じゃあ、アナーキー

アナーキー、という言葉に魅せられる時があるんですが、それは狂気だからであり、明らかに狂った人が見せる世の中の一面の真実が抗い難い魅力があるからなんでしょう。

奥崎謙三、この男ほど、アナーキーという言葉が似合い、アナーキストという分類がフッションではない人もいないでしょう。

ゆきゆきて、神軍、を見てください。ネタバレになるので、楽しみたい人は見てから記事を読んでください。というか、私のどうでもいい記事を読むよりもドキュメンタリーを見たほうがいいです。

戦争

戦争って狂気なんです。平時では許されない殺人が肯定され、人権を無視した命令が飛びかう非常事態です。その時に経験した地獄を平和な時代に訴えかけたのが奥崎謙三さんです。彼が「神」と呼ぶ存在(それを彼自身が定義してないですが)国家を超越した力を与えられて、世の中に問う、ということらしいです。

奥崎さんはローアーミドル家庭に生まれ、第二次世界大戦に一兵卒として徴兵され、激戦だったニューギニアに派遣されます。日本軍お得意の兵站を無視した戦略、降伏を許さない玉砕主義の為に敵よりも、飢えを恐れた敗走を繰り返し覚悟を決めて降伏をします。そうすることで生き残って帰国します。

帰国後、彼は短期間工場勤務をした後、そこで出会った寮母、シズミさんと結婚して中古車販売店を営みます。その商売上のイザコザから相手を殺傷し、服役します。その時に自分がここに至ったのは「神」の意志に逆らって生きてきた罰によるものだと悟ったそうです。

元々、奥崎さんは尋常な人ではなく、戦場では上官を殴って食料を奪っていたとか、ありえないことを主張してますが、実際、ゆきゆきて、神軍で彼が詰め寄っている姿を見ると、自分の立場が上であれ、呆然として、何も行動に移せないのは不思議ではありません。

元々、常軌を逸した人が戦争によって更におかしくなっていき、戦争から帰っても、心の平穏を取り戻すことはなく、ふとしたきっかけで理性というタガが外れてしまうのを神の意志に背いた罰なのだ、と規定したんでしょうか?

行動

出所した奥崎さんは戦争の責任者は大元帥であった昭和天皇にあり、その責任を問うべきだ、と考え、天皇陛下をパチンコ玉で撃つ、という暴挙に出て一躍有名になります。戦争で亡くなった戦友が撃たせた、とのことですが、全く意味がわかりません。刑事告訴され裁判では裁判官を罵倒、唾を吐きかける、などの暴挙もあり実刑を食らって服役します。

それでも懲りない奥崎さんは天皇陛下のポルノビラを銀座で撒き散らしてからも実刑、次は標的を田中角栄氏に移して殺害予告をして逮捕、不起訴処分になる、という狂人中の狂人、完全に訳の分からない人になっていきます。

そして、始まるのがゆきゆきて、神軍の撮影です。結婚式の仲人で、新郎の反体制活動による服役を紹介、自分のメチャクチャな罪状を読み上げるシーンから始まり、度肝を抜かれるんですが、完全にイッチャッテル人なんだけど、ガツンと引き込まれるような何かがあります。怒鳴り散らしはせず、延々と訳の分からないことを言いながら、舐めた態度だと暴力になります。

テーマとしては終戦後に起きた兵士の病死、という処理に疑問を持ち、処刑が行われたことを突き止め、その処刑が食料にする為だったことまで白状させます。関係者はそれぞれが闇を抱え、いろんな言い訳をしながら本当のことを言おうとせず、それを奥崎さんは許さず、延々と追及、時に暴力で自白させます。

常に公安はつけてきているし、毎回のように通報されて県警も来るんですが、それでも慣れっこになっている奥崎さんには関係ないことで、自分で警察を呼ぶくらいのことを平気でします。アナーキー、国家の決めた法律なんて神兵である自分には関係ないってことらしいです。

