久しぶりに企業分析はカメラの王道ニコンについて書いてみます。
カメラ
ニコンって、カメラ好きには特別な存在で、キャノンと二強だという印象があります。それは海外でも同じことで、中古のカメラを譲り受けた、とかなく、新しく買うなら、そのどちらかを買う人が多いです。その他にしても、ソニー、ペンタックスなど、日本企業なので、カメラ業界は日本の独壇場だといえます。
カメラがアナログからデジタルに変わっても、日本のメーカーは上手く対応することが出来たし、新興国需要を取り込むことで、高級路線の一眼レフを伸ばすことが出来ました。中国人をはじめとした外国人が日本製のカメラに手が届くくらいの収入になってきたので、カメラ人口が爆発的に増えたのです。
ちなみに日本人女性と比べると、他のアジア人女性は明らかにナルシストであり、写真を取られるのが大好きです。その為、彼氏は一眼レフを買って、彼女を取り捲らないと、不機嫌になります。そして、フェイスブックにアップ、プリントアウトして飾ったり、スマフォのバックグランドにします。それは若くてきれいな女性だけでなく、不細工なおばさんでも同じです。
そして、その波が一巡して、カメラが売れなくなってきたのです。コンパクトデジタルカメラがスマフォに押されて、ほとんど売れなくなったのは言うまでもないですが、一眼レフすら、スマフォに押されるようになり、カメラ愛好家はあらかた買ってしまい、技術的な進化もほとんどしなくなってしまったので、買い替えもしないのです。そして、カメラメーカーはニコンを含めて苦戦しています。
精機
あまり知られていませんが、ニコンは半導体向け精機メーカーでもあり、カメラの半分くらいの売り上げは精機事業が上げています。その精機事業が過当競争で、立ち行かなくなったので、主力の熊谷拠点でリストラを行いました。これは業界的にはショックな事態で、伸び悩んでいたカメラ事業のリストラを行うならわかりますが、精機事業でリストラしたのです。
元々、ニコンは一眼レフの価格低下、競争激化からほとんどのモデルを海外生産にしており、タイ、中国で製造していますので、日本ではニッチである高級カメラくらいしか製造しておらず、そこをリストラしても意味がなく、カメラの停滞は海外拠点の作業者に降りかかりますし、労働法、環境が違うので、それほどリストラは難しくありません。(ちなみにニコン、タイは洪水で大損害を受けました。)
半導体業界って、どんな製品もそうなんですが、巨額投資をして、その分野を寡占して、その投資を回収する、というスタイルになっています。(東芝の虎の子、フラッシュメモリーも同様に巨額投資、回収時期に来ているということです。)ニコンはその競争に負けてしまい、オランダのASMLにやられてしまい、競争が難しくなってしまったんですよ。シェアを85%とられて、セカンドサプライヤーとして、リスクヘッジ程度の注文しかとれず、業績は悪化しています。
この分野でもう一度立ち上がるには新しい技術革新が起こる時期までひたすら投資を行い、その技術で世界をリードするしかないのですが、さて、そこまで出来る体力が残っているだろうか?、と思います。それには創業に三菱の岩崎家が噛んでいることから、未だに役員の受け入れをしている三菱グループの支援、明らかに無駄な東京、品川の工場を売り、お金を作るしかないでしょう。
その他
その他事業はお決まりのパターンで、医療、自動車など、まだまだ日本企業に優位性のある分野、ニッチを狙う、ということですけど、それはほとんどの行き詰ってきた日本企業が言っていることで、ブルーオーシャンに見えて、すでにレッドオーシャンなんですよ。根本的な何かを変えるような革新が生み出せないなら、新しい産業を製造で興すのはほとんど無理だと思います。
これはニコンだけでなく、キャノンでも同じで、キャノンも精機事業では行き詰っていて、事務機器が新興国メーカーを圧倒できているだけで、それもどの程度の期間優位性を保てるのか、かなり疑問に思います。シャープを買ったホンハイグループはシャープの事務機器技術を使って、中国で超大量生産する計画を当然しているでしょうし、牙城を守るのは楽ではありません。
