シンガポールの銀行について記事にします。
地場
シンガポールには地場銀行がPSOB, DBS, UOB, OCBCと4行あります。そのうち、前二つ、後ろ二つが提携しているので、同系列ですし、POSBは日本とゆうちょ銀行みたいな存在なので、集約されきっている、と言っていいです。全てにおいて効率重視の国なので、乱立することはありません。
ちなみにPSOBは支店、ATM数が多くて便利ですが、支店が常にごった返していて、見た瞬間に入りたくなくなります。日本と同様に過去の経緯からお年寄りが口座を持っていることが多いので、些細なことで窓口に行きたがる、と言うのもあるでしょう。
ITに関しては一昔前は日本の方が使いやすいプラットフォームのオンラインサービスでしたが、今ではシンガポールの方が圧倒的に上になったと思います。日本がモタモタしているうちに抜かれた、と感じます。
シンガポールの銀行員が日本の銀行員がやるようなドブ板営業しているのを一度も見たことありませんし、無駄なことは一切していないのだと思います。日本の銀行員はほぼ全ての人がフロント業務を経験しますが、シンガポールの銀行員はフロント業務を絞り込んでいます。
支店は主に住宅ローンの貸し出しをしていますが、これはHDBと呼ばれる公団住宅とセットになるので、ルーチン化しています。シンガポールの中小、零細企業は銀行融資でなく、出資者から融資を受けることが多いので、融資業務も少ないのでしょう。
外資
邦銀を含めて、外資銀行のほとんどがシンガポール拠点を持っていますが、邦銀の存在感はほとんどありません。日本企業以外で邦銀を相手にしている企業はほとんどないと思います。
私はシンガポール人、外国人で邦銀勤めの人にも会ったことがありません。出張所みたいな小さな拠点があるだけで、人員も欧米銀と比べて少ない為だと思います。日本企業向けの投資銀行業務だけをやっているのでしょう。
米系のCiti、英系のHSBC, Standard Chartered は支店もありますし、リテール営業もしているので、存在感もあります。特にクレジットカードは地場銀行発行のクレジットカードは人気があります。
邦銀は存在感がないし、人気もなく、入りたがっている人に会ったこともありません。欧米銀に入りたがっている人は多くいます。報酬が高いですし、イメージもいいです。特に金融はアングロサクソン発祥ですしね。
スタイル
シンガポールは金融ハブとして、シンガポールを経由して、東南アジアに投資してもらう、と考えていて、香港をモデルにしています。香港-中国のモデルを踏襲する、と言うことです。
どんなことをするのも、パイオニアになるのはリスクが高いので、他国がやったことで、成功したことをコピーして、出来るだけ良質なコピー、出来るなら、オリジナルを越えることを狙うわけです。
その上で、IT革命によるリモートワークを利用して、バックオフィスの一元化を狙い、欧米銀が持っているアジア拠点のバックオフィスをシンガポールに集約しようとしているのです。
その煽りをもろに受けたのが東京で、欧米銀は撤退、縮小、バックオフィスはシンガポールに移して行きましたので、日本の雇用は奪われました。まぁ、東京に置いておく意味がなくなったので、仕方ありません。
まとめ
つらつらとシンガポールの銀行事情を書きました。日本人銀行員は留学、ポスト割り振り、みたいな形で来ている駐在員がメインで、国際バンカーという感じではなく、シティーで、日本の銀行員スタイルをしているので、目立ちます。
欧米銀の日本人クオンツ、トレーダーはシンガポールに来ているので、たまに会うことがあります。トップスクールの理系、叩き上げトレーダーのどちらかです。邦銀銀行員と違って、ファンキーな感じの人が多いです。
日本人富裕層向けに怪しいことしているジャパンデスクは日本で修羅場を潜り抜けてきた歴戦の勇士、あとは銀行員と言っていいのかわかりませんが、日本人向けにジャパンデスクをしている少し英語を話すだけの素人で、ごく簡単な金融知識もなく、働いている現地採用がいます。
昨年シンガポール在住日本人の間でかなり話題になった小説「プライベートバンカー」は、かなりの部分は実話と思われ、また富裕層日本人顧客を担当するジャパンデスクの様子が実名または容易に類推できる形で登場しています。中には私も会ってお話したことがある人の名前も出てきて、ここまで書かれて困る人もいるだろうなと思いながらも面白くて一気に読みました。著者があの読売巨人軍のGMとして渡辺会長にけんかを仕掛けて首になった清武さんならではのジャーナリストとしての取材力は相当なものだと思いました。Amazonで彼の他の本もすぐに買ってしまいました。
