IT革命は産業革命と同じくらい、それ以上のインパクトを人類に与えると言われ、着実に我々の生活を変えていますが、きちんと比較してみたいと思います。
産業革命
産業革命はイギリスから始まり、イギリスを大英帝国へと導き、今尚、大英帝国の後継国家であるアメリカによって、その血脈が受け継がれています。それが世界語としての英語の立場だし、国際法の基本となる英米法だったり、国際基準であるわけです。イギリスで産業革命が起こっていなければ、今の世界の勢力図はまったく違うものになっていたのかもしれません。
それでは産業革命とはなんなの?、という問いですが、シンプルに言って、「工業化」であり、手工業でバラバラに生産していたものを工場を建て、設備投資をして、量産体制にしたことにあります。量産体制に持っていくことで、モノの値段は一気に落ちていき、手工業で作られたものを駆逐していくことになり、ここで資本主義が体系化します。
産業革命以前の資本主義は土地をベースとした地主、労働者でしかなく、時の権力者時の結びついて、土地の権益を確保したり、農業の仕方を工夫して収穫の効率化を図った農民が工夫を怠った農民から土地を取り上げ、既得権益化していっただけで、商店も小規模でシステム化されてない原始的なやり方をしていたにすぎません。それは世界中で似たようなものであり、日本も例外ではなく、開国するまでは土地をベースにした経済が成り立っていたわけです。
工場は農業ほど土地がいらないですが、面積に対しての労働者は多く必要ですから、土地を持たぬ農民、長子相続から漏れた次男以下は新田を苦労して耕すより、工場に勤めて食い扶持を確保しようとします。その労働に対する報酬はモノでなく、金なので、ここで金の流通が促進されます。出資者は儲けに応じて、出資比率分の見返りを得て、その懐はどんどん潤います。そして、新しい工場が設立され、経済がどんどん回ります。もちろん、それに伴い商店も大規模化、国策商店が登場しだします。
経済活動がある一点になると、イギリス国内でモノ、金が余ってくるようになると、それが海外に溢れて出ていくことになり、産業革命の拡大へと続きます。イギリスにならって、産業革命は欧州各国に波及し、欧州は富に溢れるようになります。その溢れる富は軍事力へと向かい、海軍の発展、未開地の富を求めて大航海時代へと突き進みます。それが帝国主義です。
まずは新しい国を見つけ、武力による開国させ、産業革命で溢れたモノを流入させ、中毒化させ、その土地にある富を奪い、本国に持ち帰る、という手法です。徐々にその国の主権を骨抜きにしたら、次は植民地化で、付加価値の低い第一次産業に現地人を奴隷として使いやらせて、本国で付加価値の高い加工を行い、それを売りつけるやり方で、未だにアフリカは植民地時代の影響を引きずっています。
IT革命
モノが行き渡り、貧しい国が減ってくると、モノを売りつけて、富を奪う、というやり方は通じなくなってくるので、情報、サービスのプラットフォームを一手に抑えてしまうことで、富を握るやり方が主流になってくるのは特に不思議なことではなく、大量生産によって価格が下がり、設備の向上で質の平均が上がってくると、完全に過当競争になり、巨大工場しか採算が合わなくなります。
これを具体化したのがアップル、フォスコンの関係で、アップルがアメリカの会社で、アメリカ人を雇い、アメリカで製造しても、それが素晴らしく良いものでも、価格が高すぎて一般消費者には売れないので、プラットフォームとしてのデバイス(iPhone)、ネットワーク(iTunes)しか作らず、実際のモノは中国で中国人を使い、巨大工場で製造することで、利益率を確保し、市場を独占しようとするわけです。
アップルよりさらに後発であるGoogleはOSを無料提供し、デバイスメーカーに競合させ、iPhoneに対抗できる携帯電話を他社に作らせ、自社のネットワーク(Google play )でテラ銭を取ることに集中しているわけです。デバイスを製造する方がリスクが高いのはサムソンを見ればわかりますが、ソフトなら、アップデートで対処できますが、ハードなら回収の必要が出てきますので、トラブルを起こした時の被害は甚大になります。
これは携帯電話に限ったことではなく、どの業界でも同じようにIT革命は侵食していて、簡単に参入を許しているのか、徐々に参入を許しているのか、だけの違いであり、関係ない業界などありません。だから、どんな企業、どんな人も時代の流れであるITとうまく付き合わないと生き残れない、と言えるでしょう。
日本
