じゃあ、数学科

高校生から記事リクエストがあり、学部批評をします。今後の進路に影響するかもしれませんし、責任は重大です。今回のテーマは「数学科」です。

数学

昔の感覚のままでいる人、高校生の親世代の人は「数学科=就職できない」というイメージを持っているかもしれません。数学は理論系専攻の王様みたいなものであり、実学からはかなり乖離しているように見受けられるからです。仮にほとんどの人が理解できない高等数学がわかっても、具体的に何でお金になるのかは想像しづらいです。

また、抜群に数学が出来る人は変人が多く、数学者の変態伝説を聞いたりすると、一般社会でやっていけない社会落伍者の集まりであるかのようなイメージがつくのだと思います。実際、数学者には変わった人が多いです。天才の呼び声高い数学者、京大の望月新一さんも、かなり変わった人だと聞いて事があります。

でも、数学ってほとんどの学問の基礎であり、哲学者のライプニッツが数学者でもあるように、数学が全然出来ないと、ほとんどの理系専攻は卒業することすら難しく、最低でも高校生レベルの数ⅢCくらいは終えていないと、工学系講義はちんぷんかんぷんで、中退が頭をよぎると思います。

IT

昔のイメージで数学科を語る人って、IT革命後の社会変化について、あまり意識していないのではないか?、と思います。コンピューターサイエンスは数学から派生したものであり、コンピューターサイエンスの基礎研究は純粋数学研究に近いようなことをやっています。

流行のオペレーションズリサーチだとか、アルゴリズムなんかも高等数学を基礎としているので、最先端のITを研究する「システムエンジニア」は数学が理系の中でも圧倒的に得意でないと、この分野で生き残っていくのは難しいです。

文系SEみたいな末端のプログラマーなら、高等数学は必要ありませんが、基礎のないところに家を建てているようなものなので、少し話が込み入ってくると、ちんぷんかんぷんになるでしょう。与えられたコンピューター言語を決められたとおりにコーディングしていくくらいしか出来ないだろうと思います。

理系は修士にいくことも一般化しているし、大きく有利にならないにしろ、進むことで不利にはならないので、学部が数学科でも、修士でほぼ確実に就職できるコンピューターサイエンスに進むことも出来ますし、純粋理論系をきわめて、アカポス取れなきゃ、野垂れ死に覚悟をして突き進む必要もありません。

最近、データマイニング、データサイエンティスト、と呼ばれる、人の頭では処理できない量の「ビッグデータ」を処理する人たちがいますが、この人たちも多くが数学を得意とする理学系の人たちです。前にこのブログで、文系でもデータサイエンティストが出来る、と嘯いた人がいましたが、勃興期の徒花みたいな存在だろうと思います。文系なのにサイエンティストを名乗るなんて、おこがましいにもほどがありますw

金融

日本では金融業は文系中心だと思われているのですが、前にも書きましたが、ゴールドマンサックス、NY本社従業員の1/3がエンジニアであり、更に増え続けているそうなので、時期に事務員を抜いた従業員の半分をエンジニアが占めるようになるのかもしれません。

で、エンジニアは金融業で何をしているの?って話なんですが、まず第一に膨大な量の数字を処理するので、システムを組んで、メンテナンスをしているエンジニア達がいます。オンラインバンキング、ATMなど、窓口なく、銀行、証券会社で取引を出来るようになったので、その処理、バグを取る人が膨大に必要になったからです。

次に金融商品って、文系には理解できないくらい複雑になってきたのですが、デリバティブなんて、ぱっと見ただけではその内容を把握できる人はいないし、そのリスク、リターンをきちんと計算できる文系出身の営業はまずいないだろうと思います。金融営業に勧めて来る商品について執拗に突っ込んでみたら、しどろもどろになるでしょう。

その金融商品開発をやっているのが理論系数学をやってきたクオンツ、と呼ばれる人たちで、多くが博士号を持っています。元々、金融工学は冷戦が終わって、核開発の仕事が少なくなった物理学者が金融業界に流れた、と聞いたことがありますが、そのぐらいデリバティブの組成は難しいです。

数学科で抜群に成績を収めたら、引き抜かれるかもしれません。実際、世界中のトップスクールで理系最優秀層をインターンシップに誘う欧米系外銀は多く、見込みある、と思ったら、入社を誘われます。数学力だけでなく、メンタル、お金への執着も持っているなら、そっちの業界に行くといいと思います。

まとめ

強いて、数学科に進まなくても、まずは情報系に進んで、どうしても純粋数学をやりたいなら、修士から数学科に進めばいいので、強い思いがないなら、学部から進むことはないだろうと思います。でも、リカバリーできるので、少なくとも今は数学が一番したいなら、進んでもいいのではないか?、と思います。

