ソニー復活をメディアが騒ぎ立てていますが、嘘だ、と思っていたので記事にしたいと思います。
売上
企業の生命線は売上です。経済規模さえ大きくなれば、色んな展開が見えてくるものです。大企業においては売上があることで雇用、という意味での地域貢献もありますし、国全体の経済活性化を担います。スタートアップなんてそれが顕著であり、売上さえ伸びていれば赤字上場も許されます。
ソニーって、ミレニアム前くらいから売上は伸びていません。復活が叫ばれる2021年決算も売上がという意味では横ばいに過ぎず、ソニーとしての事業規模は大きくなっていないどころか、完全に伸び悩んでいます。
横ばいで何が悪いのだ?という人がいるかもしれませんが、世界の経済規模、GDPが年々大きくなっているので、全体に対するシェアが削られていっていることになりますし、シェアは削られと、存在感が失われるだけでなく、取り返すのが非常に難しくなります。
ただ、これはソニーに限らず、日本の電機メーカーは全て同じです。二十年以上売上は横這いであり、横ばいを維持する為に過去に作った現金、信用を元にM&Aを繰り返してやっとのことで横ばいを達成してきたのが実情です。
利益
ソニー復活を叫ぶ根拠は利益でしょう。売上が9兆円弱に対して一兆円を超えました。スゲー、めちゃ儲かってる?という話ですが、確かに利益は出ています。理由は利益率の高い事業を集中してきたからです。
PlayStationはファブレスですし、エンタメ、金融はソニーの現金、信用をお金に変えているだけなので原価が低いんですね。その分だけシェア争いに負けた時の反動も極めて大きいです。ソフトの宿命と言えるでしょう。
創業事業である利益率の低い製造業はほとんどをリストラし、競争力あるイメージセンサーなどに集中投資してきました。売上を横ばい維持できるように利益率を上げられるようにリストラしまくってきたので利益率が上がった、というわけです。
つまり、この利益はリストラのソニーが産んだ血と涙の結晶だと言えるでしょう。まぁ、ソニーの場合、黄金期を過ごした人はリストラされたり、自主的に辞めた後に活躍している人が他の電機より多いので苦しんでいる人は少ないと思います。
利益を上げるのはある意味簡単であり、儲からない事業、割高な中高年をリストラし、投資を抑制して過去の遺産をマネタイズしていけば良いのですが、ソニーがやった事は過去の遺産をしゃぶって今を選んだと言えます。
新規
リストラが悪いとは言ってませんが、リストラは新規投資とセットになっているべきです。そして、その新規投資が新規看板事業になってないと、売上は伸びません。ソニーがその投資を十分にしているのか、新規看板事業が出来たのか?は疑問です。
確かにソニーは他の電機よりは投資が上手です。純投資としてもSpotify、エムスリーなどの成功例はありますが、事業としての成功例はミレニアム前後から出ていません。捨て値で拾ったオリンパスもファンドに負けて売ってしまいましたしね。
タチの悪いファンド、米サードポイントに狙われているのも新規事業がでない一因ではあると思います。アメリカでソニーは良くも悪くも過去のブランド力があり、だからこそ物言う株主に狙われます。そうなると、思い切ったリスクを取れなくなります。
出井氏、ストリンガー氏、平井氏、と続き、後継は財務畑出身の後藤氏にトップがなっており、金融業、投資会社としてやっていくならともかく、何かしらを新規でイノベーションを産むのは無理なのかな?とも思います。
まとめ
学びとしては、過去の遺産がある会社ならリストラをし続けていけば、どこかで底を打ち、利益を出す事はできるが、成長するには新規事業が必要、ということです。それは他の電機も同じです。
日立、パナソニックもまた、リストラをし続けていますが、果たしてアメリカ製ソフトへの大型投資は上手くいくでしょうか?日本人が白人から大きな買い物をして成功した事例は思い浮かばず、天才、孫正義氏ですらアメリカでは大勝ちをした経験がありません。
ソニーに利益が出ていることだけ、他の電機よりもマシというだけで大騒ぎしなければならないほど日本は落ちぶれているのでしょう。代わりとなる新興勢力は出るのでしょうか?個人的にはバルミューダには少し期待をしています。製造そのもので革新を産むのは難しく、アイディア、デザイン、特許で革新を生む時代だと思います。
もちろん、日本人としてソニーに利益が出ることは喜ばしいですが、本当に喜ぶべき時はソニーの新規事業が当たり、ブレークスルーをし、新たな成長ステージに入ったとかでは無いでしょうか?