私がいつも言っていますが、先進国でメーカーをしたいなら、まったく新しいコンセプトで、特許をとり、ファブレスするくらいでないと、とても割に合いません。孫正義氏はARMにはそれができる、と考えて、巨額投資をすることを決めたわけです。単にいいものを作っていますよ、というだけで、生き残っていけるほど楽な時代ではなく、IT社会では情報があっという間に広がるので、そんなに性能の変わらない似たようなものがガンガン現れます。それにどう対抗するか?、です。
まとめ
ニコンがリストラ、精機事業からのリストラ、というニュースをみてから、記事を書きたいな、と思っていたのですが、暗い気持ちになりました。ニコンが今、危ない、というわけではありませんが、このままだと緩やかに減収減益を繰り返して、縮小していくほかになくなります。日本企業でまともに世界と戦えているのは自動車だけで、頼みの精密機器も凋落しているわけで、このまま行けば、日本も凋落していきます。そんなことはずっと前から知っているんだけど、それでも、楽しい気分にはなりません。
一般的に言って、日本には同業他社が多すぎるので、集約して、同じグループにした上で、ライバルを海外の会社に設定しないと、ニコン、キャノンは共倒れになるんじゃないかな?、と思います。それは電機業界ですでに起こっていることで、弱電メーカーがこんなに存在する国はないし、重電もしかりです。そして、無理に無理を重ねて、倒れていくのは第二次世界大戦の死の行軍を思わせます。もっと、政治家、官僚は再編を主導すべきですよ。
ニコンは以前株も持っていて今は売却しましたが、株価が低迷するのはシンさんがご指摘の通りで、次ぎの事業の姿が見えない為に今は買えません。嫌いな企業ではないので、他の企業の買収とかではなく、旭化成の様にさまざまな事業にチャレンジして欲しいです。
株は今の経営状態でなく、未来の経営状態を表すので、ニコンが次の一手を見つけて、芽がでるまではこのままだと思います。社内のチャレンジで新事業が見つかればいいですが、行き詰まっているなら、買ってくるのもいいと思います。何にしても、希望が見えてこないと、何も好転しませんらね。
シン
シンさんご指摘の通り、日本はどの業界も同業が多すぎです。経産省主導で事業統合、経営統合が検討されたりもしますが公正取引委員会の存在により、ご破算や遅々として進まないケースも多いのではと思います。公正取引委員会全てを否定するわけではないですが、なんでもかんでも消費者やサービス受益者の保護、利益を優先しすぎることになり、結果として国民全体にお客様根性が染み付き、国の疲弊につながっている気がしてなりません。
ニコンの記事とズレましたすみません。
経営統合の意味では日本は韓国を見習うべきで、日本人同士で潰し合うより、海外勢と戦うことを主眼にして、ニッチはともかく、メジャーは二社、多くても三社までに集約しないと、国益にはならないと思います。この辺を日本人はグダグダにするので、技術で圧倒できないと、ゆるやかに衰退します。
シン
私はカメラよりも量子テレポーテーションに成功した古澤明先生がニコンに在籍していたことで、注目してました。研究者に収益的なプレッシャーを与えずに自由に研究を続けさせる気風などは残って欲しいなって思います。
http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001046
古澤先生が在籍していたころにはお金がありましたからね。
近視眼的な収益にとらわれすぎると新しい発想は生まれにくくなります。
リストラしながら、すぐに収益貢献できない研究は続けられないので、今のニコンでは純研究みたいなことは出来ないでしょうね。
シン
ニコンのことは詳しくないですが、
ひと昔前は、大企業のリストラと言えば、企業の存続危機で大幅に行っていたのが、
徐々に、ニコンなどもそうですが、今現在、企業業績がそこまで悪くなくてもリストラが行われている気がします。
正社員制度は、能力を最も発揮するであろう30代の給料が安く抑えられる代わりに定年まで安泰のはずが、
50代近くになったらリストラされるのであれば、正社員制度って何なんだろうと思ってしまいます。
