残業って何なんでしょうか? こんなシンプルなことが頭によぎったので、考えてみます。
ライン
例えば、製造現場のワーカーが仕事が忙しいため、3時間の残業をしました。それに対する3時間分の割り増し給与を払います、と言うのはシンプルです。多くが仕事が多く入っているため、稼働時間を上げて、通常能力以上の生産をして、売上、利益を増やそうとしているわけですから、対価が発生して当然です。
そこで大事なのは特急対応で仕事して欲しい、顧客に頼まれたなら、その特急料金が発生するわけで、その割増料金が現場の労働者に行くのも当然だと思います。多くの日本企業はこれが苦手で、お客さは神様だ、とかいう間違った思想で、無料で特急対応をしがちです。
ラインでは残業の概念は凄くシンプルであり、取り立てて議論になるようなことはないのだろうと思います。残業に対して割増料金を払う人がいて、その対価を受け取っているだけなので、ここに異論はないでしょう。ですから、ラインワーカーにサービス残業は存在しないのが一般的です。
一般事務
本来、一般事務に残業ってないはずです。仮に顧客が特急で仕事を仕上げてくれ!、と言ってきても、それを現場に投げるだけで、それ以上の仕事は発生しないからです。それでも残業が発生するのは二種類の理由があり、元から一人でこなせる分量ではない、個人のミスで時間内に終わらなかった、と言うことになります。
つまり、元から一人でこなせないのなら、上司に相談して、人を増やしてもらう、もしくは残業代込みの給与にしてもらうことがいいでしょう。それに対して、自分のミスで時間内に終わらなければ、自分の責任なので、残業代など申請する資格などありません。シンガポールではこのどちらかで処理します。
その事務員が割に合わないと思うなら辞めればいいし、時間内に終わらなくても、帰りたいなら、帰ればいいのだと思います。その結果として、上司が解雇に踏み切るなら、それが結果として出るし、それでも使うなら、それも結果です。シンガポールの事務員は非常にシンプルに雇用が成り立っています。
もちろん人間なので、楽してお金が欲しくて、仕事している振りしたり、忙しいアピールで昇給、昇格をねだりつつ、新人をいびって辞めさせ、小さな利権を守るのに必死な人もいますが、そういう面倒な人は上司が折を見て切ってしまうのが、シンガポール流です。日本みたいに簡単に解雇できない正社員利権がないので、それも自己責任です。
総合職
日本の問題点は総合職社員に該当する人が多すぎることです。男性社員で一般職の人はほとんど存在せず、総合職と言う名前の下、自己責任を強いられているが、取り立てて厚遇されているわけでもない、と言う状態になっていることはザラにあります。だから、実質的な一般事務である内勤管理系総合職を望む人が多く、「営業」っとか言う人がいるのは割に合わないからでしょう。
シンガポールの総合職は1%くらいの官僚社員、2割程度の国立大卒社員、それ以外は一般職です。官僚社員総合職は誰でも出来る雑用事務作業はせず、一般職にさせます。自分の仕事に集中するために自分用のアシスタントが与えられているわけです。組織上は新卒総合職はベテラン一般職の上に立つので、自分の雑用をさせることも可能です。実際は気を使って、あまり露骨な雑用押し付けは出来ないですが、権限上は出来ます。そのため、文系新卒はインターン、契約社員をこなしながら、仕事を探すのです。
本来の総合職社員は幹部候補生であり、官僚社員が残業でグダグダ言うことはないです。彼らは酷いボンクラでもない限りは部長クラスに上がれますし、総合職社員であっても、一般職社員よりもかなり割高の給与を貰っている上、管理職になる権利が与えられているので、一般職をねたむようなことはないのです。日本では一般事務をうらやましがる総合職社員がいて、それは大して待遇が変わらず、時給にすれば、一般職のほうが楽なくらいだからでしょう。
まとめ