バルミューダの製品をいくつか使ってますが、デザインが良く、機能もシンプルで好きですね。大手家電メーカーの製品は余計な機能がごちゃごちゃ付いていて使いづらいです。
久しぶりに株価をチェックしてみたら、ここ数ヶ月ヨコヨコですね。成長も期待できるし財務も悪くなさそうなので、ワンチャン期待枠で今のうちに仕込んてみてもいいかなと思い始めました。
バルミューダはスチームトーストだけ持っていますが、見た目には満足していますが機能は値段ほどの価値は無いなぁと思います。
革新的そうなアイデアはいいんですけど、まだ技術が伴ってない、というイメージです。オシャレなのは認めます。
テスラじゃないですが、技術はともかく雰囲気があるっていうのは大事ですからね。
シン
>確かに利益は出ています。理由は利益率の高い事業を集中してきたからです。
売上高10兆円近くの会社が売上を更に伸ばすのはかなり難しく、利益率にフォーカスするのは当然な気がします。
実際電機で構造転換=リストラwして、注力事業をうまく再編したソニーや日立は株価が底値から5-10倍くらいになってます。
欧州の会社も似たようなものなので、こんなもんじゃないでしょうか?
むしろ大手電機並の製品・サービスラインナップで利益が出せなかった今までが異常だったので、正常化してるという感じですね。
(別に復活したとはいってないですがw)。
結局、一定度大きくなった会社で利益率を維持しようとすると、利益率が悪化した部門を売却して、それを元手に投資するしかないので、売上高自体は頭打ちになるのでは?と思います。
(アホみたいに拡大してきた自動車も頭打ち気味なので、結局業界ごとにサチるポイントがあるのでは)。
ソニーの無様な凋落ぶりに関しては、’70年代生まれの私にとっては隔世の感があります。私が高校・大学の頃、音楽を聴くと言えばソニーのウォークマンでした。
2000年代からはiPodが出始めて、ウォークマンと人気を二分する感じになりました。私も乗り換えを検討しましたが、ノイズキャンセリング機能、物理パネルの操作性など、端末の性能はソニーの方が勝っていると感じました。当時は楽曲のオンライン販売も始まっていましたが、如何せん価格が高いので、レンタルしたCDをパソコンでコピーして転送していましたね。今からしたらとんでもない手間ですが、それでも何百曲も持ち歩けることが画期的と感じたものです。
それが今ではスマホで無限にストリーミング再生が可能です。端末に曲のデータを「入れる」という概念そのものが吹き飛んでしまいました。この利便性の前では、少々の端末の性能の良さなど消し飛んでしまいます。パソコンに吸収されてワープロが消滅したように、携帯音楽プレイヤーもスマホに吸収されて消滅する流れなのでしょう。
この流れに対し、ソニーは端末の性能やデザインをアピールするばかりで、コンテンツ視聴のプラットフォームの整備がまるで駄目でした。音楽を携帯して外出先で聴くという画期的なスタイルを確立させたソニーが、今度は著作権保護とか音楽文化云々だの言って既存のスタイルに固執し、凋落してしまったのは皮肉な事です。
コンテンツ産業に関しては、AppleとAmazonの2大巨頭体制が固まってしまい、あらゆるクリエイターや作家はこの2社の下で作品を販売・配布するようになり、そこにソニーが食い込む余地はとてもありません。凋落した日本の地位を象徴しているようにすら感じます。
記事ありがとうございます。
確かに、新たな看板となる事業、製品は浸透させられていないように思います。
