もはや、リストラはソニー名物になった感があり、これからも続くでしょう。以前紹介した山一破綻について書かれた清武さんの著書で読みました。これは「しんがり」と比べると、ルポみたいな感じで、物語ではありません。山一と違って、現在進行形の話なので、まとめられないからかもしれません。
[amazonjs asin=”4062816733″ locale=”JP” title=”奪われざるもの SONY「リストラ部屋」で見た夢 (講談社+α文庫)”]前にも記事を書いているのですが、事業を軸にして記事にしているため、今回は経営体制を軸にして構成したいと思います。結論から言うと、ソニーは創業者たちが指揮を振るっていた時代とは完全に違うものになり、古き良きソニーをイメージして、関わるとエライ目にあうでしょう。
井深、盛田
この人たちは面白いこと大好きなエンジニアで、奇想天外な天才肌である井深大、その井深を兄のように慕い、彼を支えるために資金調達、体制づくり、販売までやってのけたのが盛田昭夫、というコンビで、両雄並び立たず、という格言を無視するように死ぬまで親友だったそうです。
彼らは古き良き日本の投影的人物であり、良いもの、面白いものを世の中に送り出して、世界を変えてやろう!っという気概で企業経営に取り組み、彼らの周りに一癖二癖あるエンジニアが集まってきた、という会社でした。
だから、社員はオヤジであり、カリスマである井深さんを個人的に慕っていた人が多く、天才的な人にありがちなムリャブリを盛田さんがフォローアップして、組織として成り立たせていたわけです。一例を挙げると、愛知県、知多で大きな造り酒屋の御曹司である盛田さんがしてくる実家からの資金調達がソニーの勃興期を支えました。
そして、この両氏が病気になり、采配できなくなった90年中盤からソニーはおかしくなりました。その頃、ちょうど、IT革命の息吹が芽生え出し、会社の製品を変えて行かなければならない時代にぶち当たってもいるので、両氏が健在でも、難しい舵取りがったのは間違いありませんが、間違った舵取りでリストラのソニーとして名を馳せることになるのです。
出井
出井さんはソニーをボロボロにした張本人、と清武さんから断罪されてますが、誰がどう見ても、どうひいき目に見ても、彼がトップにならなければ、ソニーがここまで酷いことにはならなかったのではないだろうか?、と思うくらい無能ぶりです。
元々、彼は父親が経済学者で、本人も文系、物作りに興味はなく、「カンパニーエコノミスト」という社内官僚を目指して就職活動し、欧州に行ける会社という事で、ソニーを選んだそうです。そして、希望通り欧州に駐在し、帰ってくる頃には社長候補になっていました。
元々、井深、盛田両氏はエンジニア出身でない人がソニーのトップに立つのを嫌がっていたようですが、芸術家である大賀さんは生え抜きであり、変わり種、海外経験の長い出井さんを選びます。そして、それは失敗だった、と漏らしてたそうです。
彼はエコノミストを自称するように、白人コンプ、技術、現場を知らない評論家であり、それっぽいことを言うだけで、現場から上がってくる提案をほとんど無視、煮え切らない態度で放置して、今考えれば、十分に戦えた仕事を捨ててしまいました。
そして、We are familyを標語とするソニーでは明らかに禁じ手であるリストラに手をつけることになります。こうなった時点で、創業者の思想、哲学は死んだも同然で、別の会社になったと言って良いでしょう。草葉の陰で泣いているでしょうね。
そして、出井さんは技術のことは自分がわからないので、技術でなく、金融、エンタメなどに手を出していき、アメリカにおいてはストリンガーさんをスカウトします。彼はイギリス出身のアメリカ人、ジャーナリストで、エンタメ畑の人です。
最終的に出井さんは白人コンプを拗らせて、創業者が生きていたら、絶対に許可しないであろう後継者指名をします。ソニートップがものづくりを知らず、日本語が話せない、話す気もない、日本にも住まない、住む気もない外国人になってしまうのです。
ストリンガー、平井
跡を継いだストリンガーさんは日本のことはわからないので、エンジニア出身の中鉢さんに丸投げ、自分の得意なアメリカ市場、エンタメに注視して、その部分では一定の成果を上げます。単にソニーアメリカのトップとしてはさほど問題なかったのだろうと思います。
しかし、本国では競争力を失った製造部門が目も当てられないくらい悲惨な赤字になり、一時的に出血を止めるためのリストラをひたすら繰り返することになります。この頃には「リストラのソニー」と言って良いくらい日常的になります。
