じゃあ、ピーターフランクル氏

最近、面白い本を読んだので、皆さんと共有したいと思います。

読者の皆さんはピーターフランクル氏をご存知でしょうか?多くの若い読者さんは知らないでしょう。三十代半ば以降の読者さんなら平成教育委員会というクイズ番組に出ていた姿を覚えているかもしれません。

確か、大道芸人、という肩書きで出ていて、それも間違っているわけではないのですが、本業は数学者であり、世界的な実績を持った人です。なんで、このレベルの人が日本に住み着いているのかわからなかったのですが、この本を読んで腑に落ちました。

ユダヤ

ぬるりでユダヤ人の考え方について触れることがありますが、この本を読むとユダヤ人がどういう考え方をしているのか、理解できると思います。そして、ユダヤ人は人口比にすると信じられないくらい優秀な人材を輩出しています。

元々、ユダヤ人は今のイスラエルに住んでいたんですけど、弾圧対象になって欧州全土に離散します。彼らは血統的に同じ人種と言うわけではなく、同じ狭義を持っている同胞と言うことに過ぎず、母方がユダヤでないとユダヤ人とは認められません。

ずっと差別を受けてきたので、人から嫌がれる仕事に従事せざるを得なかったところがあり、金融業に従事し財を成すことが多く、それがまた嫉妬から差別を深めてしまうという悪循環になり、ことあるごとにスケープゴートにされてきました。

我々が知っている世界で活躍するユダヤ人は東欧系で、南欧系はそんなにのし上がっているわけでもありません。ここで取り上げるピーターフランクル氏もハンガリー出身の東欧系ユダヤ人です。

彼らは非常に教育熱心です。実学志向のため医者、歯医者が多く、お家芸であるロスチャイルドで知られる金融業に人材を輩出し、学者、特に数学、物理の分野ではありえないくらいユダヤ人だらけで、最近ではIT長者になり、芸術、ファッションでも名を上げる、という多彩な人たちです。

例に漏れず、フランクルさんのご両親も教育熱心な医者です。フランクルさんも医者になることが望まれていたのですが、数学で才能を発揮した為、医者にはなりませんでした。子供の頃から数学が抜群に出来て、当時、東側だけで行われていた数学オリンピック入賞者です。

彼らはお金、地位はたやすく奪われるが、頭にあるもの、身につけた技術は奪われない、という考え方をするので、生きる為の術を子供に教え込みます。フランクルさんのご両親もアウシュヴィッツの生き残りなので、特にサバイバル技術を教えてきたのだな、と思いました。

フランクルさんが大道芸を覚えたのは好きだから、という単純な理由に加えて手に職をつけ、副業を持つことで、万が一の場合に備えること、リスクヘッジにすること、本業と関連しないことで気分転換をして視野を狭くしないことを目的としているのでしょう。

現代の若いユダヤ人も3年の兵役を終わると旅に出て路上販売をしながら現地でお金を稼ぎつつ、現地人とやり取りをし、警察、地回りのヤクザをうまく煙に巻く術を学んでいることが多いです。すごい実践的だなぁ、と思います。

そして、フランクルさんからも垣間見えるのは強い自我です。自分の主人は自分以外にはいない、という強烈な力で、ルールなんてものは自分の責任で自分が決めるものであって、権力を持っている人間の都合で勝手に決まって言うことに従うべきではない、という意思を感じます。

これだけ実践的で、勤勉、目的の為にはワガママ、自分勝手になり、それによる周りとの軋轢は苦にしない、という強靭な精神力を持っていれば、成功する人が多いのは当たり前だな、と思います。

亡命

日本人として生まれて、世界がボーダレス化する時代を生きている我々には北朝鮮難民がするような命を懸けた脱出をイメージさせて「亡命」なんてすごい響きですが、東西冷戦が終わるまではそんなに珍しい話ではありませんでした。

フランクルさんはフランスの市民権を持っていますが、これはハンガリーの共産主義を嫌ってフランスに亡命しているからで、数学者として、人間として自由を制限された生活が嫌になったので、大学院時代の留学先で事情をよく知るフランスに亡命しているのです。

このパターンはフランクルさん以外にも多くあり、東側の学者、研究者が自由を求めて西側に亡命するケースは多くあり、一度、西欧に出てからアメリカに向かうパターンになり、人材流出をしました。(グーグル、ブリン氏の家族も旧ソ連からの亡命ユダヤ人です。)

才能のある人は変人が多く、自由を制限されることを何よりも嫌うので東側で育った人でも祖国が嫌いというわけでなくとも、亡命して出て行ってしまうんですね。お金のかかる分野の学者なら、研究資金を求めてアメリカに行くというのはありますね。

元日本人、ノーベル賞受賞者、中村修二さんなんかは典型的な日本人らしくなく、自分のやりたい研究、望む環境を手にする為なら国を捨てることに多少の躊躇はあっても、突き進むだけの強い意志があります。

逆にABC理論で有名な数学者、望月新一さんなんかはアメリカ育ちなのに、日本国外から出ることが嫌だそうで、国外の学会にすら参加しないそうなので、こっちはこっちで強烈な個性の持ち主だな、と思います。

フランクルさんも優しそうな見た目ですが、内に秘めた個性は突き抜けていて、びっくりするくらい自由な人だな、と思います。そうじゃなければ、亡命なんてしませんし、ほとんど鎖国しているような日本に住み着くようなことはしないでしょう。

日本

フランクルさんもアメリカに行くことは考えたみたいで、実際、短期間アメリカで働いたりしていますし、日本人の彼女と結婚する為にアメリカの大学でテニュアをとってアメリカに永住をすることを考えたみたいですが、彼の生き方にアメリカが合わなかったそうです。

負け惜しみでアメリカが嫌いと言っているのではなく、フランクルさんは数学会の泰斗、エルデシュ氏を師に持っていて、エリデシュ数1、つまり共著にある世界レベルの学者、相応のコネも持っているので、親しい学者に推薦状を書いてもらえば、相応の大学でテニュア取れる実績はあったのです。

フランクルさんがアメリカが肌に合わない、としたのは1)車社会、2)物質的過ぎる、ことだそうです。自由人で持ち歩けない資産を持つのが嫌いなフランクルさんにとってアメリカはNY、マンハッタン島くらいしか車なしで生活できないので嫌だ、ということ。アメリカ人は口を開けばお金の話をするのが嫌だ、ということみたいです。

それに対して、日本、東京は便利、面白い文化があり、なによりバブル当時のイケイケムードが楽しかったからだそうです。今の日本に対してはハードの時代は終わったから、ソフトを大事にするように、と言っていますね。

フランクルさんは数学者、理系の人では珍しく、語学の才能を持ち合わせている人なので、英語がほとんど通じなかった日本も苦ではなかった、というのもあるでしょう。日本人になったサッカー一家のハーフナー家ですら、来日当初は日本の英語表記のなさに困り果てた、とコメントしています。

まとめ

私がつまらない記事を書いても、フランクルさんの躍動的な自伝の面白さを伝え切れませんが、自由な人生を歩みたい、子供を自由に育てたい、と考えている人は是非、読んでみるといいと思います。

最後まで決まった時間に決まった場所に行って、決まった時間に帰る、という契約を嫌がって正教員にならなかったエルデシュ氏、フランクル氏の生き方を見て、勤務先、役職、学歴序列のような自分の小さなプライドをへし折られるような気分になるでしょう。

どういう生き方であれ、本人が出来るだけ好きなことを貫いて、楽しめるのなら、他人からどう思われるかなんて、本当に小さなことだと思います。

26+