弱電シリーズを連載したいと思います。第二弾は台湾、ホンハイに買われたシャープにします。
創業
早川徳次さんが約100年前にシャープの前身となる早川金属工業研究所を創業したことから、この企業はスタートします。この人は道徳の教科書に出てきてもおかしくないくらい苦労して育ち、成功を収めた歴史上の偉人です。
最も有名かつ、会社の看板なのはシャープペンで、これは徳次さんが発明したアイディア商品で、シャープという会社がシャープペンを作らず、外資になってしまい、名前がホンハイジャパンに変わったとしても、名前だけは残るかもしれません。
この早川徳次さんは不屈の精神を体現したような人で、不遇の少年時代を過ごした後、丁稚奉公を始め、頭角を現して独立、一度は成功を収めるものの、関東大震災により全てを失い東京から大阪に移動してやり直し、また成功しました。
意識高い系はアメリカ人のジョブズさんなんかを崇拝する前に同じ日本人の早川徳次さんから学んだらどうだろうか?、と思いますよ。まぁ、台湾企業に買われた会社の創業者なんてダサくて、尊敬できないんでしょうけどw
中興
佐伯旭さんが二代目社長なのですが、この人の経歴も数奇に満ちており、あまり生い立ちを語りたがらなかったようですが、満州で孤児になっていたところを拾われて、早川徳次さんの家で下男をしていたようです。
早川徳次さん自身が正規教育を受けていないため、佐伯旭さんも義務教育しか受けず、シャープの前身で働くようになります。寝るまも惜しんで勉強するとともに、人望もあったようで、男子のなかった早川徳次さんから後継者を受けるような形で29歳で取締役になり、実権を握ります。
この後、佐伯旭さんが町工場から、大企業へと躍進させ、日本を代表するような技術を育て、日本の高度経済成長を支えた大経営者になりました。今となっては非難される韓国への技術支援を行った、佐々木正さんがシャープ技術者として有名です。
この人は本流へ繋ぐ中継ぎ登板ではなく、主流になり、早川家から主導権を奪うことになります。経営陣を自分の姻戚で固め、早川家の婿養子、孫も要職にはつけませんでした。辻さん、町田さん、という薄い親戚を雇われ社長のような形で代表者にして、死ぬまでオーナーとしての実権を握りました。
没落
片山幹雄さん、シャープ元社長、この人はシャープを経営危機に陥らせ、責任を取って辞めざるをえなくなり、日本電産に引き取られました。名物経営者、永守さんの下で、もう一花咲かすか、惨めに捨てられるか?、今後が注目される人です。
元々、片山さんのお父さんが佐伯旭さんとかなり親しい関係にあったようで、将来の社長を密約されるような形で入社します。そうでなければ、彼は東大工学部を出ているので、当時、新興企業が大きくなった程度のシャープなんかに入るわけがありません。
実際、片山さんは若干40歳で部長になって、技術から離れて、経営者として順調に階段を登り、50前に社長になっているので、入社当初から特別扱いで、佐伯旭さんの寵愛を受け、育ってきたのだと想像します。技術にあまり興味がなく、経営者に憧れていたので、その可能性が高い、コネ入社を選んだんでしょう。
念願のトップになった片山さんは常に二流のイメージがつきまとったシャープを一流にしようと、当時勢いのあった液晶パネルに大型投資をし、一時は亀山モデル、と持て囃され、一流企業と見做されるほどに成長します。
後は皆さんご存知の展開で、液晶パネルの売り手市場で傲慢な態度を取り、顧客離れを誘発し、家電、パソコン、スマホの価格崩壊が始まると、大型投資が裏目に出て、どうすることもできない経営状態になります。
簡単に片山さんを責めることは出来ず、他の弱電も同じように虫の息ですし、シャープは価格崩壊が激しい液晶パネルに集中投資していた為、破綻が早かっただけで、「じゃあ、どうすりゃよかった?」と聞かれても、iPhone並みのブランド商品を作る以外にできることはありません。
まとめ
私が見るに、シャープには二つの問題があり、佐伯旭さんの権力が強すぎて、特定の人たちだけで、経営を固めすぎたこと、技術の会社なのに、文系志向の人が力を持ちすぎたことです。