ノーベル経済学賞受賞者の大半が実質的には数学者であるように、理系に限らず、理論研究の多くが数学を基礎とするので、若い頃に数学に打ち込むのは悪くないと思います。ちなみにシンガポールの官僚候補生は数理経済学を学ぶのが流行で、現首相の息子もこのルートを取っています。

更に言うなら、最低でも旧帝に入れないなら、数学科はやめておくのが無難だと思います。他の科目は全然ダメだけど、数学だけは図抜けているケースもあるかもしれませんが、旧帝にすら入れない人が数学に限らず、理論系専攻を選ぶこと自体がリスキーです。才能の世界なので、才能がない人には苦痛でしかありません。

学部批評は読者さんのコメントがかなり参考になると思うので、人生の先輩にあたる読者さんはリクエストをくれた高校生にアドバイスをあげてください。本人、親、教員がブランド、偏差値、自分の立場なんかに気を取られて、客観的に考えられなくなることが多いので、何の利害関係もない人からの意見は貴重です。

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投稿者: シン

思いついたことを記事にして、コメントをもらって、議論するのが楽しくてブログをやっています。

“じゃあ、数学科” への 20 件のフィードバック

  1. よく、数学科や数理学科なんか出ても教師くらいしか仕事ないぜとか言われます。
    そこで、今回は少し前向きな話をします。
    理系に進学したが実験や実習みたいな手を使うことが苦手やセンスがないという人ならいいかもしれません。少なくとも工学系なら実験科目は避けられないですし、就職してからCADで図面描く、工場の生産現場でいろいろ作業があるような仕事があります。情報系でも電電に近いなら実験あります。
    実際に機械に興味がない、実験が嫌いでメーカーに入ると苦痛だし、部署を追い出されます。
    私の経験も含めてですが、手先も人間関係も超絶不器用なら返って数学科は楽しめると思いますしいいと思います。
    実験や実習がない数少ない理系学科だと思います。講義は難しいと思いますが中二病全開の用語が出てきたり、わからないことがロマンです。受験数学みたいなパズルというより物事の本質を考察するような哲学みたいな話だったり、統計解析で数学的に世の中の動向を予測したりという内容で個人的には今の仕事に役にたってます。
    なんでもそうですが、就職先の良さだけで工学部を選んで興味がなくて嫌になり中退するくらいなら好きな学問やるべかです。

    私とその周りの就職先の話ですが、ほとんど成行きですが、旅行会社等でで動向調査や市役所で統計やったり、金融関係で高付加価値の仕事をしています。

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    1. ニコさんへ
       ニコさんにこういうことを言うのは、心苦しいのですが、同じ理論でも、数学科に行くよりは、物理学科の方が私は、いいのではないかな?と思います。
       「じゃぁ、機械、電気電子学科」でYさんが物理学科の魅力を述べられていました。
      「機械、熱力学、電磁気、電子回路といった両者の基礎を幅広く学ぶことが出来るので、どちらの進路にも可能性を残しておくことが出来ます。さらに統計学、プログラミングも学習するので、マーケティング、SE、組み込み設計などへの進路もあります。」(Yさん、申し訳ないのですが、勝手にコメント拝借しました)
       数学科に行くよりは、私自身は、物理学科に進むほうが遥かに道が開けるような気がします。そこら辺、どうお考えでしょうか?

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      1. へろさん
        工学部や他の理論系専攻にいけるならそちらのほうにいくのがいいと思います。
        ただし、実験や手を動かすことや製図が苦手な人、興味がない人が理系や技術者としてやっていくのはなかなか大変です。
        消極的な理由ですがそれなら数学科に行くのもありかなという考えです。

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        1. ニコさんへ
          返信どうもありがとうございます。
          たしかに私の視点からは、実験や手を動かすのが苦手、製図が嫌い、興味ないという事が抜け落ちて居ました。

          アメリカの方では、STEM(科学・技術・工学・数学)の方はかなり重要視されていて、数学科を出ても職はありそうな感じがします。しかし、日本はなぁ・・・・私自身は、教師しかイメージが沸かなかったんですよね。(でも、教員って過酷すぎるイメージしか沸かない)
           色々と話をしてくださってどうもありがとうございます。

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  2. 自分の駅弁大工学部では、
    工学系の教授の出身大学院は、旧帝大以上でないところがが3割くらいです。
    ちなみに、これは大学院の話なので、学部の大学が旧帝大以上でない人も含めると、もう少し増えて4割くらいはいると思います。
    しかし、数学や物理の理論系の教授になると、旧帝大というより東大と京大が6割くらいで、最低でもマーチレベルの私大です。
    よく研究者や大学教授になるには、旧帝大以上に入らないといけないといいますが、分野によりますし、分野によっては旧帝大でも東大京大以外だと、難しかったりします。