アメリカではレイオフ、という首切りは日常茶飯事であり、お互いに仕方ないことだと理解していますが、日本でのリストラは湿った陰湿なイジメが伴うもので、ソニーでは監獄のような部屋にリストラ要員を放り込んで、精神的に追い込んでいたそうです。
そして、現社長の平井さんがストリンガーさんから後継者指名を受けるのですが、彼は元々、前半人生の半分を北米で過ごした日本人で、ネイティブ並みの英語力を誇り、アジア系アメリカ人だと言われても、違和感がないだけでなく、日本語を話しても、かなり雄弁です。バイリンガルといって差し支えないレベルだと思います。
世間には楽天、三木谷さんなど、自称ネイティブ並は沢山いますが、平井さんほどの英語力を誇る日本の大企業トップは過去、現在に至って、存在しないと思います。ネイティブが全く気を使わなくても、スラスラとコミュニケーション取れるレベルは圧巻です。(三木谷さんの英語力では相手はかなり気を使わないと、コミュニケーションを取れないし、イライラするレベルです。)
平井さんはソニーでエンタメを担当して、プレステを北米で売るときに再渡米、そのままアメリカにずっといて、ストリンガーさんの側近として過ごしていました。日本語を話せない、ソニーでは孤立しがちなストリンガーさんからすると、心強い味方だったのでしょう。
抜群の英語だけでなく、見た目が若くイケメン、弁が立って、堂々とした雰囲気はいかにも出来そうなビジネスマンだと言って良いですが、彼に何か出来ることなんてありません。出来もしないことを吹かしながら、出井さんから続けてきたリストラをするだけです。
まとめ
未だに過去のイメージで、就職したい企業ランキング上位ですけど、私はソニーが復活することなんてないと思ってますし、するとしたら、完全に業種が別の会社になってからだと思います。それっぽいニュースで株価が騙し上げしますが、本質的にダメダメだと思います。メンタルに自信がある人は空売りしても良いかもしれません。
一般的に本業に関係ない部門しか経験のない人、本業に興味がない人がトップに立つと、衰退しやすいです。また、評論家気質の人は実業をせず、アカポス取るなり、メディアで意見だけ言ってれば良いんですよ。経営者は理屈でなく、泥臭く本業に向き合って、数字という結果を出さないとダメです。そして、何かしらの革新的ビジネスが編み出さないなら、一時的に数字が出ても、衰退する他にありません。
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ソニーにしろ東芝にしろ、ダメな文系社長の尻拭いを技術者たちが懸命に行い、結局は短期的な利益のために安易に切られてしまったという印象ですね。メーカーなのに技術を知らないどころか興味もない社内官僚はいらないですね。
平井さんの動画をいくつか拝見しました。確かに非常に流暢な英語ですが、彼の英語の話し始めがインタービューにせよテレビ局との中継にせよ、どの動画もほとんど必ず”I think…”から始まるのがちょっと妙な感じでした。癖なのかなと思います。
投資会社じゃあるまいし、エコノミスト、アナリストなんていらないんですよ。その手の人がのさばると、そのメーカーは終わりの始まりになります。
シン
シンさん
メーカーなら技術者中心の組織にしないと人材の活用も教育も全然うまくいかないですね。
日本電産、GEのようにメーカー系投資企業、というスタイルで突き抜けるなら、話は別ですが、そうでないなら、本業がおろそかになった時点で、行き詰まります。
シン
ソニーは、プレイステーションとウォークマンの遺産を高度に融合させたスマホを生み出せてれば、十分iPhoneに勝ててたと思います。
ソニーに限らず、今の日本の家電メーカーの出す商品に魅力を感じるものは1つもないですね。
ジョブズはソニーを認め、派生させてiPodを作っているんですから、ソニーが今のアップルの立場になっていてもおかしくはなかった、と思います。その辺は出井さんが潰しました。
シン
出井さんに対しては違和感アリアリで、経営とは関係ないブログや本を書いて半文化人気取りで正直実態が良く分かりませんでした。経営者とも違うのではないかと思います。当時のメディアでは飛び級で一気に社長になった経歴だけがclose upされて、実績、専門性、今後の事業戦略がすごくぼやけていました。少なくても私は飛び級で社長に抜擢されたくらいしか記憶にありません。正直SONYの表面的なお洒落さ、スタイリッシュさをなぞってるだけの悪いSONYの象徴となってしまったのは否めないですね。チャラい男子高校生がモテたい理由で勉強が好きでもないのに早稲田の政経を目指すのと変わらない印象を受けました。本来のSONY(SONY人)らしさとは半分オタクちっくなものだと思うんですよ。しかしながら1970年代、1980年代にヒット商品に恵まれてSONYの看板だけが独り歩きしてしまい、そこら辺からモノ作りに対して興味のないミーハーな学生もSONYにこぞって入社するようになりました。それが凋落の一端を担ってしまったんだと思います。(SONYの製品に興味はないけどSONYの名刺を持っていればモテそう)