明日は我が身で、リストラされる側になったとき、どう立ち振る舞うかを考えなければならない時代だと実感しますね。
日本企業もアングロサクソンに習って、見込みでリストラするようになりました。ニコンも現段階ではボロボロではなく、このままなら、数年後には赤字転落が見込まれるので、早めにリストラするわけです。
若い頃に安く滅私奉公させられて、歳を取って高くなる頃にリストラされるんじゃ、日本企業なんかに勤めてられない、という雰囲気になります。本格的に悪くなる前にリストラするのは仕方ないにしろ、良い時は従業員に還元する、サービス残業をさせない、有給を完全消化させる、という当たり前のルールを徹底しないと日本企業の復活はないでしょうね。
シン
企業シリーズ面白いです
キャノンとかニコンとか光学系の会社ってすごくいいイメージ
があったんのですが、主力のカメラがスマホにとってかわられて
ダメになったんですかね
タイムリーにニコンが海外企業を提訴しましたが、欧米企業に訴えても見合ったものは手に入らないのでは?逆に今はニコンの打つ手が其くらいしか無いのかと思ってしまいます。
他にやることがない、メンツで提訴しただけで、具体的なメリットはないし、既に負け戦なので、全面的に訴えが認められても、状況は覆らないです。落ちぶれたなぁ、と思います。
シン
大学の先生が、
「一眼レフカメラは、ニコンとキャノンの二強だったが、ソニーが参入して勢力図が変わる。
打撃をより受けるのは、一眼レフカメラの割合が大きいニコンの方だ。
この大学からも、去年ニコンの子会社に就職した人がいたから、心配だ。」
と語っていました。
まさに、日本同士での潰し合いになってしまいましたね。
製品のシェアの高い大企業のグループに入れたなら、慢心してしまいそうですが、今の時代そうはいかないな、と思いました。
子会社なら、景気の影響をモロに受けるでしょうから、なおさらです。
日本の電機分野は、海外に勝てないと言われていますが、電子部品はどうでしょうか?
完成電機の組み立ては、マネしやすいが、電子部品のマネはかなり技術力がいるからしばらくは大丈夫、と聞きます。
機械系に興味がもてなくて、ソフトウェアよりハードウェアの方が興味あるため、電子系の研究室に進もうと思ってる自分には、気になる話ですね。
大学の先輩は、電子系なら村田製作所がすごくおすすめと言っていました。
枯れた漁場に日本勢で潰し合いをするんだから、官僚は何をしているのか!っと言いたくなります。
ソニーがしっかり増収増益しているのは部品事業で、特にオリンパスから受け継いだセンサーが好調です。カメラそのものは良くないです。
すでに汎用品の組立ては先進国でやるものではなくなっているので、日本の電機メーカーは再編し、選択と集中をして、スリムになって、海外勢と戦うべきです。分野を絞って、完成品、部品、それぞれで役割を決めて、被らないようにすべきですよ。
村田はセラミックコンデンサーで世界ナンバーワンで、iPhone、GALAXYにも入っている為、今は好調です。堅い会社ですが、無駄が多く、動きの遅い会社なので、次々と投資したり、開発したりして、将来への種まきをしてはないでしょう。
ちなみに村田はシンガポールで上場、そこそこ広い工場も持っています。進出した時は良かったのでしょうが、今のシンガポールでの製造は物価、人材確保に問題があるにも関わらず、そのまま放置しているので、どうかな?、と思ったことがあります。欧米勢は製造は周辺国に移し、研究開発、設計、試作、物流などをシンガポールでしています。決断力がないなぁ、と思います。日本企業はどこも動きが遅いですけどね。
シン
ranさん
将来的に安定している企業ってのを判断するのは難しいので自分の技術を身につけて生き残るのがいいと思います。
私の考えになってしまうのですが、村田製作所の強みはその製品を産み出すための設備だと考えています。高品質な製品を大量生産するのは開発、設計以外に非常に高い技術の設備能力が必要です。仕事の話と身バレしたくないのであまり話ができないのですが、東芝の半導体が調子がいいのは最新の工場だと思います。