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  3. ほとんどの高校生は、理系の学科についての知識が不足しているので、
    数学が好きだから数学科、という進路にしがちですが、工学部でも数学は嫌というほどやります。
    ただ、工学部は解ければいいというスタンスの数学なので、問題を解くのが好きな人にはいいと思いますが、
    証明をしっかり理解したい方は独学で補う必要があります。
    純粋数学なら数学科以外ありませんが、
    物理などに応用する物理数学なら工学部の機械系や電気系です。
    例えば、高校の内容でいえば、微分積分ベクトル、行列、複素数など数3あたりの内容が9割くらいです。
    論理回路などの情報系数学なら情報系です。
    論理回路は、1+1=1になる世界で、高校までの数学とかなり違うので、慣れるのに時間がかかります。

    まとめると、やりたい数学の分野によっては工学部も検討してみたらいいと思います。
    工学部なら、専門職として民間就職しやすく、教授にも比較的なりやすいです。
    純粋数学がやりたいか、数学教師になりたいなら、数学科にいくべきです。

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    1. ranさん
      個人的には、実験や実習が生理的に嫌でなければ工学部にいけばよく、そうでなければ情報処理系や数学科を検討すればいいと思います。
      数学科で教師になりたい人以外で進学した目的を聞くと入りやすいことや理系なのに実験や実習がない、実験科目が苦手だったとかいう理由です。
      あとは、変な人です。

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  4. 医学部は一応理系ですが、入ってからは四則演算で全て事足ります。そのかわり気が狂うほど暗記しますので、実質文系?って感じもしますね。

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    1. 医学部入学以降には、数学を使用しないのですかね。では、何故、医学部の入試には数学が出てくるのでしょうかね?

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      1. 長門様
        ①高い年収が保障されている医師になるための医学部は人気が高く、競争率が上がります。数学は地頭の差が出やすい科目です。そこで数学を試験に組み込んでおくと、適度な難易度であれば総合点にばらつきが出てふるいにかけやすいからではないでしょうか?
        ②医学部では暗記することは多いようですが、薬の効能を判定するp値などを計算する際に高度な統計学を適用する必要があります。その基礎として数学が必要です。
        ③問診と表面的な所見、触診から想定される疾患を分類する→基礎的な検査結果をする→基礎的な検査結果と総合し、可能性の低い疾患は除外→確定診断として有効な検査を瞬時に洗い出す→確定診断結果と問診、所見、触診などに矛盾はないか検証する
        こうした思考に確率などで使用する場合分けの概念、整合性の検証に代数学の概念などが関連してくるかもしれません。

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        1. Yさんのおっしゃる通りふるいにかけること、理系の素養としての数学の基礎学力を保証すること、ですかね。

          高校数学で習う演繹的考え方や帰納的考え方、対偶などの論理の概念も入学後に役立ってくると思います。文系で数学を避けてしまうと、この辺りが大人になっても怪しい人が多いのではないでしょうか。

          今後コンピュータがさらに発達してより医療に食い込んでくるようになると、医師も専門課程で情報科学分野を学習することが重要になってくるのではと予想していますが、そうすると基礎的な数学の重要性がさらに増すと思います。

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          1. お医者様って大学受験では相当な切れ味の頭の持ち主だったはずなのに,
            6年間の医学教育によって,頭脳があり得ないレベルで劣化してしまっている人もいますよね.
            なんというか,今の暗記に偏った医学教育は,いろいろと問題なのではないかと思います.
            Garfieldさんがおっしゃるように,医師の専門課程に,情報科学,統計学等は組み込まれてしかるべきです.

            AIを用いて,画像から病気を診断する技術などが開発され,医者の仕事がなくなるとの意見までありますが,
            それはないにせよ,これからのお医者様には,専門家として,数理系の知識には,ある程度慣れ親しんで欲しいものです.