古株のSONY社員の方の意見を聞いても1990年代後半からくらいからパワポでそれとなくおしゃれなスライド作っている20代後半から30代くらいの人間がが闊歩する様子には強い違和感を覚えたそうです。地味な努力を嫌って、表面的に取り繕い、それとなく見せる奴が目立つ、出世する悪い成功モデルがはびこり始めていたんでしょうね。
まったくです。技術の会社はギークが幅を利かせてないとダメだし、マニアな奴らの巣窟じゃないと、新しいものは生まれません。単にオシャレだから、モテそうだから、と技術に興味のない社員で溢れるようになれば、もう終わりです。
形のないフワフワしたものを売るのも良いんですが、それはメーカーじゃないです。だから、ソニーはメーカーを止めないと、復活はしないでしょう。
シン
Yさん、シンさん
確かにそうかなと思います。
私の友人も事務系でメーカーにいった人は技術や製品に興味があるのではなく待遇や金融に行きたくないとかいう消極的な理由ですね。
また、職業柄で文理混ざっている仕事なので勉強会でアイデアを出しあうときに私も含めて技術者出身では技術的な提案と新規性に対する興味からテーマを選ぶのですが、事務系出身の提案は内容が薄いことと技術的な観点からこのテーマを選ぶと詰むものを考えてきた印象があります。しかも面白くスライドを見せても内容が面白くはないです。
Yさん
Yさんのこの文章は、日本の家電メーカーが何故だめになったのかを端的に表現していると思いました。正に名文です。
私はソニーのカメラやAV機器を購入しており、修理・調整のためソニーのサービスセンターに何回も行っております。ソニーがミノルタを吸収してから、初めてデジ眼を発売をしました。私はそれをいち早く買い、メンテナンスのためサービスセンターに行ったところ、受付で「本日はデジ眼技術の者が手薄なため、しばらくお待ち下さい。」とのことです。待っている間「〇〇アドバイザー」という女性が応対に出てきましたが、写真やカメラというものを全くわかないので、話が通じません。受付の後ろのドアが開いた時、多数の事務系社員がパソコンに向かって仕事をしている姿が見えました。「こんなに社員がいるのに、誰も私のような素人の質問にも答えられないのか。何のためにこの社員達は、ここにいるのか。」と思いました。このサービスセンターは広く、発売前の新製品が展示されていました。新製品の紹介も実演とパワーポイントを使用して実施しているのを、見たことがあります。これらの仕事をしているのかなと考えました。写真を知らないというか全く興味がない社員が、新製品のデジ眼の紹介ができるのだろうかと、はなはだ疑問に思いました。この日は、デジ眼を始めたばかりだからしかたがないと思い、1時間で退散しました。ちなみにこのサービスセンターは、現在は閉鎖されてありません。他もどんどん閉鎖されました。はっきり言ってこんなサービスセンターは必要ありません。
シンさん
メーカーにはYさんがおっしゃるように、モノ作りに興味のない事務系社員が多数いるのでしょうか。私は自社製品技術の初歩的なこともわからない、事務系社員が多数存在することは、このサービスセンターで実感しています。
有名だからと言うことで大企業に入社する人はたくさんいて、そういう人たちは本業に興味はなく、単に目立つこと、かっこいいことしか覚えようとしません。そういう人が多くなるとその会社は終わりです。ソニーはその典型です。
シン
シンさん
コメントありがとうございます。モノ作りで成功し大きくなった企業の社長や社員が、モノ作りに興味が無いんです。その企業が終わりになるのは、当然です。あの大きなサービスセンターのように、何の仕事をしているのかわからない事務系社員が多数存在していたと思います。
話はややそれますが、私の高校の同級生も、4年前ソニーを早期退職しました。偶然ですが、学歴がYさんが話題にされていたものと全く同じです。