個人的にはローカルのDBS/POSBと米系のCitiを使っています。DBS/POSBは街中にATMも多くデビッドカード(NETS)が必要なことも多いので有用ですし、Citiはクレジットカードでの買い物でマイレージがすごい勢いで溜まって行きます。Citiはグループ銀行である日本のSMBC信託銀行(旧シティバンク)との間で無料で双方向の資金移動ができるので、例えば日本からシンガポールの円口座に送金してそれを運用して、それを日本の口座に戻すことも可能です。
金融資産は日本円、シンガポールドル、 米ドルなどに分散して持っていますが、年齢とともに長期保有している株・投資信託やFXなどの比率は徐々に下げて、リスクの少ない預貯金へ移行させつつあります。まぁ、FXは全くの遊び感覚で日々の楽しみ程度には続けようと思っていますが。
あの小説は話題になりましたね。ほぼ特定可能な書き方して、良く出版できたものだと思いますよ。一昔前の富裕層向けのジャパンデスクを勤めた人はひと財産使って逃げ切っているので、スルーできたのでしょうか?世界的にタックスヘイブンに対する規制が強まり、日本の相続税法がどんどん変わる今ではシンガポールに逃げ込む富裕層はどんどん減って、商売上がったり、だと思います。
私もシティーマイレージを持っています。入会時に執拗に何枚もカードを申しかまされて、迷惑したこと以外は使いやすいと思います。
シティーグループの日本撤退は日本の衰退を改めて感じました。もう、日本に拠点を置く時代ではないってことです。一時代が終わったのでしょう。
シン
私も同感です
どこに投稿しようか迷ったのですが、ここにて失礼します。
シンガポールドルが101円になってしまい、かなり円の価値が下がってきています。
3年前には80円だったので、ここまで円の価値が下がってしまいちょっとショックです。
シンガポールドルが、というか、シンガポールドルは通貨バスケット制なので、米ドルなどの主要通貨に連動しています。米ドルがここまで上がると、シンガポールドルも自動的に上がります。
もはや、シンガポールは日本より圧倒的に高い国です。特に不動産は狂い上げですよ。逆に日本行きを楽しみにしているシンガポール人は多いので、円安を楽しんでもらいましょう。もはや、観光で外貨を得ないとやっていけません。
シン
勉強になります。
所用で先月シンガポールに短期滞在しまして、UOBで円からSGDに両替した時に、帰ってくる金額が少なく驚きましたのでコメントしました。
チャンギ空港のJewelの凄さや、深夜でも人が絶えず活気があることなど見ると、もう経済成長に舵を切り、ドンドン日本が追い抜かれているのだな。と悲しくなりました。日本のガラガラ空港とは全然違います。
ただ、日本も外国人観光客を受け入れる方針に変わり、ドンドン無意味な規制が解除されてますよね。外人にいっぱい来てもらって、経済を回してもらいたいものです。
円安傾向は今後も続くと思うので、ドルで給与もらいたいと思いました。
>円安傾向は今後も続くと思うので、ドルで給与もらいたいと思いました。
これって、経済不安定な国にありがちな考えなんですよね。多くの日本人が自国通貨の安定性、価値を信用できなくなって外貨建ての収入、資産を欲しがるようになると、本格的に日本の衰退が始まります。売りが止まらなくなってしまいます。ヘッジファンドよりも、保守的な日本人富裕層の意識変化の方が怖いです。
かく言う私も外貨建てにどんどん振り分けているので人のことは言えませんが、、、。
シン
私はぬるり的階級で分類するとローアミドルとミドルの中間に位置していると認識していますが、このような大衆レベルの私でさえ、円をそのまま預金すること(=消極的なポジションを取る)をリスクだと思っています。
シンさんが仰るように、保守的な日本人富裕層の意識変化は怖いですね。インフレで円建ての資産が目減りしていくし、増税・値上がりラッシュが続いている今、どっかのタイミングで円を大量に売られると、最早打つ手はなくなるのではないか?と思っています。