技術的にシャープらしさがあるなら、規模を小さくしても、そう簡単には外資に買われることはなかったでしょう。プラズマクラスター、とかいう名ばかり商品でなく、本物の技術がなければ、メーカーとして生き残れません。
液晶パネルって、もはや、単なる設備産業で、どれだけの大型投資をして、どれだけ早く回収出来るか?、のチキンレースみたいなものです。もっとも、汎用性弱電部品はどれも同じなので、特殊な部品を開発しないと、とても生き残ることはできません。
東芝の分社化が取りざたされていますが、彼等は技術的に難しいフラッシュメモリというドル箱があり、そこだけが魅力なので、そこを売ってお金にする、ということですが、逆に言うと、そこを売ったら、汎用部品しかありませんのて、終わりでもあります。
東芝、ソニー、パナソニック、富士通、どれもが技術の会社なのに、文系出身でほとんど技術がわからない人が大きな権力を持ち、長期政権になり、身内で脇を固め、社内政治に明け暮れる。その間に技術が衰え、しばらくすると没落してくる、という流れはまったく同じです。
外資も同じで、Appleが急降下したのはApple初のMBA取得者CEO、スカリーさんが実権を握り、技術的なことを無視して、ブランドイメージだけで売ろうとしたからです。彼はコカコーラのマーケティングをしていたので、それと同じことをして、失敗しました。
ソニーのように、もはや技術が事業の根幹でないなら、文系経営者でもいいでしょうが、技術が衰えたら、生き残れない業界で、技術をほとんど知らない人がトップになれば、その会社は徐々に衰えていきます。
ごく当たり前なんですが、どんなビジネスでも、根幹となる部分があり、それを疎かにして、現場経験のない人間がいるトップになり、小手先の経営をするようになると、的外れなことばかりして、何かのきっかけで、転がり落ちるように経営危機になる、と言うことでしょう。
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私の会社では、最近事務系社員の採用がめっきり減りました。
エリートや弁理士資格以外の調達などは、関係会社や技術系派遣社員よりヒエラルキーは下のような感覚です。
技術系社員はいろいろ優遇しますが、事務系は閑職人事もありますので恐い会社だなと思いますが本来あるべき姿なんですよね。
社内に報告書を回覧した際、高校で習う理科用語がわからないとか言ってる社員はいらないですからね。
本来、メーカーに必要な事務系社員は会計くらいで、あとは技術系社員で回せますからね。
シン
看護師、設計、プラントエンジニアリングなど本当に必要なところに人が足りなくてどうでもいいところにスキルのない人たちが沢山ぶら下がってるんですよ。銀行の番号発券機の横に立ってる人とかどう見てもいらないだろって思います。
メーカーに限らず、どうでもいい事務作業にスキルのない人たちがぶら下がって、スキルのある人たちが面倒を見てる構造をそろそろ抜本的に変えなくてはいけないと思います。
日本が復活するには構造改革が必要で、精神論でなく、必要な場所に必要な人を供給できる枠組みを形成できないと、ほぼすべての会社が弱電のような悲惨なことになるでしょう。これは人口オーナスになった国、すべてに言えることだと思います。
シン
数理的能力の獲得が出来ないのならば、ホワイトカラーに無理にしがみつこうとせずに、潔く身体を使って働こうっていう気持ちの方が社会にとっても本人にとっても良いのではと思います。別にホワイトカラーとかブルーカラーの仕事の中身には序列はありません。ホワイトカラーがスタイリッシュに見えるのも世間の勝手なイメージです。スマートな身なりで、汚いことを沢山をやっている人が沢山いるのだなということを社会に出てから沢山見てきました。そういうことこそ大人がきちんと子供達に教えないといけないのだと思います。
現場の最前線で働いた経験もありますが、身体を使って仕事をした後の疲れはある種の爽快感を伴っていました。オフィスの机でコーヒー飲みながらグダグダノートPCとにらめっこしているよりもよっぽど気持ちいいです。
私立文系学部の勃興で、過度なホワイトカラー信仰が生まれたのは是正しないといけないですね。
