米系はすぐに解雇になるからなぁ、とは言いますけど、解雇のパターンもいくつかあります。
業績
テスラが従業員の9%をレイオフすることに決めたそうです。これは試算表を見ると、このまま放置しておくと、年末にはキャッシュが切れそうなので、固定費を削ることにした、ということになります。
このパターンだと、本人の能力、評価はあまり関係なく、決められた予算分の頭数を機械的に決めていくわけで、給料が高く、優先順位の低い人からサヨナラ、ということになります。もちろん、政治力がモノをいうこともありますが、それは最後です。
良くも悪くも日本企業は業績が悪くても解雇をしない、出来ないので、業績不振による従業員解雇、というパターンは本当に危機的状況に思えますが、米系では割とよくあることで、テスラが倒産の危機、というほどのことではありません。
逆に言うと、業績が良くなって来たら、レイオフした人を呼び戻すこともあるので、そこはお互いにビジネスであって、個人的、感情的な恨み辛みは無しにしましょう、というドライな関係が徹底されているんですよね。
プロジェクト
自分が参加しているプロジェクトの破綻も解雇対象になります。大企業は社内に無数のプロジェクトがあり、決められた期間に決められたマイルストーンに到達しないなら解散、ということになります。
成功しているプロジェクトばかりが取り上げられますが、あのグーグルですら大失敗に終わったプロジェクトの方が多いです。ポケモンGOのナンヤンテックも、打ち切り寸前になり、プロダクトマネージャーだったハンケ氏が継続の為にスピンオフした、という案件です。
元々、ハンケ氏はバイアウトで自分の会社をグーグルに売って入社しているので、ファッキューマネーを持ってますし、サラリーマンに未練などなく、行きがかり上、グーグルでサラリーマンをやってみただけで、良いキリなので次の目標に向かって動いた、ということです。
こういうパターンだと、スピンオフにそのまま付いていく、他のプロジェクトに移る、半ば解雇気味に転職を余儀なくされる、ということになります。能力が認められていれば、社内外から声をかけられますし、なければ、途方に暮れて残務処理をしながら転職先を探し回ることになります。
能力不足
意外ですが、バンバン解雇をする米系って、選考がメチャ厳しいので、日本企業みたいにパチこきまくって入社するのはほとんど無理です。特にエンジニアは何回もテクニカルインタビューがあり、技術課題を与えられるので、それを通過できないからです。
それでも、採用してからマネージャーが欲しい能力とのミスマッチなり、根本的な能力不足はあるわけで、そうなれば、試用期間中に解雇、という流れになります。そうなると、契約に従って僅かな補償をもらって転職先を探すことになります。
他にはコスパが悪い、というパターンもあり、報酬に対して成果、能力が低いから解雇にもなり得ます。日本企業みたいに5年後に戦力になってくれればいいから、今は全力で勉強してくれ、という暖かい指導はなく、その場で使えなければ、アウトになります。
まとめ
米系の報酬は高いですが、その分だけシビアで、いつ解雇を食らってもおかしくないし、解雇は日常の風景であり、それほどシリアスな話ではありません。青天の霹靂というようなことではなく、誰にとってもあることだし、ジョブズ氏みたいに創業者なのに解雇を食らう人すらいますしね。
いつも言いますが、この方式だと焼畑農業になりがちなので、長い目で研究開発はしづらく、アメリカでは化学、製薬なんかはさほど育ってません。老舗企業が合併で巨大になり、コストメリットを出してますが、勢いはないと言って良いのかもしれません。
それに対して、ドイツ、欧州系のように比較的緩やかな労働環境の企業が長い時間を必要とする業者では優位に立ってますね。その意味では日本は欧州企業をお手本に労働環境を整えるべきで、速さが勝負のハイテク企業を日本で量産しようとしても無理だろうなぁ、と思います。
勉強になりました。
少なくともアメリカ型の労働環境は日本人には合わないなと思いますね。
実施したらやる気を失ってしまう人がたくさん出てしまいます。
以外なのは、化学や製薬は弱いということです。
>以外なのは、化学や製薬は弱いということです。
弱くはないですが、他の産業と比べると見劣りしますね。化学、製薬も最先端研究は強いですしね。
シン
すぐ解雇になるって、アメリカでも大企業の管理職以上に限った話ではないですか?
アメリカ人は日本人よりワークライフバランスを重視する人が多そうですし、労働組合も盛んです。
マイノリティを解雇したら不当差別として訴訟などもありそうです。
>すぐ解雇になるって、アメリカでも大企業の管理職以上に限った話ではないですか?
アメリカではどんな規模、どんな立場、契約であれ解雇になりますよ。少し違うのはユニオンワーカーと呼ばれる労働組合員は指名解雇ではなく、雇用者が組合幹部に通達してルールに従って解雇していくのに対し、ホワイトカラーは指名解雇です。事務員なんかは元々時給制のパート契約なので「契約解除します」で終わりです。
>マイノリティを解雇したら不当差別として訴訟などもありそうです。
そうならないようにガチガチに契約を結んで、解雇のルールを決めてます。
シン
確かに日本の労働環境はクソかも知れませんが、こうしてみるとアメリカの労働環境も厳しいですね。
特にアメリカの平凡な中高年男性なんか、日本のおじさん以上に悲惨な境遇ではないでしょうか。
悲惨さのタイプが違うだけで、日米は働きやすい環境ではないと思います。
シン
欧州資本の国内企業ではありますが、売上が半減したからエンジニアも半減させた会社がありました。
実際には買い叩かれて半額にしただけなので、エンジニアの負荷が2倍になり、エンジニアの自主退社が進みました。
これがもし米国資本だったら…あまり変わらないかも知れませんね。
レイオフは慎重にやらないと、自主退社が増えて回らなくなります。
欧州系でもアメリカンスタイルの会社はあります。特に米系出身の雇われ社長だと、欧州系でもアメリカスタイルを貫きます。オーナー系は割と粘り強く、少々のことではレイオフしません。
レイオフって、社内の士気が一気に落ちるので、よほど上手くやらないと組織崩壊しかねません。このまま放置して確実に衰退するよりはレイオフして復活の可能性に賭ける、という感じになりますね。
テスラのレイオフもかなり物議を醸していて、現場のワーカーもストックオプションの対象なので、組合に入っておらず、指名解雇を食らったようです。マスク氏は左翼かぶれのワーカーがサボりまくり、周りに悪影響を与えた、膿を出す、と強弁してますが、やはり大規模レイオフはキツイダメージになる、ということなんでしょう。
シン
同じ業界の求人は早い者勝ちなので、出来る人から凄まじいスピードで消えていくのは、日系にはなかなか見られない事象だと思います。
社員を裏切ると、社員からも裏切られるという事ですね。
確かに外資で社員を裏切ると凄まじい勢いで有能な人から消えますね。日本企業だとブラック企業ですら割と有能な人がいますから驚きです。
シン
アムジェン、ギリアド、ジェネンテックなどなど、製薬は強いところが多いので、やはり引合いにだすなら素材メーカーだと思います。ダウデュポン3Mぐらいですよね。
そうですね。長い目で基礎研究することで成果を出すのは素材だと思います。製薬も一気に走り切る要素があります。
シン
製薬の方が開発期間は長いですが、素材の方が不確定性が高いのでより粘り強さが求められるかと思います。
確かにそうかもしれません。ギャンブル性の強い事業はアメリカ人は得意ですが、コツコツとやり続けることが苦手なので、素材なんかはさほど支配的ではないのかもしれませんね。
シン