じゃあ、慣習法

コロナ禍で日本は慣習法が強い国だな、と改めて思います。

世間

日本人はとにかく世間体を気にし、同調圧力をかけることを好みます。その為、首長が要請程度のことをすれば、大多数の人が言うことを聞き、素直に聞く人が聞かない人を攻撃します。自粛警察の登場は分かりやすい例です。お上が決めたら何も考えず、言うことを聞かなければならない、という考えの人が多い国です。

日本人は民度が高いともいえるでしょう。多額の罰金、罰則もなしにこれほどコロナ蔓延を防いだ国は他に例がありません。私の知っている限りで日本人ほど正直で真面目な国民はいません。狂人、変人、奇人の類の人がほとんどいない国って他にあるのでしょうか?大陸文化のアメリカ、中国は変な人だらけなのは理解できますが、隣の韓国、同じ工業立国のドイツでもやはり日本人より圧倒的に変な人が多いです。

これって慣習法が行きわたっているから、とも言えるのではないでしょうか?今までの経験上、こういう風にやっていたのだから、よくわからないけど何も考えず従いましょう、というような風潮が日本には良くも悪くも浸透しており、「違うだろ?」「いやだ、従わない」とは思わない、思ったとしても強固に反対する人はめったにいません。

先例

慣習法とは先例主義だと言っていいです。欧州では中世で慣習法が否定されたり、廃れていますが、日本では先例が最も重要な法です。日本では近世に入っても慣習法で行政が運営され、近代に入っても色濃く残っています。役所は当然そうですし、大企業も先例に倣うことが大好きです。

今でも日本の役所は紙媒体しか書類として認めません。紙媒体の延長戦でファックスまでは認められてもEメールによる申請、オンラインフォームによる正式申請などは、是が非でも認めません。これは先例がないことをしたくないからでしょう。オンラインの方が早く正確だったとしても、先例がない以上は認められないのです。

これは極めて危険です。先例に従うことは無難な選択肢ではありますが、世の中は常に変わっていきますので、どんどん時代にそぐわなくなっていくからです。50年前に妥当だった例を持ち出して、今現在に適応しようとしても土台無理です。そうやって日本は世界から取り残されていくわけです。実際、日本の組織は未だに昭和のにおいを残しています。

コロナ禍でオンライン化が差し迫っていても、保健所のやり取りはファックス、電話しか認められず、各病院からの報告を手計算で数えることしか許されていない、という冗談みたいなことを真面目にやっているんですね。真面目かもしれませんが、バカだと思います。Eメールが使いたい、クラウド管理がしたくても、先例がないので許されません。

責任

先例がないことをしない、というのは責任を取りたくない、ということでもあります。何十年前の先例を盾にして物事を進めていれば、誰も責任を取らないことになります。その当時決めた人がその組織に残っている可能性なんてほぼゼロだからです。今、先例に従って決めた人も責任を取りません。

コロナ蔓延防止は先例がないので、誰かが責任を取って方針を決める必要がありますが、政治家も責任を取りたくないので、特例を作って対策することはありません。責任を押し付けられるように有識者会議のような代表者のいない団体表明のような形で対策を決めるので、決断が遅く、失敗に対して対策も取られず、同じ失敗を繰り返します。

日本では誰も責任を取らず、何も決まらず、すでに先例のあることしか進めることができません。アメリカのように大統領権限で特例を推し進めることはないし、中国のように共産党が決めたルールを有無言わさず守らせるような強権発動することもありません。もちろん、ドイツのように新しいルールを決めて徹底させるようなこともしません。

ワクチン接種が始まっても、日本では医師、看護師以外は注射を打つことはできないでしょう。特例の規制緩和で医療関係者のこの層まで許可すれば、これだけの人数が確保でき、このくらいの速度でワクチン接種が可能になるため、誰の権限で推し進めることをいつまでに決定する、というようなルールをまだ決めていないでしょう。検討くらいはしているでしょうが、ずっと検討しているだけでしょうね。

まとめ

日本は完全に制度疲労を起こしています。世の中が変わっても、追随することを嫌がり、先例ばかりにこだわってチャンスを逃し続けています。日本企業は「遅い」「古い」「つまらない」という評価が定着しつつあります。かつての栄光にすがっても仕方ないですよ。時代に合わせて変わっていかなければ、凋落は止まりません。

高校生のなりたい職業「公務員」という国です。仕事がどれほどつまらなくとも、全く新しことが許されなくても、クビにはならない、というだけで公務員を若者が目指す国です。そんな国が成長するわけないし、新しいアイディア、技術が生まれるはずもありません。ただ、過去の遺産を食いつぶし、転げ落ちるように国力が落ちていくでしょう。

まず、慣習法と見直すことからスタートでしょう。個人レベルでも同じです。「当たり前」「当然」「みんなやっている」という思い込みを振り返りましょう。見方を変えれば、当たり前でも、当然でも、みんなやっているわけでもないはずです。より良いやり方があるのであれば、勇気を出して責任を取ってやってみる、ということから始めるべきだと思います。