日本企業が今までやってきたことは工業化の効率化であり、アメリカのフォードが編み出した自動車生産システムを日本のトヨタが昇華させ、トヨタ生産方式でフォードを超えていったように、既成概念を壊すような発想で戦ってきたわけではなく、今あるものをより良くすることで戦ってきて、コスパで圧倒してきた、と言えるでしょうが、ITではそれは難しいだろうと思います。
ITの傾向として、勝者総取りなので、できるだけ早い時期に手をつけ、他を駆逐し、覇者になってしまう必要があり、決断の遅い会社には勝機がないからです。日本企業を知る外国人に聞くと、ほぼ誰もが口にするのは決断が遅すぎることです。これはウォーターホール型の組織をしているため、決裁権を持つ人間が前線に出てこず、下っ端が上に決済を仰ぐ間に手遅れとなります。
ITが普及してから、大きく伸びた企業は日本に限らず、ほとんどオーナー企業、カリスマサラリーマン社長が率いる会社で、お役所になってしまった会社は伸び悩むどころか、経営危機に陥っています。IT時代にタラタラ迷っていたら、美味しいところは全部持っていかれるわけで、いいと判断したら、即決するしか勝機はありません。
例外的に人の生命に関わる産業だけは変化が遅く、自動車、航空、食品、など、安全性が完全に確保できないと、動くことができないので、ゆっくりと変わっていきます。アップル、グーグルも自動車車体開発は諦めていますし、テスラも問題だらけで、普及には相当の時間がかかるでしょう。自動車がEV、IoTと時代の最先端を行っても、車体自体は旧来のメーカーが担当するんだと思います。
その意味では三菱が旅客機に手を出したのは正解だと言えるのではないでしょうか? ボーイング、エアバスの二強に割って入るのは難しいですが、日本が生き残れる産業だし、旅客機需要は増えることが確実だからです。どこでもドアが出来れば話は別ですが、現段階の技術では航空機が長距離移動にもっとも適しており、人の流れはどんどん増え続けるのが確実だからです。
まず、日本はIT革命の浸食が遅い業界に絞って取捨選択して、限られた資源の集中を行い、すでに競争力のない企業は潰す、縮小させることがスタートで、次にサービスでお金を稼ぐ方法を考えるべきです。手っ取り早いのは観光にもっと力を入れたら、外貨がガンガン落ちてくれます。埋もれた観光資源はそこら中にあり、日本人だけでなく、外国人にもお金を使わせればいいんです。
必ずしも、ハイテクでなくとも、サービスで稼ぐ方法はあるので、ローテクで産業を興すのもきちんと考える必要があります。アニメの聖地として秋葉原をもっとPRしてもいいし、名古屋のコスプレ祭りなんかは面白いアイディアです。侍フェス、忍者競技なんかもいいかもしれません。もの余りの時代にものを売るのでなく、経験を売ることを考えないと、お金になりません。
まとめ
さて、あなたはどうやってITと向き合っていきますか?、私もずっと考えているし、皆さんも考えているんだろう、と思います。闇雲に得意でないことをやろうとしても、中途半端に終わり、いい結果になるとは思えません。ITだから、コンピューターサイエンスやるぜ!、オペレーションズリサーチするぜ!、とか言っても、ほとんどの人は高等数学が理解できず、挫折します。
そうじゃないんです。自分の出来ることの中で、ITとうまく噛み合うことを捜して、それでメシを食う、組織を離れても、売る技術を身につける、強い個の力を持って立ち向かわないと、情報の波に飲み込まれて、溺れ死にます。知らなければいいことも、どんどん入ってきますから、メンタルを鍛えないと、ITとは付き合えないのです。
機電という解は当てはまる分野が多いですが、そうじゃなきゃダメだということもないし、なんなら大学なんか行かなくても、メシを食う手段はあります。どローテクなんかはITに駆逐されないので、一点もののアクセなんかでも、それをやり込んで、セルフブランディング出来れば、ブランドというサービスを売ることで飯の種になりえます。何をするにも、自分の頭で考えて、うまくITを使えば、社畜やるだけが能ではないと思いますよ。
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簿記と財務を勉強して、中堅の会計事務所入り会計士を目指すのか それとも社会人入学で夜間の機電に入り転職するのだったらどちらが期待値が高いと思いますか?
後者です。無資格の中途が会計事務所に潜り込むのも困難だし、資格が取れるかもわからない、取れても見合う待遇が得られるかもわかりませんが、機電なら、学位さえ取ればそれなりにのところに就職できることはほぼ保証されています。
シン