本来、オフィスワーカーに残業手当なんて要らないのだと思います。それ込みの給与体系になっているべきで、ともかく数字さえ出せば、残業していようが、いまいが、経営的には知ったことではないからです。むしろ、成果も上がっていないのに残業手当を申請してくる社員なんて害でしかないのです。
日本の「残業している=頑張っている」という習慣は変な感じはします。そんなもの結果がすべてでしょう? ある意味では評価をする上司が「根性主義」であり、「残業美徳」をする人間であるなら、それに沿った振る舞いをする、している振りするのも結果だとも言えるでしょう。明らかな数字の出るコミッション制の仕事でもなければ、上司の評価=数字、なので、上司の望まないことをして、顧客の信頼を得ても、後ろから刺されるだけです。
しかし、今の日本の企業文化を考えると、ホワイトカラーエグゼンプションを導入すれば、単なるただ働きを肯定するだけになるのは目に見えているので、まずはサービス残業の徹底的撲滅から始めない限りは経営者が悪用するだけで、本来の意味で残業なんて自己責任っていうところには到達しないと思います。日本人の浪花節好みって文化なので、なかなか変わるものではないと思います。
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他の会社は知りませんが、私の勤める会社に限って書きます。
本来、残業が必要な程の仕事量はありません。ですが社長はじめ幹部達は
遅くまで残っている人=頑張っている人
という感覚が染み付いています。
面倒くさいのは、社員の側もその空気を感じとって、大して仕事も無いのに遅くまでやることを探す人達がいるところです。
結果なんかより時間を潰すだけで評価され、残業代まで貰えるので、
ある意味、割が良いのかもしれません。
以前の記事のサラリーマン鬼軍曹の話ではありませんが、仕事を速く終わらせる社員を、別の社員が叩く風潮です。
会社側も残業代が発生するので、効率が悪いのですが、
その残業代を誤魔化すために変形労働時間制を独自に拡大解釈したヘンテコなルールを作り、
就業規則をいじったり労使協定をでっちあげたりしています。
本来払わなくて良い残業代を、わざわざ払って、さらにそれを誤魔化すために法に抵触までしている状況です。
もはや何が何だかわかりませんが
経営者も労働者もそれで良いなら、
もう別にいいんじゃないかとすら思っています。
幸か不幸か私自身は名ばかり管理職なので残業は関係ありません。
上役がいないのを見計らって適当に切り上げています。
私の勤める会社では
残業=無能、ではなく
残業=忠誠心が高い、という感じです。
典型的な日本企業で、本当に無駄だなぁ、と思います。日本社会は変わらないと凋落が止まらないですけど、外圧がかかるなり、危機にならないと変わらない民族です。
シン
私の勤めてる会社に限ったことで、一般的なことかどうかわかりませんが
会社側は、営業成績や作業処理速度など数値的な結果よりも、
会社に対する忠誠心みたいなものを評価しているフシがあります。
この件が残業、というか拘束時間と密接に絡んでいます。
スキルが高くても事務的に処理してさっさと帰る人の評価は低いです。
また全然仕事ができなくても(作業的なことをサボっていても)
社長主催の飲み会やマラソン大会にくまなく参加し飛躍的に昇進した人もいます。
辞めた社員のことを「裏切り者」と呼びます。
私はその辺をバカバカしいと思っていたのですが、以前の記事の中で日本企業の家族的な良さということが書かれてました。
そういう側面から見れば一概に否定できない気もします。
とはいえ単純に企業収益に対する能率と考えるともちろん合理的ではないですし、
この話はとても根深いと思います。
ダーさん、
会社の飲み会やマラソン大会にくまなく参加して昇進していく人とかいますね。上に気に入られればうまくやっていけますがそれができないと苦しいですね。
仕事ほとんどやらないでというか子会社の人にやらせて社内政治だけ上手な人もいますよ。私は馴染めないので苦しいですが。
そうなんですよね。