コロナは世の中を大きく変えています。その変化に対してついてこれない国、地域、組織、個人が落ちぶれていくのは当然でしょう。30年前のバブル崩壊、20年前のドットコムバブル、10年前のリーマンショック、と順調に日本は凋落しています。ここらで踏みとどまらないと加速が大きくなって止められないと思いますね。

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しゅうまい
2 years ago

>>今でも日本の役所は紙媒体しか書類として認めません。紙媒体の延長戦でファックスまでは認められてもEメールによる申請、オンラインフォームによる正式申請などは、是が非でも認めません。

コロナで保健所がパンク状態だというニュースを動画で見ましたが、職員は全員電話対応で紙に罹患者の記録を集めホワイトボードで人数を集計してる風景から、ITの分野で日本はここ数十年本当に殆ど何も進歩していないんだと絶望的な気分になりました。ヤフコメでどなたかがコメントしてましたが、その集計結果を中央政府にFAXしてそれをさらに手作業でシステムに打ち込んで統計を出しているなんて、狂気の沙汰だと思います。日本人はなぜ無意味な苦労に意味を見出すのでしょうか。

>>ワクチン接種が始まっても、日本では医師、看護師以外は注射を打つことはできないでしょう。

日本医師会が強硬に反対している限り、ワクチン接種は医療行為として医師・看護師以外が行うことを自民党が許すわけないと思います。何も変わらず、何の意思決定もできず、誰も責任を取らないまま、きっとこのままずるずると時間だけが過ぎて行きオリンピック開催すると思いますよ。それで感染爆発して地獄絵図になりかねないと誰もが思っているのに、誰も止められない。

第二次世界大戦中に覇権国家アメリカ相手に真っ向から戦争を仕掛けるなんて勝ち目がないと多くの人がわかりつつも、なぜ焼け野原になるまで止められなかったかと学生時代には思っていましたが、今の日本の状況を見るとその理由がよくわかる気がします。

5+
もっちり
2 years ago

>先例に従うことは無難な選択肢ではありますが、世の中は常に変わっていきますので、どんどん時代にそぐわなくなっていくからです。50年前に妥当だった例を持ち出して、今現在に適応しようとしても土台無理です。

先日、eTaxで納税を終えたのですが、これもほんといつまで続けるんですかね?
ゴミみたいたUIで、申告する気が失せて税務署に予約して訪問し教えてもらい、謎が解けました。

紙帳簿をそのままシステムで表現していました。普通、IT化したら業務整理をしてから、
よりやり易い方式でシステムを作るのですが、全くやる気すらないのですね。
本来、数十行を手書きで入力するのを、そのままシステムに載せて、スマホでもいけます!って
謳ってるんだから開いた口が塞がらないですよ。

アメリカみたいに個人番号カードで紐づけして、シンプルに課税したらいいのに、なんでこんな
意味ない仕事が溢れているのでしょうか?まぁ、やりたい奴の中で好き放題すればいいですが、
慣習を続ける付けを国民が払うのはおかしいと思いますね。あと、税金細かく分類分けして国民から搾取するなら、課税項目ごとの収支報告せよ!と思いますね。政治家はなにをしているのでしょうか?
そこまで思うなら自分で、主張をまとめて議員立候補して、立法府より税制を変えるんだ!といってみたいところですが、生憎目先の生活のやりくりで一杯でとても選挙資金など用意できそうにないので後進に期待します。好き放題言いました。

3+
しゅうまい
Reply to  もっちり
2 years ago

>>紙帳簿をそのままシステムで表現していました。普通、IT化したら業務整理をしてから、
よりやり易い方式でシステムを作るのですが、全くやる気すらないのですね。

日本のIT活用方法が「問題はそこじゃないだろ」的な斜め上の仕様になるのは、慣習法のせいで手段と目的が曖昧になるからだと思います。
本来は業務効率を改善することが目的でITを活用するのだから、その効果が最大になるようにプロセスをITに合わせるのが合理的ですが、日本では慣習法の下でプロセス変更に強硬に反対する人達がいるため、逆に現行のプロセスをITで再現するという本末転倒なことになるんだと思います。
手段が目的化してしまい形だけIT化することで超絶使い勝手が悪い仕様となり、結果として紙ベース手作業の従来プロセスから生産性も大して上がらない結果になるのでしょう。

エクセル方眼紙なんかは典型的な例だと思います。エクセルを使う目的は表計算や軽いデータベースで情報処理をするためなのに、エクセルを使うという行為自体が目的化し、セルを結合させまくり書面を忠実に再現した結果、本来の目的である「情報処理」がまともにできなくなっています。

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ニコ
Reply to  しゅうまい
2 years ago

電卓で計算した数値をExcelに入力してる事務の女性みたらなんなんだろ?って思います。

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