最後は兵士二人に処刑命令を下し、自らとどめを刺した元連隊長を射殺する為に訪問して、たまたま応対した息子さんを射撃して逮捕、懲役、というエンディングを迎えるのが、凄まじいドキュメンタリーですよ。私はこれ以上のドキュメンタリーは見たことありません、

日本

前に憲法改正は中国が怖いわけはない、日本人が一つの方向に進んで、それが異論を許されない環境になってしまったら、どうにも止まらなくなり、自爆することになってしまう怖さがある為、改憲と言うスウィッチを押さなくていいなら、押したくない、という意見がありましたが、まさにそれを教えてもらいました。

奥崎さんに詰め寄られている人って、頭がおかしい人ではないです。でも、戦時中は頭おかしいことをしていました。明らかに負け戦でも降伏せず、身内をいたぶり、些細なことに因縁つけて部下を処刑、食人して命をつないでいたんです。それを戦争が終わってからも継続していたんだから異常です。

終戦直前の人間の精神が狂う極限状態になる前に奥崎さんは降伏しています。どっちが狂っていたんだ?という話ですよ。平時で奥崎さんに詰め寄られている人たちはそれっぽいこと言って言い訳しますし、それはそれで理屈の通ることを言いますけど、やっていたことはキチガイです。

これって、今の日本と似ているな、と思います。たまにこのブログに「日本から逃げたお前に何がわかる!」と言うようなコメントがつくんですが、そういう感情論で間違ったことでも突き進むのが日本人であり、別の選択をしたり、諦めることを強烈に非難して、自分を徹底的に正当化します。

挙句、ブラック企業に殺されるまで働いて、遺書に恨みつらみを残していく、とか万歳玉砕と変わらないですよ。ダメなら、素直に白旗上げて降伏すればいいんですよ。兵站も用意できないなら、それはすでに負けています。降伏したらいいです。それは敵前逃亡とは違います。それどこか、終戦しているのはわかっているのに降伏しないのが理解できません。

まとめ

ふとした機会に、「アナーキズムに共闘は存在しない」というフレーズを見つけました。少なくとも奥崎さんは徒党を組まず、自分の意志を貫いており、その意志を貫くためには犯罪すらいとわない、という強烈な意思を示しています。徒党を組む、右翼、左翼には興味が持てませんが、孤軍奮闘には引き込まれます。

奥崎謙三さんは狂っているんですけど、私を含めて、明らかに間違ったことを見ているだけの人が狂っていないのか?と問われると、他人に流されて、間違ったことを正当化している狂った人なのかもしれません。

日本人が恐ろしいです。私がおかしいのか、社畜の皆さんがおかしいのか、はわかりませんけど、多数決の結果、社畜仲間を文字通り、食い物にしてでも、そのブラック企業にしがみついているような人たちは恐ろしいです。

私がルールを無視して決められた賃金を払わないブラック企業勤務なら、上官殴って食料を奪いますし、良い頃合い見て投降しますね。そういう決断をした奥崎さんは狂っていたんでしょうか?

19+

投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

「じゃあ、アナーキー」への3件のフィードバック

  1. シンさんらしい記事で、この雰囲気の小説が読んでみたいなと思いました。狂人って、真理ではなく相対的に決まるものなので、多数決で負けたら狂人なのではないでしょうか?
    ドキュメンタリー見てみたいですが、メンタルを揺さぶられて、平凡な生活に支障が出そうなので、まだポチッと出来ていませんw

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    1. 狂っている、ということは相対的なことで、絶対的なことではありませんね。国家、法、という標準を逸脱すると狂っていると言われますが、そこに絶対的な価値はなく、曖昧なものです。

      このテーマで小説を書きたいと思ってます。キツイテーマなのでいつになるか?はわかりません。私も見てから数日は寝つきが悪くなりましたよw 覚悟して見てください。

      シン

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  2. 尊師は徒党を組んだからダメですね。
    数百年後には逆転してるかもしれませんが。

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