いつものようにソフトバンクの話でもしましょう。今回はArmについてです。
流れ
元々、Armはアップルからのスピンオフ会社で、設計を生業とし特許収入で事業を成り立たせています。つまり、ソフトの会社であり、ハードの会社を援助する地味な存在であり、その圧倒的な実力にも関わらず、業界以外では知られていませんでした。
その実力を評価していた孫正義氏はずっと前から欲しがっており、ようやく手にした宝物だ、と言っています。だから、買値は日本企業の買収額では歴史に残る巨額なものになり、高掴みだ、と散々言われました。Armは上場していたので、市場価格に50%近くのプレミアムをつけて約3兆円買ったんです。
それにしても、売上が2000億円に満たない程度の会社が時価総額2兆円の市場評価を受けていたわけですから、まさにイギリスの至宝と呼ばれるのは当たり前と言えば、当たり前ですし、Armの売却はイギリス国内でも非難の声が上がりました。
イギリスの産業は過去の遺産を使った金融サービスに偏り、技術を誇る企業はほとんどなくなってしまったので、Armが外資に下ることを嫌がる人が多くいましたし、わけのわからないアジア人、孫正義氏に札束で頬を叩かれて売ったというイメージになりました。
事業
Armは半導体ファブレスですが、自社ブランドで半導体販売をしていない、と言うのが、売上がイマイチ伸びて来ない原因で、これは元がアップルの一部だった為、設計から抜け出すことができず、その技術に見合った報酬を受け取れていないようです。
例えば、スマホのCPUもArmの特許なしには成立しないそうなので、スマホの市場規模からすると、売上2000億円以下っていうのはやっすいなぁ、と思います。孫正義氏はこの現状を割安と見たのだろうと想像します。彼は携帯電話のマーケティングを自らやっていたくらいなので、なんで、Armはこんなに安いの?と思ったんでしょうね。
そして、日本企業が脱落してしまったものの、世界の半導体生産個数は右肩上がりに伸びて、Armがそこに欠かせない技術を持っているなら、自分の傘下企業、パートナー企業とのシナジーで爆発的に飛躍できると確信したんでしょう。だから、リスクをとったんですね。
転換
さて、今後のArmはどんな展開になっていくのでしょうか?孫正義氏もスマホでの飛躍には期待してないと思います。スマホの普及しきって伸び代が少なくなり、買い替えサイクルも長くなりつつあるので、今までほどの爆発力は期待できません。もはや、生活必需品の成熟産業ですね。
また、業界の慣習としてArmは特許収入しか取らないのだから、それを変えるのはアップル、サムソンという巨人に噛み付くことになり、喧嘩になってしまいます。せいぜい、格安の特許料を上げることは可能だと思いますが、良い顔はされないでしょう。
だから、IoTに使われるであろうデファクトスタンダードチップの開発をしたいのでしょう。その上でファンドリーにArm製として作らせて、Armで販売すれば、爆発的な伸び方をするのは間違いないです。
孫正義氏はArmにはその力があり、盟友、ホンハイ、ゴー氏に製造してもらえるだけのコネがあり、使用先は通信会社、自動運転、ロボットなど、IoT関連企業を傘下に持っている、と考えているので、その筋道は見えた、と考えているのでしょう。
仮にArmがNVIDIA規模に成長すれば、時価総額は15兆円、買値の5倍くらいまでなりますので、大勝利を収めることができるだけでなく、次世代のデファクトスタンダードを握ることになるので、世界有数の支配力を持つ会社になります。孫正義氏曰く、Armはグーグル以上になり得る、とのことです。
まとめ
先頃、Arm中国の過半数株式を中国政府御用達のファンドに格安でありましたが、今までは小規模だったので放置されてきましたが、大手と同様にみかじめ料を払って中国市場で生き残る、という意思表示であり、製造に転換していくには中国政府と上手くやるしかない、と言うことなのでしょう。
電子機器製造で、シャオミ、ファーウェイという中国国産メーカーの影響力が強まっているだけでなく、ホンハイの主力も中国にあり、代替え地としてインド、ブラジルが急激に進んでいるわけでもないので、やはり中国政府とは仲良くするのがセオリーなんでしょう。
アメリカ、中国の二大強国に挟まれて、上手く世渡りするには両方にみかじめ料を払いつつ、良いところどりをして、締め出されないようにしなければなりませんね。ArmがNvidia と並ぶ規模になりたいなら、避けては通らない道です。
こんばんわ。
ぬるりさん不定期更新にしたんですね。
投資や海外の事そしてソフトバンクの面白い話など聞けたのでいつしかここを覗きに来るのが
日課になっていました。
これからも応援してますね!
少し忙しいのでボチボチになりますが、気長にお願いします。
シン
更新復帰され、嬉しいです。プライベートの友人同様に、ブログ読者のことも、大切にされていることが伝わります。
Armは、汎用性高く、消費電力少ないCPU設計をしているそうで、IoTや車載需要と非常に相性が良さそうですね。3兆円は、決して高掴みではないと言いたくなるのも頷けます。
アメリカ・中国へのみかじめ料の話も、日本の半導体衰退の話も、技術力の問題ではなく、組織や政治、立ち回りの問題ですね。孫さんは、このあたり、日本人離れした巧さがあるから、シンさんもソフトバンクの未来に期待しているのかなぁと、連載を通じて段々わかってきた気がします。
ブログ読者も友人ですし、ある意味でここまでの本音を吐き出せる友人は滅多にいるものでもありません。毎日更新できないにしても、きちんと連絡くらいはしますよ。
さて、Armが製造に手を出すには品質管理、製造技術という分野に十分に人材がいないんだと思います。そうでないと、ファンドリーに指示ができません。そこで赤字を垂れ流してでも、高給で良い人材を掻き集めてファンドリーを制御できる体制にしたいのでしょう。
ファブレスのアップルの品質管理、生産技術は良い人材が確保できているから自社ブランドの確立ができている、ということでしょうね。
半導体分野は技術よりも、政治的立ち回り、選択と集中が要求されている部分があり、それが出来ずに日本企業は競争力を失いました。上手くいっている中韓台勢は優秀なトップダウンなので、ソフトバンクにはチャンスがあると思います。シャープの復活を見ると、舵取りの問題では?と言いたくなりますね。
シン
今年の3月に NVIDIA と Arm が提携しましたね。
NVIDIA のディープラーニングアクセラレータは機械学習を高速で行うアーキテクチャですが、
提携によって Arm のハード設計に含められるようになり、現在このアーキテクチャを制御するソフトを研究開発しているベンダーは、
スムーズに Arm の IoT チップで動作させることができるようになります。
Arm の汎用 CPU だけで機械学習するのは速度の面で難しいですが、この組み合わせによって小型・省電力の1チップによる機械学習ができるようになります。
孫正義氏は自動運転技術だけにとどまらず、あらゆるデバイスで機械学習による推論が行われる時代が来ることを予想しているのではないでしょうか。
そうなった場合、とんでもない数の IoT チップが世界中に出回ることになります。
ソフトバンクグループによって、また一つ IT 企業が繋がったと言えると思います。
そのニュースは知りませんでした。ソフトバンクがつないだ縁が大きなシナジーになると素晴らしいです。ソフトバンクファミリーで一面では競合、他の一面では協業というパターンは多いので、ライバル、好敵手として緩い提携をしていけると面白いと思います。
シン