自衛するには知るしかなく、知るために勉強の毎日です。日本は暮らしやすい、ご飯が美味しい、良い国だ。と思っていましたが、短期とは言え、外国から見た日本を見ると、衰退していっているのだな。と認識させられました。
自分の少ない資産をどう保全し、家族につなげていくか考えていきたいと思います。
シンガポールに長年住んでいて、以前は時々日本の円口座から送金/現金持込でシンガポールドルに両替して生活費の足しにしていたのですが、この円安では両替する気もおきなくて、日本のインフレが進行する前にと思い一時帰国時にはシンガポールのクレジットカードではなく少々贅沢に円口座のカードを使っています。
シンガポールや欧米の先進国に比べると日本は買い物、ホテル、東京中心部以外の住宅などは確安です。20年位前にマレーシアとかタイの物価の安い国で日本よりも楽に暮らせるといって長期滞在ブームがありましたが、残念ながら今は日本がその対象国になりつつあります。
将来、老後を日本で過ごすとした場合は、シンガポールの資産を都度円に両替しながら暮らせば、年金が破綻してもハイパーインフレがおきても問題なく生活できそうです。
日本はリタイア向けの国で、働く国ではない、となりつつありますね。
これほど安く、インフラが整い、安全な国は他にないでしょうが、これほど非効率で、余暇を楽しみづらく、閉塞的な国も他にないです。若者には申し訳なさすら感じます。
シン
> 若者には申し訳なさすら感じます。
まったく同じことを思います。
10年位前に、シンガポールの建国の父である故リークヮンユー氏が『もし私が英語を話せる日本の若者なら、国外移住の道を選ぶだろう』と語ったことを、日本の政治家・企業経営者達はどう思っていたのでしょう。
既に世界に飛び立った若者・起業家も出てきていますが、多くは古くさい解雇規制、賃金制度などのせいで企業の新陳代謝ができなくて、中高年になるとその制度にしがみついてみんなでゆでガエルになっていることに気が付きません。
最近、古い友人の招待もありスウェーデン・ノルウェーなど北欧、チェコ・オーストリアなど中欧、そしてイタリアからギリシャ往復の一週間のクルーズなど6週間の旅行をしてきましたが、それぞれに深い文化の蓄積を感じました。各国政府は政治面・財政面では決して世界をリードできるとは思えませんが、そこに暮らしている人々は精神的にとても豊かな生活をしていることを身近に感じた旅でした。シンガポールはとてもそのような国作りはできないとリークヮンユー氏は行きすぎた民主政治の弊害を理解し、政治的安定と経済発展に焦点を絞って国作りをしてきたことで今のシンガポールがあることは間違いないでしょう。
日本の観光立国はひとつの政策ではあると思いますが、円安で国の資産を切り売りしているように思え、シンガポール政府がF1グランプリはビジネスの場でもあるとの認識で費用の多くを負担してまでも開催しているのと違い、日本では単なる車・レース好きの人達のイベントであって、世界のビジネス関係者からは関心を持って貰えないとの日経ビジネスの記事を読んで悲しくなりました。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00105/00238/
さすがは国父というところですね。完璧な予言でした。本を出したときは、そうは言ってもまだまだ日本には余力がある、という感じでしたが、今は技術、英語力を磨いて実際に出るかは別にして、国外に出る気持ちがないと、日本という沈没船と共に沈むな、と思います。
既に一定の資産を持っていて外貨に振り分けが可能な人はともかく、資産がない人、技術がない人は地獄を見るかもしれませんね。
シン
MDCSさん
レスありがとうございます。5年前にもコメントされ、勉強になるな。と思い読んでいたところ、まさかレスをいただけるなんて嬉しい限りです。ぬるり読者を長年やってきて良かったと思いました(笑)
テレビでもマレーシア、タイの移住特集をやっていたのをみた記憶がありますが、日本もその対象国として見られるようになったなんて、諸行無常ですね。
政治家になって無駄を排しし、選択と集中を断行し、日本の経済力の底上げを行う気力もビジョンも私には無いので、個人で出来るグローバルなスキルを身に着け、最悪、日本が今よりも没落した時に困らない収入を得られる力を磨いていく必要があるな。と思いました。ありがとうございます。