長いお家騒動の末、日産は独立を勝ち取りそうになっていますね。ルノー、日産、両方負けの痛み分けのような状態に感じます。
奴隷
1999年、日産は放漫経営の末、倒産の危機に接します。あまりにも酷い状態だったため、救済者はなかなか現れず、ようやく登場したのがルノーです。救済条件は、子会社、ほぼ奴隷としてルノー傘下に入ることでした。ルノーは過半数近い日産に対して議決権を持つが、日産は議決権のない15%をルノーに対して持つというものです。
そして、難題を引き受けたのが、カルロスゴーン氏です。当時、カルロスゴーン氏は40代の壮年ビジネスマン、ミシュランで最年少工場長を皮切りにして南米、北米とその舞台を変えながら成長し、ルノーへ転職、役員まで上り詰めます。そのカルロスゴーン氏が来日、徹底したリストラによって日産を倒産の危機から救い出します。
当初、ゴーン氏は外国人の非情な首切りとして揶揄されていましたが、日産が復活しだすと、日本人も諸手を挙げて称賛をしだし、自動車業界におけるスーパースターとして君臨、ルノー本体のトップも兼ねるようになります。ここにサラリーマン立志伝の完成形を見ることになります。
硬直
復活した日産に対して、親会社のルノーは冴えない状態が続きます。ここで資本関係、経営状態が乖離し出します。売り上げ、利益で完全に劣るルノーが日産を支配する形になります。もちろん、日産の人事権もフランス主導になり、日産は不満が募ります。
日産は出した利益を配当の形でルノーに上納金を出し続け、ルノーの苦境を助ける逆転現象が起こっているにも関わらず、主導権はルノーに完全に握られているのですから嬉しいわけがありません。ただ、助けてもらった借りがあり、強く何も言えない状態となったわけです。
また、神格化されたサラリーマン経営者は、驕ることが多いです。徐々に会社を私物化し出すようになるのが常と言っていいでしょう。ゴーン氏は会社の経費を私的流用するのが当然になります。世界中に日産資産で家を持ち、日産経費で子供の大学入学用寄付、学費を払い、家族を名ばかりに雇って高額報酬を支払うようになります。
最終的に、ルノー株主であるフランス政府の意向もあり、日産を完全に飲み込み、ルノーの一部門として扱う方針になったことで、日産側は我慢ができなくなります。汚職の証拠を特捜に流して、国策逮捕に持ち込むことを決断します。当然、日本政府の日産を完全にフランス資本にしたくない、という意向もあります。
逮捕
ゴーン氏は来日して飛行機を降り立ったところで逮捕、あとは特捜のお家芸、拷問のような勾留で徹底的に締め上げて心を折りにかかります。実際、ゴーン氏も心労で一気に痩せたそうです。ただ、この人はそこで諦めず、保釈中に国外脱出を計画、警察、検察、入管を嘲笑うようにしてレバノンへ脱出します。
ゴーン氏はいろんな言い訳をしていますが、どう考えても許容範囲を超えて会社を私物化していたことは事実であり、本国であるルノー側からすら訴えられています。ベルサユー宮殿での贅を尽くしたパーティーをルノー経費にしていたことは、さすがにフランス国民にすら受け入れられなかったようですね。
それでも、フランス政府は日産をルノーに取り込もうと活動しますが、日産側もそう簡単に折れることはなく、逆にルノー株を市場で買って議決権を停止に持ち込むなどの脅しをするなどして、必死に抵抗した結果、ほぼ共倒れのような形で、ルノー、日産、双方の経営状態は見るも無惨に悪化していきました。
最終的には、EV技術がほとんどなく、ドル箱ロシア市場を失ったルノーが折れる形になり、日産の独立を承認し、アライアンスの再構築を決定しました。協力したとしても生き残れるか分からないのに、揉めていたら、確実に両方倒産になるので、お互いに嬉しくはないが、再度、対等の形で手を握ることにしたのでしょう。
まとめ
アライアンスで成功した例は思い当たりません。ダイムラークライスラーもダメでしたし、トヨタ、テスラの協業も破綻に終わっています。最近、一緒になったプジョーフィアット連合もうまくやっていけるのでしょうか?ルノー日産も、状況が変われば、また、揉めるんだと思いますね。
結局、特殊なケースを除いて二頭体制は成り立ちません。どちらかが主導権を握らない限り、うまくいきませんし、完全に飲み込まない限り、立場が変われば、関係は冷え込んでいきます。だから、親子上場は嫌われるのでしょう。子会社の調子が良くなると、その立場に満足しなくなります。
ゴーン氏を見ていると、人間の欲望は無限だとも感じます。どう考えても、年に1、2回しか行かないようなブラジル、レバノンに豪邸を持っていることに何の意味があるのでしょうか?バレたらバッシング確実な贅沢極まりないパーティーを自分のお金でやるならともかく、勤務先につけるリスクを負う意味もわかりません。稼いでいるんだから、子供が裏口入学するための寄付金くらい自分で払えよ、とも思いますね。でも、足りないのでしょう。
また、日産は復活できるでしょうか?私にはそう思えません。ルノーと一緒に地獄に落ちていき、中国、インド企業あたりに買い叩かれるんじゃないでしょうか?技術的優位性があるように思えませんので、土地、建屋、設備くらいしか売るものがないように思えますね。