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  5. 数学科の就職についてもう少しコメントします。
    金融商品の開発、保険数理や官公庁で年金等の運用、オペレーションズリサーチのコンサルタントをしたければ抜群の数学的なセンスと上記のブログの通りに旧帝大や早稲田、慶応の数学科くらいに入らないと厳しいです。
    では、中堅くらいだと仕事がないのかというと情報処理関係かデータマイニングの仕事かな?と思います。
    データマイニング関係の仕事なら例えば、優秀な人なら製薬会社のMRで薬の統計解析のアナリスト、多いのは、公務員で統計の数字を扱う業務を行うこと、金融機関やサービス業の情報処理業務、メーカーなら品質管理や知財アナリストが挙げられます。
    ただし、純粋数学というより統計や会計知識や情報処理と組合せた道具的な応用数学の分野を扱うことになります。頭を使うというより見せ方に使います。

    ただし、なかなか狙ってなれるものではないのかなとも思います。金融機関でも表にはない求人であり、メーカーなら理系は技術者を欲しがりますからね。

    また、教師になりたいなら教育学部数学科でいいのではないか?と思います。

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  6. 数学がそのまま役立つことはないかもしれません。しかし数学を習得することを通じて、難解なことを粘り強く論理的に考える力や体系的に場合分けして様々なパターンを推測する力には汎用性があります。営業に進んでも通常の文系の営業マンとは一線を画すことが出来るでしょう。

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  7. どんな学部学科でも共通のことですが,大学でどのようなことを学ぶか初歩の初歩でいいので理解してから進学すべきですね.
    特に数学科の数学と高校数学は,レベルというよりは,最早やる内容が違いますから.
    高校の数学が好き・得意というのであれば,物理学科,工学部機電情のほうが性に合うかもしれませんしね.

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  8. 高校の時の同級生で毎回数学が学年1位の人(男性)がいましたが、彼は某旧帝大医学部に行きました。そんなに数学ができるならば数学科は考えないの?と聞いたら、大学入試までの数学ならばできるが自分の頭では大学の数学は無理、という返事が返ってきました。

    他の例では、大学のテストで理Ⅲ生でも数学に苦労していました。実感として受験数学は入学という観点でのただの必要条件です。数学オリンピックで金賞を受賞するなどの客観的な実績がない限り、純粋な数学科に行くのはお勧めしません。東大の数学科には受賞したような人間がやってきますが、自分の才能に限界を感じる人がそれなりにいるようです。

    数学に興味があれば、工学部に進むのが良いのではと思います。今高校生ならば数ⅢCまでさっさとやって、大学数学の入門書を実際に読んで問題を解けばよいのではと思います(簡単なところだとマセマとか)。それで理解に問題がなければさらに先に進めて、その上で数学科進学を再考すれば良いと思います。

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  9. 数学が直接役に立たなくても、数学によって身についた論理的思考力は役に立つから、数学は役に立つ、という理屈には、少し疑問があります。
    数学は、論理的思考力をつけるのに役に立つところもありますが、それ以上に論理的思考力とはあまり関係ない数学的知識だけの分野も多いです。
    論理的思考力を身につけるだけなら、証明や確率くらいで十分で、なんなら数学以外でも、議論やディベートなどの頭を使う訓練をしていれば、身につくと思います。
    論理的思考力を身につけるためだけに、数学を勉強するのは、体力をつけたいためだけに野球をするようなものだと思います。
    野球をやれば、体力はつきますが、それ以外の技術的な練習に、時間や労力を使わなければならないので、効率はよくない気がします。
    自分は、むしろ、数学は論理的思考力を身につけるというのは二次的なメリットで、1番のメリットは直接役に立つからだと思います。
    ある大学の調査で、有名私立大文系で受験科目に数学を選択した人はそうでない人より、新卒で大企業正社員になる割合が高く、役職についている割合も高く、結果的に年収が50万円高いです。
    理系専門職とは全く関係ない文系でも、数学知識は統計・経済・金融などに役に立つので、その差だと思います。

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    1. ranさん
      私が思うことですが、高度な学問をやるには数学で身に付ける思考力は大切だと思います。
      例えば、法律を使う仕事や勉強であるなら論理学のような考え方や証明をやるような思考がどうしても必要です。そもそも法律は対立する利害関係の調整です。

      余談ですが、昔、文系進学向けに数学を教えていた時期がありましたが私が話したわけではありませんが、授業を理解した上でシンさんがおっしゃるように文系なんかに進学しても意味がないから理系に行くか資格が取れる学科や文理融合の情報学科を目指してました。または数学なければ受験が楽で講義は閑古鳥でした。看護学科で割りきって数学を勉強する人しか残らなかったです。

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  10. 先日受けた退職給付金のセミナーの講師が2人とも数学科出身でした。
    退職給付金を計算してくれる保険会社などには、入りやすいのかもしれませんね。そこまで高度な数学知識が必要とも思えませんが(むしろ会計の知識の方がよっぽど使える)。

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    1. 退職給付金説明なら、会計に詳しい方が保険数理に詳しいよりいいでしょうね。聞いている方も計算方法を聞いても、ほとんどの人はわからないでしょう。

      シン

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