ノリみたいな目に見えない基準で良し悪しを決められると、
馴染めない人からすると苦痛でしかないですよね。
私も本心では馴染めずにバカらしいと思ってるのですが、
社歴が長いので口先だけはこなれていて、適当に話を合わせて、付かず離れずの適度な距離を取るようにしています。
ある意味、ゴマスリは才能だと思います。
遊びみたいなものに付き合うだけで、
年間何十万何百万と収入が増えるのであれば、それはそれですごいです。
私は無理ですが、色んな生き方があるんだなとは思います。
本音と建前を使い分けるのは社会人のマナーですが、日本は同調圧力が強いので、社内政治に徹することが嫌いな人には辛いです。逆に社内政治が好きな人には仕事と関係ないことで生き残れるのでいいです。
年功序列、終身雇用が維持できた頃は家族的な会社に意味がありましたが、維持できないとなると、なんの意味もありませんね。
シン
外資系では上司が絶対という話を聞いたことがあるのですが、日系との違いはどうなんでしょうか?外資系に勤めたことがないので実態は不明ですが、上司宅のホームパーティにお呼ばれしたときにちゃんと参加することは運動会の話と似ていますし、会社で上司の実績作りに貢献した者が評価されるというのも日系外資系問わず共通だと思います。
違いは外資系では残業が評価されないこと、人事関係が上司の胸先三寸かそれとも人事部が強いかの違い、解雇規制の強さではと考えています。国によっても事情はかなり異なってくるだろうなと思います。
サラリーマンである以上、どこでも社内政治の世界は似たり寄ったりですで、外資も同じことなんですけど、明らかに意味のないイベントは外資には意味ありません。イベントは家族同伴が基本で、はしご酒、絡み酒とかもありませんし、送別会なんかは就業時間内にランチでやったりしますし、拘束時間は短いです。
外資の場合、会社との関係でなく、上司との関係が全てで、上司が引き抜かれると、部下も一緒に行ったりします。上司の家でBBQなんかは会社のイベントではなく、上司の派閥作りです。
シン
うちの親会社は、労基にフルボッコにされたので残業は減りましたが子会社にムチャを押し付けるようになりましたね。
そしたら、親会社は旗降りしかやらないわ、書類ばかり増やすわで残業ばかりになりましたね。
親会社と違って社宅や給料が安いので残業せざるをえないですね。
設計、生産技術、知財が子会社が実をほとんどやってるのはなんか変な話ですけど。
解雇規制を残した日本の現在の制度のままで、サービス残業の徹底的撲滅は不可能だと思います。
サービス残業や割にあわない報酬・業務配分に対して、本来労働者がとるべき態度は、辞めて他に職を求めることです。自己評価が高いのでなく本当に割にあわないのであれば、ちゃんと割にあう職が見つかるはずです。
しかしながら実際は、辞めて割にあう職を見つけるのは困難です。
なぜなら、企業はペイしない労働者を雇用することになったとしても解雇できないから、成果が不確実な労働者を試しに雇うことはそうできません。
解雇規制がもしなければ、使えなかったら解雇するという雇用の仕方ができるわけで、有能な労働者は転職の機会にめぐまれます。
解雇規制によって、能力がなく不相当な高待遇を受けている正規雇用労働者がいる一方、報酬に見合わない扱いを受ける優秀な労働者や、非正規雇用労働者が割を食っています。
サービス残業は、報酬に見合わない扱いそのものですので、その根本的原因である解雇規制がなくならない限り、これは改善しません。
だいたいそもそも残業手当なんていらないし、サービス残業自体が解雇規制によって経営者が損しないための仕組みですので、現行の制度のままでは見た目がどんなに変わっても表面上だけのものになると思います。
日本に雇用の流動性が生まれない限りはサービス残業はなくならないでしょうね。割りに合わないから辞めても、多くの場合、実力に見合った仕事はありません。実力に見合わない人が解雇にならないので、空きポストが生まれませんからね。
シン