ、即倒産です。
だから、急成長が期待できない国策企業は低いPERとなり、多少の増収増益が確保できれば御の字ですし、成長の期待できないセクターは低位株と呼ばれるような10以下のPERで放置された企業が溢れています。確かに安いけど、魅力は感じられないから利益はあっても買われない訳です。
もっと言うと、日本全体が成長しないと考えられているので、日本株全体が低位株みたいなものであり、世界的株高にようやく追随して上がってきたのは他に買える市場が見当たらなくなってきたのと、日本政府の買い支えがあるので、しばらくは大丈夫だろう、という消極的な理由です。
利益は出ていればいいっていう問題ではなく、出ているに越したことはないけど、出てなくとも将来性の方が重要視されます。だから、テスラがどれだけ目標未達、赤字の垂れ流しでも株価は高いところにあります。テスラがある時点を抜けたら、巨額の利益を生み出せる企業になる可能性を信じている人が買うからです。
投資
投資って定義が難しいですけど、企業活動の多くが投資といえば投資です。人を雇うのも投資だし、会社を買うのも投資だし、設備を買うのも投資、研究開発をするのも投資です。要はお金を調達、回し、戻ってきたお金を更にどこかに置いて更に回す、というサイクルのことでしょう。
お金が回りさえすれば、大胆なことが出来ます。一強状態のグーグル、フェイスブックは高利益率でお金が回るので、大胆な投資をしても、きちんと利益が残りますが、アマゾンは在庫を抱えるので利益率はそこまで高くならず、それでも大胆な投資をするのでPERはえぐいことになります。
ともかく、お金が回り続けるなら、どれだけ激しく投資しようが、利益が少なかろうが、問題ないんですが、株主はそれでは堪らないので、えげつないスピードで企業規模が成長しないと株主総会は大荒れになります。投資を制限しろという圧力に耐えられなくなります。ベゾス氏はそれをやり遂げたってことですね。
もはや、世界的投資家の孫氏も一度こけたら起き上がれないくらい激しく投資をしています。凡人の会計担当者が「ウチは自転車操業です、、、(泣)」と言ったのに対して「自転車操業は立ち止まらず、倒れないように、ひたすら激しくこぎ続けばいい。(笑)」と言い切ったらしいので、とんでもない胆力の持ち主だと思います。
孫氏の最も大きな成功はアリババ、馬雲氏を見出して、一介の英語教師で無名だった彼に数億円を放り込んだことです。ソフトバンクは未だにアリババ株30%を持っていて、アリババがガツガツ成長していくので、彼の信用を押し上げます。そして、一発屋で終わらず、何回も危険な勝負に勝ってきた稀代の勝負師なので、色んなところから資金が引っ張れるんですよね。
まとめ
世の中が何でも二極化してきて、メジャーでバカ勝ちする、ニッチ最強に成るのか?、完全に市場から消えるしか選択肢がなくなりつつあります。個人レベルでも同じで突き抜けて凄いか、需要過多のことを選ばないと、単純労働化して稼げなくなってしまいます。
なんか、大変な世の中になりましたね。
就職活動のときにあるメーカーがうちは親会社より利益を出しているからスゲーって自慢しまくる会社ありましたが、研究開発は改良以外はほとんどしないで設計、生産技術、試験評価のみでそれ以外の間接部門が最低限しかないなら利益はでるよねってこの記事を見て納得しました。
研究開発は親会社の仕事で分業する方針なんだろうなと思いますが、変化に弱く、主力製品が弱るとジリ貧になるのが目に見えますね。
生産子会社に徹するなら、利益は上げやすいですが、親会社次第で利益率、額は変わってしまうので主体性はない、と言えます。生産だけをやるならホンハイくらいにどでかくならないと発注先とまともに交渉出来ません。
シン
おもしろいです!!
漠然としていたことが、整理された気がします。
ところで、設備・株などの投資がPLに与える影響は思ったより少ないかもしれません。
それらはBSで現金(資産)を振り替えるだけなので、直接PLには反映しません。反映するとしたら、それらを買うために調達した借入金の利息、それらの減価償却費だけですね。もちろん、大幅な投資をしたら、その分減価償却費がでかくなるので、PLインパクトも大きいです。投資に伴う経費もあるでしょうし。
ヨーロッパなどの株主は、EBITやEBITDA(利息や減価償却費を抜いた利益)で会社を評価します。なので投資がやりやすいという側面もあるのでしょうね。
人を雇う、という投資はダイレクトにPLに影響します。研究開発については、状況によりますが資産として認められるものと、認められないものがあります。このあたりをうまく使えば、みてくれのいい財務諸表ができそうです。
会計とは仕訳であり、どこにつけるかで財務諸表の見え方が違います。基準も国によって違いますし、際どいものは専門家でも意見が分かれます。
IT時代になり、明らかに無形資産が大きくなり簿価の付け方、減損のタイミングが難しくなったように思います。数字だけで経営状態を判断しづらいですね。見せかけの数字を作ることはやり易くなったと思います。
シン
昔勤務していて、今でもそれなりに成長している大手製造業でよく言われていたことに、
「売り上げはすべてを癒す」(ダイエーみたいw)
「大きい市場は七難隠す」
「仕込みをケチれば上りは知れてる」
などがあります。
今思えば、売り上げ重視だし、投資をケチったりはしてないし、果敢に中国市場にも攻め込んでました。
経営者は創業者なんですが、実に偉大だったんだなあと思います。
辞めたのは惜しかったか。
ともかく、投資をケチらず、売上を伸ばすことが出来れば、後から利益は付いてくるし、途中で起こる障害はなんとなく解決しているということでしょう。それを突き通せるのは創業社長、ごく一部のスターサラリーマン社長なんでしょう。後は事なかれに徹してしまいますね。
シン