外からは誰もが思うことでも実行できないで沈んでいく日本企業が多い中で、これだけのリストラ、事業ポートフォリオ整理を実行し、数字を作ったのは平井氏の手腕ではあると思います。外部から来た外国人社長ならまだしも、(育ちは米国が長いものの)日本人の彼がやるのは相当なストレスがあったと推測します。
「ソニーの傍流」を歩んできたからできた、と彼自身も言っていましたが。
どういたしまして。
仰るように平井さんがしたことは再生、復活ではなく、ポートフォリオの整理というのが正しい表現です。ジョブズ氏がiMacから始まるAppleの新しい看板を作り上げていったことこそが再生、復活だと思います。
業績は日産ゴーン逃亡者と似ていますね。ひたすらリストラをし続けて赤字を止め、黒字を作ったことは評価できます。平井さんも社長になってからも家族をアメリカにおいての単身赴任だったと聞いています。自分の続けるリストラの波紋で家族に被害が出ない、という点でやり切ったことも同じでしょう。ほぼ外国人だったからやれたことです。
ただ、日産はその時のツケで再び凋落しています。単にコストを削っただけで新規開発がほとんどなかったことが、ジワジワと効いてきています。ソニーも同じようにならないと良いですね。
シン
シンさん、皆さん
「業績は日産ゴーン逃亡者と似ていますね。ひたすらリストラをし続けて赤字を止め、黒字を作ったことは評価できます。」
今後これと同じようなことをする大企業が増えるのでしょうか。
如何でしょうか。
私自身全く予想がつかないのですが、正直申し上げますと恐ろしいことだと
考えております。
今まで、日本の大企業は終身雇用と年功序列で、無能な人間でも会社の秩序に従いすれば相応の職と給与が約束されていました。無能な女性にとっての主婦と同じで、サラリーマンは無能な男性の社会保障の面がありました。
今後アメリカ式に幹部候補以外は短期雇用、常にスキルアップして数字を出さないと職が続かないとなったら、安定した職を失って貧困に陥る中高年男性が続出します。
但し度々私が指摘したように、単身男性であれば低収入でも快適に暮らせるのが日本です。問題は、結婚・子作りを避ける男性が続出して、少子化がいっそう加速する事です。
少子化で人手不足になれば、低収入でも安心して暮らせるインフラの維持が困難になります。欧米のように賃金の安い外国から労働者を輸入するのも無理です。そうなると日本崩壊が現実のものとなります。今のオリンピックの様に、現場の労働力が足りずに混乱続出となるでしょう。
いつきさん
返信ありがとうございます。
「今後アメリカ式に幹部候補以外は短期雇用、常にスキルアップして数字を出さないと職が続かないとなったら、安定した職を失って貧困に陥る中高年男性が続出します。」
おっしゃる通りです。40年以上今の勤務先にしがみついてきた私にとって非常に耳の痛い話ですが、今後そうなる可能性が高いのですね。
「但し度々私が指摘したように、単身男性であれば低収入でも快適に暮らせるのが日本です。」
私もそう思います。私が一生独身でしたら、今よりずっと安い家を買い、車は持ちません。これだけでも大きな違いです。今は家事は非常に楽です。子供の大きい専業主婦は、本当に暇だと思います。
よく独身だと老後が不安だと言う人がいます。じゃあ子供が老後の面倒を見てくれるのでしょうか。そんな保証は全くありません。私の近所は完全な老人の町であり、平均年齢は70歳は間違いなく超えています。子供は全く来ません。1年に1回も来ていません。1人世帯もどんどん増えて来ており、その老人を近所の人達が面倒を見ています。独身の方が普通はお金も貯まるはずなので、老後資金に不安もありません。ただしこれは個人差はかなりあるようですが。あとは死ぬまで続けることのできる趣味とその仲間がいれば、快適に生活できると思います。
平凡なサラリーマンさん