そうですね。でも、現場仕事も単純なものがなくなり、生産技術的、職人的技能がないと、ロボットに置き換わり、文系のできることではなくなりつつあります。エリート層は官僚、コンサルなどの頭脳労働も出来ますが、それは数が限られているので、普通の文系に何をしてもらったらいいのかわかりません。
シン
シンさんのおっしゃる通りですね。1990年代後半からIT革命で文系の人の仕事が無くなっていったんですが、2000年代はコンプライアンス、コーポレートガバナンスを言葉だけを欧米から、ちゃっかり持ち出して、それを日本でも整備することで、半ば無理やり仕事を作り出して、しのいでいたんですが、さすがにそれも限界ですしね。四半期決算の導入で会計業務がほんの少し忙しくなった程度ですし。(四半期決算で短期的な数字が強く要求されたせいで、技術部の立場だと長期的なスパンでの開発がやりにくくなってしまいました。)
今は会社のスローガンの募集とかホームページのデザイン案とか意味のないことを企画して、その会議に技術者も引きずり出されて本当に迷惑してます。会議にしても事前にたたき台も作らない、アジェンダも設定しない。とりあえず招集して、さてどうしますかという無駄の多い会議進行です。その会議のしわ寄せで技術者は深夜残業です。スキルのないことは仕方ないです。でも自分たちの存在意義を無理やり作り出すために稼ぎ頭の技術者の足を引っ張らないでくれと強く願っている今日この頃です。
そうした無駄なことをする半面で技術者の上司と部下の間の人間関係のケアや戦略的な人材配置については全く手を付けません。技術者の深夜残業も見て見ぬふりです。本来はそうしたことの改善が管理部(主に文系)の人達の仕事のはずなのですが・・・。技術部の上司の逆鱗に触れるようなことにはノータッチ。とにかく保身、保身、保身です。
そうした人達には今後団塊の世代が高齢者、後期高齢者に突入していく中で介護の需要だけは絶対にあるので、そちらの方にキャリアチェンジをしてもらうことは出来ないでしょうか?団塊の世代はお金を沢山持っているので、高付加価値の介護施設に入居してもらうことで介護職員の給与upを図れないでしょうか?やはり考えが甘いでしょうか。
Yさん、
私の会社では、いらない事務系社員や官僚が出向という形で子会社や協力会社に流れています。
技術系の会社なので親会社から押し付けられる理不尽の調整や親会社とのパイプや技術教育をしっかりしてほしいのに保身で逃げ切る人ばかり来るので最悪ですね。最近やっと親会社から現役出向で技術者の人がトップに変わりましたので待遇改善やあまりにもひどい事務系社員の粛清をしましたがなかなか根が深い問題です。
メーカー文系って、元々日本企業では数が多すぎ、IT化が進んだことで、完全に持て余しています。だから、あれこれ意味の分からないことを言いながら、仕事のための仕事を増やして、身の保身を図るのでしょう。国益を損なうので、介護てもした貰ったいいと思います。でも、この国は危機的状況になるか、外圧がかからないと、動きません。
シン
ニコさん
正直に言って親会社からの出向者は子会社を一時的な腰掛程度にしか考えていないので、適当にお茶を濁す人がほとんどですよ。トップとして出向して経営責任まで王ぐらいじゃないと無理だと思うんです。
シンさん
弱電シリーズで記事をお願いします。
今は倒産しましたが、三洋電機の記事をお願いします。
地震保険に入ってなかったり、ずさんな経営の会社だったと伺ってます。
でも、失敗から学ぶには面白い教材だと思います。
また、リチウムイオン電池の素晴らしい技術のある会社でもありました。私の会社にも元三洋電機の社員が多数在籍しており彼らはとても優秀です。
考えておきます。
シン
ホンハイがシャープを買収するメリットはなんでしょうか?
不良債権をわざわざ抱えるようなものだと思います。
シャープの優秀な技術者だけヘッドハントすればいい気がします。
ブランド名は大きいです。ホンハイと比べれば、シャープの名前は知れ渡っており、一般消費財において、知っている名前かどうかは売上に直結します。また、すでにディスプレイ工場を合弁して、買い取っているので、半分買う、全部買う、なら、全部買ったほうがいいでしょう?中途半端に他社に半分買われると、思い通りに出来ません。
シン