第2版で、某2私大の看板学部出身者は、離職しない、リストラされないという話題があったと思います。理由は〇〇会という学閥が異常に強く、かつ役員を多数輩出しているとかありました。これを思い出しました。ソニーとか東芝にいた知人に聞きましたが、当たり前ですがリストラと学歴はほとんど関係ありません。
第2版でのこの考え方が、蔓延している企業も終わりだと思います。まずこのような企業はないと思いますが、どうなんでしょうか。
ソニーの四半期決算報告書を読みましたが「構造改革費用」つまり、リストラ関連費用は増額となってました。数字上は過去最高利益を目指すと言ってますか、何が売れているのかよく分からず、前期、前々期に味噌糞にして赤字にした分の回収を今期行うのかな?、と思いました。東芝、パナソニックがこの手を使って一息ついたのが記憶に新しいところです。
本業と関係ない社内政治に一生懸命になって序列争いしてるような企業は死んだも同然なんですよね。さすがに多く日本メーカーは火がついてきて下らない社内政治は徐々に減ってきているでしょうが、まだまだあると思いますよ。事務系を未だに過剰採用しているのも、社内政治の一環でしょうね。
シン
ソニーって本当はどうなの?、と思っていたときでありキャリア論でもあり、楽しく読ませていただき参考になりました。
ソニーは本社採用で、税務・経理スタッフの総合職で中途募集していますね、会計士・税理士募集とかでもないので、本当はどうなのか、と怪しくw 応募できません・・・。
私の勤め先でも、財務部の人は財務・税務のおたくのような人から、コミュ力・社内政治で仕事をしている振りのような人まで居て内部のプロパーで席が埋まり、なぜ募集するのか、と疑問に思っていました。なんで文系の経理担当者を雇うのか、その動機ってなんなんでしょうか、 もし雇われたら、キャリアとしては幸せなんでしょうか。
今のソニーは、スマホやデジカメに使われるモーションセンサーへの投資・技術開発が花開いて、エレキ(ニッチ技術)・金融・エンタメで稼ぐ体制になった、とネットでは書かれているまとめサイトなどがありましたが、それも眉唾なのでしょうか。
確かに、稼げなくなった部門(AV・PCなど)のリストラはすごかったのでしょうが、やっている分野が当たった技術者や技術はまだ社内の花形として大切にされていないのでしょうか。 ソニーに文系転職も悪くないんじゃないかと思い聞いてみました。 そんなに悪くないのでは? という思いも少しよぎります。
計画、と言う名の希望的憶測を常にぶちまけてますが、財務諸表で、客観的数字の復活をしましたことはありません。少なくとも、私は確認していません。
ソニーがどういう会社なのかは記事に貼っておいた清武さんの本を読んでみてください。技術者の自由なんてなくなってしまった社内政治の会社みたいですよ。日本メーカーは文系を取りすぎているので、そのうちリストラするでしょうし、まして、会計関係なんて、よほど特殊なことが出来なきゃ、Fintechで食いつぶされるだろうと想像します。
シン
最近読みました。井深、盛田の両氏が築き上げた財産が、欧米かぶれの中途半端なバカ共に食い潰されていく様子を読んで、悲しい気持ちになりました。
生意気でとんがったエンジニアリングを喜んで採用して、従業員と顧客を大切にしていたソニーは見る影もなく、もはやソニー製品には何も期待できません。
ポップソングも会社経営も、上部だけ欧米を真似るのが一番たち悪いですね。
今の復活はみせかけだと思います。ソニーらしさがなく、単なるリストラ効果、会計テクニックで黒が出ているだけで、ボンヤリとしているですよね。本当の復活は新しいソニーの象徴的な製品が世の中を席巻しないとダメです。
中途半端な白人かぶれはタチが悪いです。やるなら徹底的にやるか、大和流を貫くべきです。
シン
米国かぶれのトップが原因というよりは、古き良き時代の既得権益と自尊心に取り憑かれ、自己責任を放棄したことなかれ集団の自己満悦が主要因では。こうした人びとのプライドが粉々にされて、日本も少しは多様性や個性を尊重する開かれた社会に成長できるのではないかと。中国を見ていると、まるで一昔前の日本そのものですね。驕れる者久しからず、です。
ソニーはメーカーであり、個性、多様性を認めることが創業魂だったんですけど、アメリカかぶれの社内官僚、出井さんが社長になったことで変わったことが大好きなエンジニアの会社ではなくなったんですね。
平井さんはリストラで一息ついて次期社長も経理畑出身の文系らしいので、似た感じのリストラを続けるんでしょう。
シン
「ソニー再生」という平井さんの本が出ました。4年経ってシンさんのソニーに対する考察を頂けたら勉強になります。
本当に再生したの?、と思っていたので、記事にしたいと思います。
シン