コメントありがとうございます。
中高年サラリーマン同士、共感できる点が多いですね。
>>じゃあ子供が老後の面倒を見てくれるのでしょうか。そんな保証は全くありません。
→むしろ子供は老後破産を招く爆弾になりかねません。8050問題は極端な例にしても、これからの日本では子供の世代の大多数は親の世代より貧しくなり、金をタカってくる厄介者と化します。
また子供の教育費は底なしです。本当は公立の教育だけを使えば安いのですが、馬鹿な母親がやれお受験だ私立だ習い事だママ友付き合いだと無駄な金を使いまくり、子育てに集中する為と称して働きません。子供は妻による夫搾取を正当化する為の名目と化しています。
老後にしたって、家父長制的な価値観が崩れた今、老親を世話するのは子の義務という感覚は希薄です。なまじ子供がいるせいで、公共の介護サービスを利用させてもらえないことさえあります。
>>独身の方が普通はお金も貯まるはず
単身男性であれば低収入でも快適に暮らせるのが日本ですが、情弱をしゃぶる罠も多いのも日本です。パチンコや宝くじ等の還元率の低いギャンブル、割高な外食の酒、キャバクラ等のヤレないくせにぼったくりの風俗、課金ゲーム、ファッションの流行など、馬鹿に金を使わせる罠だらけです。きちんと自分を見つめて、金を使うべき所を峻別する意思の強さが必要でしょう。私は服は各シーズン毎に3-4パターンしか持ちません。これでも本格的なミニマリストからしたらまだ甘いと思いますが。
>>あとは死ぬまで続けることのできる趣味とその仲間がいれば、快適に生活できると思います。
→独身男性にはそれが案外難しい気がします。私も土建エンジニアで仕事一筋で転勤が多かったので、仕事絡み以外の人間関係がほとんどありません。退職した後の孤独対策は考えないといけないと思います。
いつきさん
返信が遅くなりました。すいません。
「むしろ子供は老後破産を招く爆弾になりかねません」
おっしゃるとおりです。これに60歳以降も続く住宅ローンがあれば、老後破産はほぼ間違いと思います。
「仕事絡み以外の人間関係がほとんどありません。退職した後の孤独対策は考えないといけないと思います。」
私もそうです。これはサラリーマンなら誰でも真剣に考えなければならないことだと思います。長い老後にとって一番大切なのは健康ですが、それと同じぐらい重要なことだと考えております。老後を共にする仲間がいれば、独身の方がかえって快適な老後を過ごせるのではないでしょうか。
>>じゃあ子供が老後の面倒を見てくれるのでしょうか。そんな保証は全くありません。
子どもは洗脳(教育)できますやん
毒親と呼ばれますがw
まあ、親世代が、自分が親孝行してないと説得力はないですけどね
経営者としてリストラはやらなければならないことだったと思うので評価できますが、従業員からするとトンデモナイですよね。
だからこそ、個人としてはシンさんがこのブログで書いてらっしゃる技術を身につけるということが一つの解になると賛同します。
不採算部門、人材を活かしておくほどの体力が残っている企業は多くないですし、実際多くの企業で早期退職という名のリストラが毎年増え、今年も過去最高になっているようです。
今まで日本では慣習的にリストラをしなかっただけで、世界的にはごく当たり前に行われるものであり、それは意識しておくべきだ、というのはグローバリゼーションが進む時代には必須だと思います。今後も日産、ソニーと同じことをする会社は増え続けるでしょう。現にパナソニック、日立もリストラしてます。係長レベルで実務はしないので技術は知らない、とか、社内官僚ほど割のいいものはない、というような考えは時代錯誤だと思いますね。
シン